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高機能デバイスが実現するブロックチェーンとIOTの未来

前回、シェアリングエコノミーの話題を書きましたが、少しそこから派生して、今回はブロックチェーンとIOTをテーマに書いてみたいと思います。
シェアリングエコノミーのユースケースとして、Airbnbなどで不動産を貸し借りする場合や、ライドシェアのLyftなどで自動車を借りるケース(他にも宅配ロッカーや、シェアサイクル)があります。例えば、アプリ一つで、宿泊予約や自動車の配車手続きができ、電子決済によって支払いが行われたとしても部屋や車を開けるためには、物理鍵のアンロックが必要になります。

Slick.itにみる鍵とブロックチェーン

Slock.it(スロックイット)はドイツに拠点を置くスタートアップ企業で2016年頃から、Ethereumのスマートコントラクト技術を用いたプロジェクトを開始しました。ブロックチェーン技術とIoT機器(インターネットに接続された機器の総称)を組み合わせたシェアリングエコノミーのプラットフォームであるSlock.itを開発しており、いつでもどこでも直ぐに、鍵の交換ができることをコンセプトにしています。

ブロックチェーン活用した自動車向けの「デジタルキー」を開発:アルプスアルパイン
https://bittimes.net/news/57375.html
ブロックチェーンで鍵管理のKEYVOX、ロッカー型モデル発売
https://crypto.watch.impress.co.jp/docs/news/1222132.html

IOT x インターオペラビリティの可能性

鍵の貸し借りまでは、何となく誰もが想像できるかもしれませんが、ブロックチェーンのインターオペラビリティ(相互接続性)を用いるともっと面白い化学反応が起きます。Slock.itの紹介している動画の中でも、オフィスや賃貸住宅へのアクセスを与える鍵のシステム、ワンステップで自転車を貸し出し、保険を発行し、支払いを受け取ることのできるシステムが紹介されています。つまり、物理的な鍵だけではなく、それに派生して起きるすべてのものがワンストップで相互互換性を持つことができるようになります。
以前、私が検討していたプロジェクトの中で民泊を管理するシステムがありました。民泊は常駐してるスタッフがいないため、ホテルと同様のサービスを提供することが難しいことが課題としてありました。例えば、ホテルに宿泊すると、事前に朝食チケットがもらえたり、アメニティなどのサービスが普通ですが、民泊ではこれらを運用することが難しいケースがあります。ブロックチェーンの相互接続性を使い、ブロックチェーンで管理された部屋の鍵と一緒に、朝食に使えるUberの出前チケットが渡せたり、アメニティの代わりにAmazonPrimeNowでタオルの購入ができることで、管理コストを保ちながら、一般ユーザーに民泊を選んでもらえるような仕組みができるのではないかと考えました。同特許は下記の「対象物の利用を管理するためのシステム、方法、及びプログラム」のなかで示されています。

対象物の利用を管理するためのシステム、方法、及びプログラムhttp://www.conceptsengine.com/patent/grant/0006469920

マイクロトランザクションという考え方

IOT機器などというと、少し低機能な物理デバイスのようなイメージを持っている方もいるかもしれませんが、今や、IOT機器は、安くて小型で計算能力が高いデバイスが次々に現れています。
AlexaやSiriなどのスマートスピーカー、インターネットに繋がる炊飯器のような台所の機器から、冷蔵庫やエアコンなどの家電、さらには電球などに至るまで、スマートフォンと同程度の計算能力を備えるIOT機器が続々と生まれています。
処理スペックが上がったことで、各機器が独立した事業主になることが可能となります。これまでは、大きな枠組みの中で、分割された役割を持つだけであったIOT機器が、デバイス毎に独立した勘定の概念をもち、各サービスに対して情報を提供し、報酬を受け取るような、小さな仕事の集合体、つまりマイクロトランザクションに変わっていきます。このことは、様々なサービスが色々なものと並列な接続性の担保を行うためにとても重要なことであると言えます。

例えば、電気の供給量に応じて、決済をするような独立したコンセントがあるとします。

株式会社Nayuta、使用権コントロール可能な『ブロックチェーン×IoT』電源ソケットのプロトタイプを発表
https://markets.bitbank.cc/article/nayuta-released-iot-blockchain-powered-power-socket

コンセントはもともと、家庭の中で分割された一機能でしかなかったものですが、独立性をもつことで、家庭内の用途に限らず、携帯電話や電気自動車の充電スタンド(家庭で所持た不要な余剰エネルギーを、誰かに販売して、それを利益として受け取る)などにも、利用できるかもしれません。一般家庭だけなく、外に出ると様々なセキュリティシステムが存在しています。また、工場などには多種多様なセンサー類が存在しています。これらが一つの目的だけではなく、様々な新しいサービスと繋がることができるとしたら、新しいイノベーションに繋がるかもしれません。マイクロトランザクションの概念が、今後多くのモノとモノと接続性を担保し、必要なリソースをシェアを行うことに繋がっていると言えます。

IBMが提唱するDeviceDemocracy

2015年頃から、IBMが提唱している考え方にDeviceDemocracyというものがあります。https://www.ibm.com/downloads/cas/ZALPAXJ0
インターネットが登場したあと、人と人が繋がるソーシャルネットワークが主であったのに対して、今後、急速に高機能なデバイスが増えていき、人の数よりもこうした物理デバイスの数が増加してくることが想定されています。そのような将来、人が介在せずにデバイス同士が自律してやり取りし、調整や合意まで行える仕組みをDeviceDemocracyと呼びます。
Device Democracyでは、IoTが現在抱える大きな問題をブロックチェーンなどの先端技術を用いて、解決しようとしています。課題には、接続のコスト、インターネットに対する信用など複数のものがあります。

引用) Remember the Internet When Considering The Things
 https://battellemedia.com/archives/2015/02/remember-internet-considering-things

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https://monnit.azureedge.net/content/documents/infographic/Monnit-IoT-Sensors-Map.pdf

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Conclution

私が以前遊んだPS4のゲームに、「デトロイト ビカム ヒューマン」というゲームがあります。このゲームの中に登場する人間そっくりのアンドロイドたちは、自分で思考を持ち、相互に会話をすることなく、こめかみあたりから、信号のようなものを出して、相互に通信を行うことができるような描写がありました。将来は、このアンドロイドのように、個々のデバイスが、AIのように、意思をもち、様々な情報を相互に交換できるようになるというと、少しSFチックで、飛躍しすぎかもしれませんが、以前ある在庫管理システムが、自身の在庫数を検知し、自動で発注をかけるという試みを何かの記事で読んだことがありました。この自動発注botに、AIなどで需要予測なども取り入れ、仕入れ、独自に販売を行うことができれば、アンドロイドの見た目などは難しいとしても、「デトロイト ビカム ヒューマン」の世界も実はそう遠い未来のことではないような気がします。




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