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【目印を見つけるノート】483. ふわふわの大きな羽のついた黒いつば広帽子

7月29日(木)晴れときどきくもり
きのうのことを書いています📚

朝5時半に起床。仕事、今週は通して平穏無事でした。あ、でも金曜日は月末だから少し忙しいのだと思います。

さて、
私は音楽について書いたりするときに、「カッコいい」ということばを割と使います。松竹梅で言えば松の賞賛のニュアンスなのですが、あまり安易に使ってはいけないなとも思います。
一般的にいえばこの言葉、見た目がかっこいいという趣旨になるでしょう。比較すれば男性に対して使われることが多いですね。
一方で生き方とか、強さとか、自分のスタイルを持っている方に使うこともあります。こちらの方がいい感じだなと私は思います。高倉健さんはそのような「カッコいい」の代表だろうと思います。
音楽の書き物で私が使うのもこちら寄りの「カッコいい」ではないかと思います。
音楽については魔法にかかるような部分があって、例えばバンドならシンバルの「チャ」、ベースの「ボン」、ギターの「ジャーン」だけでしびれるのですね(物理的な感電ではありません)。これに性別はまったく関係ありません。出てくる方の雰囲気はあるでしょうが、見目麗しい方々がズラリと揃っても、音にピンとこなければ「カッコいい」と思わないだろうと思います。その逆もしかりです。

もちろん、人それぞれの感じかたがありますのでどれがどうというのではありません。あくまでも自分の基準です。

「カッコいい」の対は「カッコ悪い」でしょうけれど、「カッコ悪い」ということについて、素敵な言葉を教えてもらったときのことを書きます。

まだバンドをやりたい未練があった頃、とあるベースの方とお話してみたことがありました。新宿東口で待ち合わせたのですが、びっくりしました。背の高い、たいへん見目麗しい男性でした。表現が古風でしょうか。私はたじろぎました。たじろいだのですが、お互い真っ黒な服でいささか浮き気味というのは同じで、喫茶店に行くことにしました。羽のついた帽子が印象的だったなあ。

新宿も変わりましたが、昔の姿を忘れるほどには変わっていないように思います。

初対面の人とあんなに音楽の話をしたのは初めてでした。ギターのレベルとかそのようなことではなくて、とにかくどんな音楽が好きか徹底的に聞かれました。コーヒーをおかわりし続けて3時間、その合間に、自分がどのようなバンドでやっていたか、どんなバンドをやりたいかというのを話していました。その方がされていたのはポジパンというジャンルのようでした。そのときにレコードをいただきましたが、後年『フジヤマ』(三軒茶屋のレコード屋さん)で売っているのを見つけました。インディーズで活躍されていたのですね。

たしかにその方がお持ちの「見た目がカッコいい」という要素は悪くはないようでした。それでファンも増えるし、彼女にも困らない(ほう)。ただ、実際はトラブルも多くて、それでバンドも解散されたようです。それと「こういう音楽がやりたい」というのをできていたわけでもなかったようです。
「きれいな、美しい曲が作りたい」というのを繰り返しおっしゃっていて、例としてドアーズを挙げていました。確かに、美しい曲がいくつもありますね。『Chrystal Ship』も『Love Street』も『Wintertime Love』も……。

ジム・モリソンもカッコいいと周囲に言われることが面白くなかったようでした。

一方、
私はとにかく、見た目のカッコいい人ではありませんので、それは正直に言いました。
すると、その方は、「カッコ悪い、ってカッコよくなるために必要なんじゃないかな」とつぶやきました。
そのセリフがカッコよすぎだと思いました。
その方はこうもおっしゃっていました。

「女の人にできることって、まだまだたくさんあると思うんだけど」

心に残る、たいへん素敵な言葉でした。
結局、その方とバンドを組むことはなかったのですが、新宿の喫茶店で3時間話したのはその後の大きな糧になりました。その方のお顔はもうはっきりと思い出せないのですが、ふわふわの大きな羽がついた広いつば付きの真っ黒な帽子だけ、なぜか今でも鮮やかに覚えています。

翻って、私は相変わらずギターも下手でカッコ悪いことこの上ないです。でも、好きなのです。歌うのも、ミュートしてしまいながらつっかえて弾くのも。上手い方を見れば天井知らずだと思いますが、好きなだけでカッコ悪くやるのも今はいいのかなあとも思っています。

いつかはカッコよくなれますか。
「女の人にできることって、まだまだたくさんあると思うんだけど」というのは今でも宿題として持っています。

前にPatti Smithの『Ghost Dance』という曲を引用しました。長く意味を分かっていなかったのですが、この前映画、『Rumble』を見に行って初めて知りました。
〈19世紀後半、白人に抑圧された北アメリカに住む先住民の間に起こった千年王国論的な宗教運動。踊ることによって、楽土が現出すると信じられた。〉(goo辞書より引用)

その曲はたぶん、そこから採ったのだろうと思います。
CBGB(ニューヨークのライブハウス)の千秋楽で演奏している動画を引用しましょう。

パティはもちろん、パフォーマー、ミュージシャンとしてもですが、「女性にできること」を広げたと思います。少なくとも、ボブ・ディランの代理でノーベル賞の授賞式に出て歌うようなことは(男性も含め)滅多にできるものではないでしょう。
ちょっとアガッていたのもひっくるめて、
カッコよかったです。

今日はそんな感じです。
お読みくださって、ありがとうございます。

尾方佐羽

追伸 ですので一目惚れも滅多にしません。21歳のときが最後でしょうか。

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