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LibraからCBDCそして、BANK4.0の時代

前回、Defiの話題を少し行いました。それに関連して、今回は、お金の話です。

b.tokyoで、Calibraの責任者が日本に来日したのは、もう昨年の10月のことで、あっという間に、半年以上が経過しました。私も、最前列で、ワクワクしながら、Calibraの話題を聞き、夕方のニュースで話題になると、時代の変革を目の前で見たような、何だか誇らしい気持ちになったのですが、そこから、半年間、本当に色々なことがありました。このイベントから数週間後に、このリブラ構想を主導していたFacebookは米議会や米金融当局から、厳しい追及を受けることになり、VisaやMastercard、PayPalなどが続々と脱退を表明。そして、リブラ協会はグローバル通貨の発行を棚上げとしましたが、それに続くように、世界では、中国によるデジタル人民元DCEP、日本銀行も含む世界中の銀行が共同開発を行うCBDC、アメリカのUS Digital Dollar Project、ユーロ圏のPositive Money Europeなどが続々と発表され、結果的にはリブラの議論によって、デジタル通貨のプロセスがさらに加速することになりました。

中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency)

CBDCは、カナダ銀行、イングランド銀行、日本銀行、欧州中央銀行、スウェーデン・リクスバンク、スイス国民銀行、国際決済銀行が共同で研究を行い、発行が期待されるデジタル通貨のことです。ECBと日本銀行が作っているCBDCのプロトタイプ、プロジェクト「ステラ」などが注目されています。

Third phase of Stella project completed
https://www.ecb.europa.eu/paym/intro/news/html/ecb.mipnews190604.en.html


そもそも、これらの導入のモチベーションの一つは、現金の需要が減少する中、銀行が銀行としてどう生き残るかというテーマでもあります。後ほどBank4.0にも触れますが、我々は日常的にお金を使うに当たって、ほとんど銀行口座との連携を必要としていません。ECサイトでインターネットショッピングをする場合、車でETCを使う場合、コンビニでアプリ決済をする場合など、我々はアプリや機器と紐付けたクレジットカードや、チャージした現金でこれらを行うわけで、現金需要はそこにはありません。(ここで少し混乱が起きやすいと思いますが、電子マネーはあくまで「前払式支払手段」であり、通貨という観点と切り分けて考える必要があります。) そんな中、世界中の中央銀行は、デジタル通貨の提供が急務となっているわけです。
CBDCはトランザクションをより安全にし、攻撃耐性を高めること、トランザクション速度を上げ、コストを下げること、さらに、銀行を持たない人々が金融システムに参加することができることで、金融包摂(Financial Inclusion)を増加させます。一方で、CBDCを導入すると、データのプライバシーなどのデメリットもあるため、これらはまだ議論の真っ只中と言えます。

参考)中央銀行デジタル通貨の発行を目指す中国
― 予想されるマクロ面での影響 ―

https://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/ssqs/191227ssqs.html

US Digital Dollar Project

アメリカ政府は、COVID-19のパンデミックによる経済支援として、「1人あたり1200ドル」の支払いを決めました。日本のように申請書などの提出は必要なく、納税記録などから支払う方法をとっていますが、それでも支払いの遅延が問題視されています。原因は、そもそも銀行口座を持っていない人や、ソーシャルセキュリティ番号を持たないメキシコ、中南米からの移民(正規の手続きを踏んだ場合でもこのようなケースは発生する)などの存在です。リブラのホワイトペーパーでも、世界的には、銀行口座を保有していない人が、数多くいることを指摘しています。
このUS Digital Dollerプロジェクトを通じて、米国連邦準備制度 Federal Reserveは、すべてのアメリカ人にFedAccountsという銀行口座を提供しようとしています。Degital Dollar Projectはデジタル人民元や、CBDCやなどと少し毛色が違い、そもそもそれ自体が暗号通貨であるわけでも分散化されるわけでもなく、中央集権化されたデータベースであると言われています。

デジタル化のメリットとデメリット


デジタル化のメリットは、先に述べた通りですが、デメリットとしてはプライバシーの問題があることを忘れてはいけません。現金支払いは、ある意味で、匿名性とプライバシーが最大に守られているとも状態であるのに対して、デジタルによる支払いは、追跡と監査が簡単で、銀行はお金がいつ誰が何に使ったかを即座に知ることができます。政府は市民の経済活動を監視することも理論的には、可能になるわけです。ブロックチェーンでよく言われることに透明性というものがあり、ブロックチェーンは、全てパブリックなものであるという認識があるかも知れませんが、リブラなどのように、特定の企業だけが接続できるコンソーシアムというモデルや、閉じられたモデルであるプライベートというモデルもあります。パブリックチェーンは、あまりにも透過的で、利用者のプライバシー保護の観点で、多くのデジタル通貨では採用しないと言われていますが、ビットコインをはじめ、仮想通貨がこれまで構築してきた耐改ざん性、セキュリティ観点での実績は大きいため、CBDCが使用する可能性が高いのは、DLT(Distributed Ledger Technology)ではないかと言われています。

テクノロジーにおける通貨の問題

Bitcoinがビッグカメラなどで決済手段として利用できるようになったことから、仮想通貨は決済手段としても利用されるユースケースがでてきました。
もちろんBitcoinのボラティラティの問題から、Libraのように法定通過とPegするなどの運用面においても課題があるわけですが、テクノロジーの面においても、乗り越えるべき課題があります。
たとえば、取引する速度、スループットの問題があります。Bitcoinでは、スループット平均が2.6tps、最大8.3tps、Ethereumでも平均が89.2tps、最大でも20tpsとなっています。これはVISAの1736tps、最大56000tpsと比べると大きく劣ることが言われています。
先に事例として出した国の法定通貨ともなり、個人が支払う缶ジュース1本からこれらのトランザクションを制御しようとするとこのスループットでは耐えられないことは容易に想像がつくかと思います。テクノロジーの発展が今後進めば良いかと言うと、単純な話ではありません。ブロックチェーンの仕組みにおいて、リアルタイム性はあまり良くないといわれているのですが、その理由として、ファイナリティの仕組みがあるためです。
ファイナリティとは、「決済が無条件かつ取消不能となり、最終的に完了した状態」と言われます。先にあげたビッグカメラの事例でも、決済手段は、普段レジでお札を渡して買い物をした瞬間に、取引が確定、つまりファイナリティされます。
しかしながら、ビットコインのパブリックブロックチェーン上で行われる決済のやりとりにおけるファイナリティは、確率的ファイナリティとよばれ
「取引が覆る確率が時間と共に0に収束する」という確率的な動きをします。つまりレジで商品を買った瞬間には、ファイナリティされないため、商品が渡った後に、取引が無かったことになる可能性もあるわけです。
この手の解決のためには、HTLc(Hashed Time-Lock contracts)とよばれる一時的な貸金庫にお金を預け、時間が経過しあと、つまりある程度確定されたあとにその貸金庫を通じて取引を行う手法などいくつか方法がありますが、既存のロジックにくらべて複雑ではあります。

Bank4.0の時代へ

これまでのお金、銀行のあり方は大きな転換期を迎えていると言われています。Bank1.0~3.0は主に銀行内での利便性の向上であったのに対して、

1.0 支店中心型の従来型
2.0 ATMの普及によるセルフバンキング
3.0 インターネットバンキングの拡大
4.0 経済・社会活動の中に銀行機能が埋め込まれる組み込み型バンキング

Bank4.0は銀行という限られた空間だけではなく、世の中の様々なものと繋がることが前提となっています。例えば、音声デバイスやIOT機器、車などにコネクトされ、個人の行動に合わせて、リアルタイムでバンキングの機能にアクセスできるようなります。
面白いデータがあり、2025年には200億台を超えるデバイスがインターネットに接続すると推定されており、これらは、現在地球に住んでいる人々の3倍の数だそうです。これまで、人と紐づけていたバンクアカウントが、これら、機械、自動車、センサーなどのIoTデバイスと紐づく場合、これまでと全く同じ仕組みでは太刀打ちできないということは容易に想像できると思います。
( 私も銀行連携のシステム開発を幾度となく行いましたが、全銀データなどの固定長データや、EBCDICなどの文字コードを利用するなど、お世辞にも使いやすいと言えない様々な仕組みに四苦八苦した経験があります。)

(参考) https://medium.com/@philippsandner/does-the-ecb-work-on-a-blockchain-based-digital-euro-65c393f34497

これまでの仕組みをディスラプト(破壊)し、新しい仕組みの構築には、テクノロジー企業が優位性を発揮していくことが予想されており、Googleが米国にて、2020年中をめどに銀行口座サービスを始めることなどもこの一つの動きになりそうです。

Conclution

イーサリアムの共同創始者Joseph Lubinは、Ethereum構想を始めたきっかけとして、リーマンショック時の体験をあげています。各国の金融政策が行われ、一種のうねりのように世界中の経済が巻き込まれててしまった状況を変えたかったとセッションの中で述べています。

https://www.youtube.com/watch?v=mHm7MECKLQU

リーマンショックに次ぐ、金融危機、さらにはリーマンよりも経済としての対応が難しいと言われる今回のコロナショックですが、テクノロジーの力で、少しでも、世の中が救われるように、考えていく必要があるのではないかと思います。




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