日米と世界の「ソーシャルグッド」への意識差を考える。
PR会社カーツメディアワークスの小川と申します。マーケティングにおけるデータ活用の支援や、研修(宣伝会議「マーケティング分析講座」)や執筆(Excelでできるデータドリブンマーケティングという書籍やnote)など行っています。
【更新情報2024年5月26日】
「その決定に根拠はありますか?」
確率思考でビジネスの成果を確実化するエビデンス・ベースド・マーケティング
戦略を導く為の「エビデンスの作り方」をテーマに、これまで体系化してきたノウハウを紹介したマーケティング・インテリジェンスの書籍を出版致しました。5問の調査でTVCM(施策)→コンビニで商品を見た(要因)→売上がいくら増えたか?→年間16.67億円(効果)の様に経路ごとに構造的に効果を把握する国際特許(PCT)を出願した分析法など、確率モデルや因果推論をプロジェクトで実際に活用している方法を特典の動画講義も活用して実装レベルの知識まで提供しています。
昨年行われたNIKEのキャンペーン
皆さんは、NIKEの「Dream Crasy」というキャンペーンをご存知でしょうか?
これは、Just Do It”30周年記念キャンペーンで、「黒人や有色人種への差別がまかり通る国に敬意は払えない」と、有色人種差別や暴力への抗議のために試合前の国歌斉唱中に起立することを拒否したアメフト選手(コリン・キャパニック選手)を起用したものです。一時大炎上し株価が3.2%減、時価総額が32億ドル(約3520億円)減まで減ったそうだが、結果としては、大きな収益をもたらしたそうです。(以下 同記事引用より)
この企画はソーシャルグッドな事例だと思います。その定義について、ソーシャルグッドをテーマにしたアイデアマガジン「IDEAS FOR GOOD」から引用させて頂きます。
「ソーシャルグッド」とは
世界で注目され推進されているソーシャルグッド
ソーシャルグッドは、2015年ごろからカンヌ国際映画祭など重要な観点となっているそうです。世界で活躍している先輩マーケターからも直接お聞きしたことがありますし、記事での言及も見かけます。
『戦略PR』で有名な本田哲也氏(現 本田事務所代表 ※取材当時はブルーカレント・ジャパン株式会社 代表取締役社長)の以下記事では
「日本には“ソーシャルグッドな企画”がない」 ことや、(以下抜粋引用)
「社会問題はマーケティングに直結する」 こと(以下抜粋引用)
などについて、言及なさっています。
グーグルトレンドを使って日米と世界の差を調べる。
「ソーシャルグッド(social good)」の比較用のキーワードとして、「SDGs」また直接は関連しませんが、マーケターに昨今注目されている「デジタルマーケティング(digital marketing)を追加してグーグルトレンドで調べてみました。期間は現時点から遡って5年です。
日本
アメリカ
世界
日本は、SDGsの検索数が圧倒的です。「デジタルマーケティング」も検索されていますが、「ソーシャルグッド」はほとんど検索されていません。
それに対して、アメリカでは「SDGs」がほとんど検索されていません。「social good」が多く検索されており、「digital markething」に迫る量です。
以下の記事(2017.07.27付)では、SDGsの取り組みの進捗度、日本は11位でアメリカは42位だそうです。
また、世界では、圧倒的に「digital marketing」の検索数が多く、「SDGs」は最近伸びていますが1年前位までは「social good」のほうが検索数が多くなっていました。
ソーシャルグッドの取り組みがなぜ進まないのか?日本のマーケティングの課題を仮説。
グーグルトレンドの差を見て愕然としました。「ソーシャルグッド」について日本が遅れていることを見聞きする機会もありましたが、私はカンヌに行ったこともなければ、欧米のコミュニケーションの支援をしたこともないため、いまいちピンと来ていないのが正直なところでしたが、検索トレンドの差を見ることで、アメリカと世界との差を見て課題感を持つことが出来ました。
私の頭にはこんな図が浮かびました。
ソーシャルグッドに関する日本の課題は「日本は、社会課題の解決への意識はあるがそれをブランドの活動とつなぐことについて真剣に向き合われ、実行がされていないこと」ではないか?と仮説しました。
反面、米国はSDGsについての興味が低い代わりに、「ソーシャルグッド」への興味が強いです。「社会問題はマーケティングに直結する」という意識が浸透しているからでしょうか?
世界で見ると、ソーシャルグッドやSDGsよりもデジタルマーケティングへの興味が強そうです。ソーシャルグッドとは別の問題として、日本は世界と比較してデジタルマーケティングに対する興味の低いことも可視化されました。
これらを整理すると、日本でソーシャルグッドな取り組みが行われない原因は以下の2つではないか?と仮説しました。
「リスクを取る強い意思の源泉となる確固たるブランドのビジョンがない」
「ソーシャルグッドの取り組みの効果が定量的に検証されていない」
リスクを取る強い意思の源泉となる確固たるブランドのビジョンがない
NIKE傘下の「ジョーダン・ブランド(Jordan Brand)」のラリー・ミラー代表はNIKEが「Dream Crasy」を行う選択が完全に正しいという認識を示していました。
なかでも印象的だったのはこの一節です。(以下抜粋引用)
リスクを承知で「Dream Crasy」を行う強い意思の源泉が、ブランドのビジョンなのではないかと思いました。
NIKEのように、確固たるビジョンが無いとソーシャルグッドへのチャレンジというリスクを取れないのではないでしょうか?
ソーシャルグッドの取り組みの効果が定量的に把握されていない
先日、参加させていただいたマーケター向けイベントのネプラス・ユーのセミナー「パンテーンをV字回復させた具現化力」のP&Gの大倉 佳晃氏のプレゼンでは「#この髪どうしてダメですか」というソーシャルグッドな企画の事例が紹介されていました。
【関連記事 Markezine「#この髪どうしてダメですか」事例紹介】
「消費者と企業をつなぐスポーツマーケティング」セミナーにも参加しました。日本コカ・コーラの渡邉氏が、商品を売るための手段としてのスポーツについて明確な方針があることをお話しされていました。
ここからは、推測ですがユニリーバやP&Gやコカ・コーラなどは、ソーシャルグッドな取り組みがもたらす経済的価値を定量的に把握しているのではないでしょうか?
日本企業に比べこれら外資企業のほうが効果検証をシビアに行っていることを見聞きすることが多いためです。本田氏の発言の太字の部分にもそのような記述がありました。
ソーシャルグッドな取り組みを後押しする方策を検討したい。
私個人のソーシャルグッドは「マーケターのデータリテラシーの底上げに貢献すること」です。因果推論による効果検証のデザインなどについて学びながら実践し、それを戦略を描くための方法論として浸透させることを目指しています。
「戦略とは捨てること」とも言われます。限られた資源で何かを選ぶ時には何を捨てる必要があるからです。そうした判断を確からしく行うためのリテラシーを養うこと、それこそが「戦略を描くためのデータドリブン」だと考えており、その方法を知って頂くためにマーケター向けのビジネス書を執筆中です。
その書籍のテーマとして「ソーシャルグッド」について触れるかは分かりませんが、グーグルトレンドで調べたことで、自分ゴトとして、日本のソーシャルグッドが進まないことを課題として捉えることが出来たので、私も何か出来ないか?と考えています。
日本企業がソーシャルグッドを描くため方策を整理し、10月中にご紹介できればと考えております。
以上となります。ここまでお読み頂き誠にありがとうございました。
【note】
https://note.mu/ogataka
【Twitter】
https://twitter.com/dancehakase
【更新情報2019年10月11日】
日本企業はソーシャルグッドな戦略を描くための後押しとなれば、そんな考えをまとめました。(※本noteと重複している内容を一部含みます。)
【更新情報2024年5月26日】
「その決定に根拠はありますか?」
確率思考でビジネスの成果を確実化するエビデンス・ベースド・マーケティング
戦略を導く為の「エビデンスの作り方」をテーマに、これまで体系化してきたノウハウを紹介したマーケティング・インテリジェンスの書籍を出版致しました。5問の調査でTVCM(施策)→コンビニで商品を見た(要因)→売上がいくら増えたか?→年間16.67億円(効果)の様に経路ごとに構造的に効果を把握する国際特許(PCT)を出願した分析法など、確率モデルや因果推論をプロジェクトで実際に活用している方法を特典の動画講義も活用して実装レベルの知識まで提供しています。