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NBATopShotの衝撃とブロックチェーンゲームの未来

ブロックチェーンというテクノロジーが、ガートナーのハイプサイクルで言う所の幻滅期に差し掛かり、熱狂的なブームから遠ざかったように思えていた2021年はじめ、それが一気に息を吹き返したと思えるニュースがありました。それがNBAトップショットというゲームの登場です。正確には、2019年に登場したゲームですが、レブロンジェームズの「ハイライト」が$47,500という価格で販売され、一気に注目を集めました。

さらに、このゲーム自体は、2億3000万ドル以上の売り上げを記録したと様々なメディアが報じ、ブロックチェーンというワードが再度注目されたと言っても良いかもしれません。

NBAトップショットとは

NBAトップショットは、ビデオハイライト(試合の短いショートビデオ)の番号付きバージョンを購入、販売、取引できるようにするブロックチェーンで作られたトレードゲームです。もともとこのサービスを展開するダッパーラボ(Dapper Labs)はブロックチェーンゲームのインベーダーゲームとも言われる(元祖という意味で)CryptoKittesの開発を行なっており、業界の人間では誰もが知る企業です。あまりにも、突然注目されたため、突如出てきたという感想を持つ方が多いのですが、「チーズウィザード」など過去にはCryptoKitties以外にも様々なプロトタイプを重ねて、コツコツと研究を重ねてきた結果であるとも言えます。さて、NBAトップショットに話を戻すと、実際のページをみていただく方がわかりやすいのですが、このようにカードのページには、動画が切り取られていますが、これがビデオハイライトと呼ばれるもので、ユーザーはゲームのシーズンの瞬間を収集することができます。

基本的な構造はNFTと呼ばれるカードのやりとりで、ブロックチェーンを利用することで、いかにデジタルカードに革新的な進化をもたらすかは、私の過去の記事をぜひ読んでいただきたいと思います。

コンセプトは、CryptoKittiesなどこれまでのゲームと同じで目新しさはありませんが、基本的なブロックチェーンのコンセプトを大事しながら、NBAという大きなIPと、先に述べたビデオハイライトの機能が大きく注目をあび、ユーザーに保有したいと思わせる部分に非常にフォーカスされた作品であると思います。

希少価値や外部要因によって上昇する価格と人気


何度か行われているセールでは、先着約1万人に対して、10万~20万人が予約が殺到して、注目が上がると共に、その価格も上昇しています。

また、株価のように、外部要因によってもこれらの価格が上がることがあります。カードは各種シリアルを持っていて、シリアル番号がジャージ番号と同じものを購入すると、観戦する座席を与えられるなど様々なイベントが仕掛けられることで同じカードであってもシリアル毎に需要が異なるまさにノンファンジブルの良さを活かした面が現れていると言えます。


Flowチェーン基盤利用した増加するトランザクションの解消

多くのブロックチェーンゲームが悩んでいる課題が、トランザクション手数料の問題です。以前私の記事でもガス代の高騰について触れましたが、Defiと呼ばれる分散金融の登場によって、手数料は上がり、このことはゲームなどのケースで想定される手数料を超えてしまいましたが、TopShotはチェーン自体を新たに作り直すことで、この課題を解決しました。

(引用) https://forbesjapan.com/articles/detail/39989
P2Pトンラザクション分析ツールCryptoslamによると、トップショットの売上は1月に1億8730万ドルに達し、その直前の30日間との比較で1197%という驚異的上昇を記録した。さらに、過去24時間で獲得した新規ユーザーは約2万7000人で、8万件のトランザクションを処理していた。

スケーラビリティの改善が急がれるEthereumを横目に、TopShotで用いられているFlowはこのように大量のトランザクションを処理できたことがわかります。1年以上前から、トップショットで使用されるブロックチェーンプラットフォームであるFlowの開発に向けて、資金を調達を行なったり、Ubisoftとも提携するなどその基盤開発に重きが置かれていることも非常に重要なポイントであると思います。

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(引用: 
https://medium.com/dapperlabs/enter-the-octagon-ufc-on-flow-brings-mma-to-crypto-480618408510)

少しテクノロジーの話にはなってしまいますが、Ethereumが中央台長で所有権を管理していたことに対して、Flowではアカウントのストレージにリソースオブジェクトを配置することで、スケールできるモデルを構築しています。node自体を、トランザクション収集、コンセンサス(PoS)、計算、検証それぞれのnodeに分断することによって、ファイナリティにかかる時間が非常に短くなりました。Ethereumではわざとオークション形式などをとり、決定までの時間を曖昧するなどのサービス側での工夫が必要でしたが、FLowを使えば通常のデータベース同等の処理が可能になるのではないかと期待されています。私自身もいくつかFlowの機能を手元で試しているのですが、Ethereumの開発者であると頭を悩ませるチェーンのアップグレード問題などにもFlowではメインネットでのソースコードに対してベータ状態にしておく仕組みがあります。CryptoKittiesで起きた課題を、チェーンごと作り直すことで、見事クリアしているのは非常に素晴らしいと思います。


期待されるInteroperavilityを活かした今後の取り組み

さて、先に述べたとおり、NBAトップショットはCryptoKittiesを運営する企業が作っているサービスになりますが、私が個人的にずっと注目しているCryptoKittesの仕組みで、KittyVerseというものがあります。(https://www.cryptokitties.co/kittyverse)
これはブロックチェーンゲームタイトルのキャラクターを相互に様々なゲームで利用することができる仕組みのことで、猫のキャラクターをマグカップなどリアルなものに置き換えるサービスや、猫のキャラクターでレーシングゲームが遊べるサードパーティー製のゲームが登場するなど注目を集めています。
直近のNBAトップショットではNFTの特徴を最大限に活かして、トレードを楽むところにフォーカスされていますが、ブロックチェーンのメリットの一つとして、このようなInteroperavility(相互互換性)を活かして様々なサービスと連携することができれば、もっと多くの人が参加する取り組みになるのではないかと思っています。すでに現在のカード価値がどの程度あるのかを調べることができるMomentRanksなどのアプリケーションが登場しています。

またFlowチェーンに載せられたものを売買できるVIV3というマーケットが作られています。
https://viv3.com/

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同様にして、ユーザーがトークンを軸に繋がることができるトークングラフについても非常に面白そうです。

Conclusion

私自身も数年ブロックチェーンという業界に身を置いていますが、このようなビッグタイトルの登場は非常に嬉しいと感じています。今回の動画を短く切ったハイライトを売買することは一種の発明かもしれませんが、まだまだブロックチェーンゲームには定石となる正攻法はまだ出てはいないと言えると思います。これからも素晴らしいコンテンツが出てきて、業界を盛り上げてくれることを期待します。



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