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はじめて娘にプレゼントする書籍は「幸せな仕事はどこにある」

株式会社秤の小川と申します。消費者行動の確率モデルを駆使した分析や、消費者インタビューなどのリサーチによって戦略を定めることを主な仕事として複数の企業のマーケティング・アナリストとして活動しています。今は整理した知見を「秤」として共有することにフォーカスを定めています。社名はマーケティング精鋭集団「刀」社から着想を得ました。

弊社のプロジェクトにも参加頂いている元オリエンタル・ランドのリサーチャーの山本さんと共著で「『その決定に根拠はありますか?』確率思考でビジネスの成果を確実化するエビデンス・ベースド・マーケティング」という書籍を出しました。

マーケティング戦略の意思決定のための「エビデンスの作り方」を紹介するもので、いわば

「確率思考のマーケティングの『実践法』」

を共有するものです。

このnoteで紹介するのは同じ位の時期に発売された井上大輔さんの書籍

「幸せな仕事はどこにある」

です。

井上大輔さんは、以下のプロフィールにある様に主に外資企業でマーケティングの実績を積まれた上で、今はソフトバンク社の偉い人で「マーケティング」の学びを発信している方です。最近は本業の関係でマーケティング関係のイベント出演は控え気味と氏のSNSで拝見しましたが、マーケティング関係の講演や寄稿も多く、業界で有名なマーケターの方です。かつて関わっていた消費者理解をテーマにしたイベントで私も一度ご一緒したことがあります(それ以外にクローズドな懸案でお話をさせて頂いたことも)。

井上 大輔(イノウエ ダイスケ)
ソフトバンク株式会社 コンシューマ事業推進統括 プロダクト本部 新規事業開発統括部 統括部長。ニュージーランド航空、ユニリーバ、アウディジャパンでマネージャーを歴任。ヤフー株式会社 マーケティングソリューションズ統括本部 マーケティング本部長、ソフトバンク株式会社 コンシューマ事業統括 コミュニケーション本部 メディア統括 部長を経て現職。WASEDA NEO「早稲田マーケティングカレッジ」並びに「『人生の可能性』を広げるビジネスパーソンのための本づくり講座」講師。

Amazon書籍販売ページより

マーケティング関係者でない方にも、マーケターにも読んで頂きたい書籍です。

この考えから、このnoteを書いています。この書籍は小説です。マーケティングって聞いたことはあって学んだほうが良いとかはよく聞くが、果たして自分に役立つのか分からない。おそらくこんな考えの方のほうが多数派だと思います(実際にマーケティングの仕事をしているマーケターや具体的にそれを目指している人と比べて)。

この書籍はマーケターでない方にも、マーケターにも共通するテーマとして(誰かが決めた評価軸ではなく)自分自身が納得する幸せな仕事とは何か?これをテーマとして井上大輔さんの経験知見を交えて構成された小説ですが、本当に読みやすく、引き込まれるシナリオで、読みだすと一気に読んでしまいたくなる小説です。

「マーケティングって、『モノを売るだけ』だと思ってた」マーケティングの考え方で、本当の「やりたいこと」が見えてくる。高校生から大人まで、すべての人を応援する働きかた小説。

Amazon書籍販売ページより

読み終わるとさわやかな気分とともに、本で学んだことも意識したり読み返したりしながら、自分のこれからにつなげたくなる、そんな前向きな読後感が醸成されました。

このような小説は前例がなく、唯一無二の小説だと思います。

実際に読んでこうした感想を持つことは多いと思いますが、実は私が話したいのはもう一点あります。この書籍は私のようにマーケティングで生計を立てているプロにもおすすめしたい本質的なノウハウが書かれていることです。

プロも読み返すマーケティングの本質がテーマ

業界内でよく見かける論考に、マーケティングは経営だとか、手段ではないとか、マーケティングとは〇〇だ!的な話が沢山あります。

マーケティングといっても様々な業務があることからです。たとえば誰もが知るグローバルブランドのグローバルCMOもマーケターですし、卓越した動画を作る動画のクリエイティブ・ディレクターもマーケターです。

しかし管掌する領域と責任が多いのは例示した2種の仕事でいえば間違えなく前者です。

後者はマーケティング・コミュニケーション領域のさらに一部分の動画の制作に特化した仕事となります。

では、マーケティングに関わる人でどちらが多いかといったら圧倒的に後者です。

特定領域の手段に特化した業務を行っている方のほうが多くなります。私は30後半からは副業から複業なので。ひとつの仕事としてCMOを行った経験はありません。業務経歴を簡単に書くと、以下のようになります。

・イベントの現場のディレクターからプロデューサー (20代)
・総合広告会社の営業から、マーケティング・プランナー(30代前半まで)
・デジタルマーケティング支援会社の戦略コンサルタント(30代後半から40代前半)
・(現在)戦略の調査分析を得意としたマーケティング・アナリスト

もともと得意だった考えること分析することを強みにしてマーケティングの手段に関わる仕事から戦略に関わる立場に変化してきました。25年位マーケティングに関わってきましたが、私はこの様に考えています。

マーケティングの手段に関わる人でも戦略に関わる人のどちらが良いとか悪いとかはない。しかし、どちらにも重要なのは「戦略思考」

マーケティング・コミュニケーションの手段に特化する人であっても、優秀な方こそ、戦略(ブランドの背景や何を伝える為にあるのか?)を整理してから企画を考えます。これは間違えありません。優秀なクリエイターの方ほど戦略に介入します。

小説の中で自然な流れに沿って出てくるテーマには以下のようなものです。

・「ささいな良いところ」をプロとしての強みに育てる:差別化と同質化
・「実力はあるのにアピールが下手」から卒業:ホワット・トゥー・セイとハウ・トゥー・セイ
・評価されるために「思い出される」人になる:セイリエンス
・英語、プレゼン、論理思考……「どの力を伸ばせばいいか」わかる:Kanoモデル
・「個性を見つける」と「誰かの役に立つ」を両立:パーパス

Amazon書籍販売ページより

これだけ見ても、マーケティング従事者でないと、何が書いてあるのか想像はできないと思いますが、マーケティングの「戦略思考」に関わる心臓と言える内容です。

私が尊敬する日本を代表するマーケター「USJを劇的に変えた、たった一つの考え方」の著者の森岡毅さんの考えを参照すると、

WHO 誰をターゲットにするか?
WHAT  どんな価値を届けるか?
HOW どんな風に届けるか?

井上さんの小説でテーマになっているテーマは主にWHATWHOに対応するものです。

これを定義するための考え方がマーケティングでは非常に重要です。また、ブランドマーケティングの戦略部分のコンサルティング支援でもっとも大きなテーマとして経営者から相談されるテーマはWHATです。かつて、森岡毅さんが刀という会社を立ち上げて、V字回復に導いた丸亀製麺のプロジェクトでは、WHATの定義が最大の焦点となります。

森岡毅さんほどのスキルとパワーを持って支援できたかは疑問ですが、私なりに当時努力させていただき、真剣に取り組ませていただいたプロジェクトにおいて。ご相談時点の経営者の方からのお題は「この指とまれ」でした。非常に的を得た言葉だと思いました。刀社と丸亀製麺との取り組みを例に、丸亀製麺のように、新しく編成したマーケティング組織のノウハウ底上げとともに自社ブランドの本質的な「この指とまれ」をみつけてほしいというものでした。ブランドの根幹となるWHATを定義することはもっとも難しいプロジェクトです。その分、それを何にするか?によってブランド成長の成否を大きく変えるものとなります。

井上さんの書籍でテーマ設定されている以下の内容はまさにこうした戦略思考でもっとも重要な考え方になります。

・「ささいな良いところ」をプロとしての強みに育てる:差別化と同質化
・「実力はあるのにアピールが下手」から卒業:ホワット・トゥー・セイとハウ・トゥー・セイ
・評価されるために「思い出される」人になる:セイリエンス
・英語、プレゼン、論理思考……「どの力を伸ばせばいいか」わかる:Kanoモデル
・「個性を見つける」と「誰かの役に立つ」を両立:パーパス

Amazon書籍販売ページより

これがマーケティングに関わった方のない方にも非常にわかりやすく表現されています。シナリオが面白くて夢中に読み進めていると、マーケティングの本質のWHATの定義などの知見を知る、またはもっと興味が持てる様になる書籍だと思います。

戦略コンサルティング支援のビジネスでマーケティングで生計を立てているプロとしての私も、非常に大きな気づきを頂き、WHATを導くプロジェクトで迷いそうになった時に読み返す書籍です。

はじめて娘に、私からプレゼントする書籍

私は今46歳ですが、社会人4年目の娘がいます。彼女が就職活動を始める頃から広告・マーケティング業界やコンサルティング業界のことを聞かれることがありました。正直言うと、私は生粋のマーケティングバカ(好き)なので嬉しいし、娘に同じジャンルの仕事をやってもらいたいと密かに思っていました。ただ、彼女書籍のおすすめなど、こちらからプッシュすることは絶対にせず、彼女の思考に対して、私の知見を打ち返すことはしましたが、私からボールを投げることは一度として行わない様に注意していました。今、彼女はまた自発的に、マーケティング関連の勉強をしている様です。

森岡毅さんが就職を考える娘に向けて書いていたMEMOを読んだ編集者の方が感動して涙し、多くの方を勇気づけた名著に「苦しかったときの話をしようか?」があります。私も大好きな書籍です。

しかし森岡さんの熱さ(私もそうですが氏のそういところにファンになる方は多いと聞きます)が故に、絶対に娘にプレゼンとは気恥ずかしてできないです。

反面、井上さんの小説はすごくさわやかな読後感の小説でありながら、マーケティングの戦略思考の本質がテーマになっているものなので、これは、はじめて私からプッシュしても良いのではないか?初めてそう思いました。Amazonで1冊買って外出先で読み終わったその足で書店でもう1冊買いました。そして彼女にLINEで、これ一冊あるから今度渡すね!と伝えました。Amazonのページを見て「面白そう!ありがとう!(スタンプ)」と非常に喜んでくれてすごくうれしいかったです。

娘(長女)は今は一緒に住んでいませんが明日下の娘の習い事の発表会を見にきて食事に行くので、はじめてのプレゼントを渡そうと思います。

シンプルにこの本がこれからの日本の新しいビジネス・マーケティングを作る娘の世代に届け!と思っています(娘にはわざわざこのnoteは報告しませんし、届いちゃうと恥ずかしいのですが)。前著の「マーケターのように生きろ」もおすすめです。こちらも2冊あったので1冊プレゼントしようと思います。

井上さんの小説やこのnoteの内容、面白い!興味ある!と思って頂けた方はぜひ拡散頂けますと幸いです!