行動主義心理学の基本を駆使してジム通いを習慣化する方法
はじめに
筆者は割と飽きっぽい性格なのですが、ジム通い(ほぼ週2)は2年間続いており、今のところ止める予定もありません。こちらで紹介する方法は、なぜ飽きっぽい自分が続けられたのかを自己分析した結果から導き出したものです。
「ジムに通いたいと思っているけどなかなか続かない、続かなそう」という方が一人でも「よし、自分も通ってみるか!」と思っていただけたら幸いです。
行動主義心理学の基本的考え方(使うメソッド)
ここでは「オペラント条件づけ」という基礎理論を使いますので、それについてすごーく簡単に説明します。詳しく知りたい方は専門書でもなんでも読んでみてください。
オペラント条件づけ (Wikipedia)
「オペラントの条件づけ」とは、人が行動するにあたって「行動したくなる要因」と「行動したくなくなる要因」があり、「行動したくなる要因」が勝った時に実際に行動に移す、というものです。この「行動したくなる要因」を「強化の随伴性」、「行動したくなくなる要因」を「弱化の随伴性」と言います。(厳密に言うともう少し細かく分類されるのですが、このメソッドを語る上で重要ではないのでここでは省略します)
例えば「買い物に行く」という行動について考えた時、「セールで安くなっている」とか「限定商品が入荷」など「買い物に行きたい!」という気持ちにさせるのは「強化の随伴性」、「雨が降っていて出かけたくない」「懐に余裕がない」など「買い物に行くのやめようかな」という気持ちにさせるのは「弱化の随伴性」です。セールの割引率が大きいほど、あるいは限定商品の希少価値が高いほど強化の随伴性は大きくなり、雨足が強いほど、懐が寒いほど弱化の随伴性が大きくなります。
下の図では、セールや限定品が出ていて買い物に行きたいけれど、「金欠」という弱化の随伴性の要因が大きいため「買い物に行く」という行動をとらない場合です。
一方、「これを逃したら手に入らないだろう、一生後悔するかもしれない。雨降ってて出かけるのだるいしお財布の中も心許ない、でも借金してでも買いに行く!」となった場合、「限定品」という強化の随伴性の方が大きいため「買い物に行く」という行動をとるわけです。
勘の良い方はお気づきかと思いますが、これから紹介するメソッドはジムへ行きたいという強化の随伴性を大きくし、行きたくないという弱化の随伴性を弱くすることで「ジムへ行く」という行動をとりやすくなり、習慣化しやすくなるというカラクリです。次項では一般的にどういう要因があるのか、具体的に挙げていきます。
強化と弱化の具体例
強化の要因は所謂「モチベーション」が一般的かと思います。
・痩せたい、マッチョになりたいなどの理想体型のため
・運動不足予防、体力増強、あるいは肩こり・腰痛の予防などの健康のため
これに加えてリフレッシュのためというのもあるかもしれません。
一方、弱化の要因で大きいのは
・めんどくさい
これが行かなくなる理由の最たるものではないでしょうか。
一口に「めんどくさい」と言っても細かく分けると複数あり、
・行くのがめんどくさい(家から遠い)
・準備するのがめんどくさい
・運動するのがめんどくさい
などが考えられます。
めんどくさい以外には
・疲れた
・雨
あたりもあるでしょう。小さくするのが難しい要因もありますね。
以上に挙げた強化の要因に、さらに別の要因を加えて強化側を大きくし、弱化側を少しでも小さくする方法を以下の解決策で提示いたします。
解決策にいく前に
ダイエット目的でジムに行かれる方、多いのではないでしょうか。ダイエットには有酸素運動とよく言われますが、例えば1時間走っても消費カロリーはせいぜいご飯でお茶碗2〜3杯分です。でも1時間走るって結構辛いですよね。そして有酸素運動だけだと脂肪と一緒に筋力も落ちてしまい、代謝が下がってリバウンドしやすい身体になってしまいます。食事を減らすだけのダイエットもそうですが、ダイエット失敗の原因の一つが代謝の低下です。
そんなわけで個人的にはダイエット目的の方でもウエイトトレーニングをおすすめいたします。もちろん有酸素とウエイトの両方やるのがベストであることは言うまでもありません。
なぜウエイトトレーニングが良いかというと、効果が見えやすく長続きしやすいからです。ダイエットにしても筋肉量アップにしても見た目にはっきりわかるくらいの効果がすぐ出ますし、揚げられる重さというわかりやすい指標があります。そして、ある程度筋肉がつくと基礎代謝が上がりますので太りにくくなります。身体の燃費が悪くなるので、食事量を減らすのと同じ効果が得られます。つまりリバウンドしにくくなります。
ちなみに、上記のロジックで女性にウエイトトレーニングを勧めると「ムキムキになるのはやだ」とか言われますが、そんな簡単にムキムキバディになれたら苦労しません!一定レベルまではすぐつくのですが、その上を目指すとなると一気にハードルが上がります。ジムによくいる筋骨隆々のマッスルガイは毎日のように通って朝昼晩プロテイン飲んで肉はささみしか食べないというガチ勢です。週に1、2回通うくらいではなかなかそんなストロングバディにはなれませんので、ムキムキレディになるのを心配される女性諸氏も安心してウエイトトレーニング に励んでください。
では改めまして、どうやってジムへ通うための強化の随伴性を高め弱化の随伴性を下げるのか説明いたします。
解決策
1:個人トレーナーをつける
狙い:強化UP
コストがバカにならないのが欠点なのですが、それを補って余りあるメリットがあるので少なくとも最初の1〜2ヶ月くらいは個人トレーナーをつけることを強くおすすめいたします。
個人トレーナーをつける最大のメリットは「アポイントをとる必要があり、とったら行かないとものすごく気まずくなる」ということです。クラスレッスンだとさぼっても罪悪感が小さいのですが、1対1の個人トレーナーは自分だけのために予定を空けてくれているのでさぼると罪悪感すごいです。人との約束を平気でブッチする方には向いていませんが、そういう方はジム行く前に何かするべきことがあると筆者は思う次第です。
ここでは「自分だけのために待っている人がいる」というのが強化の要因となります。セッションが終わる度に必ず次回の予約を入れるのがミソです。うっかり予約を入れないで帰ると、「次の予約をとるのがめんどくさい」という弱化の要因にひっくり返ってくるので気をつけてください。
そして約束を果たすために定期的に(できれば週2、最低でも週1、曜日を決めて)行くようにすると、10回も行けば習慣化されて「あ、土曜日だ、ジム行かなきゃ」となってきます。
個人トレーナーをつけるメリットはもちろんそれだけではなく、
・自分に合ったプランを作成してくれる
・正しいフォームを指導してくれる(間違ったフォームでやっていても疲れるだけで筋肉がつかないですし、身体を痛める原因になります。ジム行くと間違ってる人だらけですが。)
・全ての力を絞り出してくれる(オールアウトと言い、これをすることでトレーニング効果がグンと上がります)
などがあります。トレーナーさんにめちゃくちゃ笑顔で「あと1回、頑張りましょう!」と言われて、腕がプルプルして泣きそうになりながらレバーを押すことで、自分の限界を知ることもでき、良いこと尽くめです。
誤解をして欲しくないのは、ジムのトレーナーさんはプロなので無茶は言ってきません。もうヘロヘロなのに「あと10回!」とか「こんなこともできないのか!」なんて高校の部活みたいな指導ではなく、その人の体力をしっかり見極めて回数を指示してくれる上、毎回「よく頑張りました!」と褒めまくってモチベーションを引っ張り出してくれます。
2:行きやすいジムを選ぶ
狙い:強化UP
当たり前のことですが、すごく大事です。ただでさえしんどいのに雨降ってたりしたら行きたくなくなりますからね。ですので、理想は家から近いジム。筆者は家から徒歩5分くらいのところにあるので通えているというのは大きいと思います。とはいえ、誰もがジムの近所に住んでいるわけではありませんよね。ですので、自宅や勤務先(通学先)の最寄駅のすぐ近くにジムがあればそこが良いでしょう。
最寄駅の近くにもジムがない、ときたら仕方がありません、通勤(通学)経路にある途中駅のジムを選ぶことになります。この際、重要視したいのは「駅から近いこと」と「お風呂の充実度」です。
大切なことなのでもう一度書きますが、「お風呂の充実度」はチェックしてください。大きくてきれいなお風呂があるとそれだけのために行くこともできますので、お風呂は必ずチェック項目に入れてください。お風呂が全然好きじゃない人はもちろん気にしないで大丈夫です。
3:先に準備、または金で解決
狙い:弱化DOWN
ジムに行くにあたり、トレーニングウエアや着替え、タオル、トレーニング後に飲むプロテイン、女性ならさらに化粧品など用意するものは多く、「さあ行くぞ」となっても用意するのがめんどくさくなって結局行かないっていうこと、あると思います。なので、着替えやトレーニングウエアに関しては専用セットを2つ用意し、帰ってきたら汚れ物と入れ替えで次回のウエア等を入れておくと、思い立ったときにバッグを引っ掴んですぐ行くことができます。
また、ジムによっては別料金になりますがロッカーサービスでウエアの洗濯までしてくれるところもありますので、お金に余裕がある方はそれを使うのも良いかと思います。そうすれば行きたい時いつでもすぐ行けますしね!
4:無理はしない
狙い:強化UP・弱化DOWN両方
物事を習慣化する上で、最初のハードルをめっちゃ低くするのは重要なポイントです。ちょっとだるいなって日はマシン1つだけゆるめにやって風呂入って帰る!くらいでOK。
トレーナーさんとやっているときは限界まで追い込まれますが、自分一人で行くようになったら、毎回毎回限界まで頑張らなくても良いんです。常にがっちり追い込むことを前提にすると、「今日はそこまでの元気がないからやめとくか」となってしまいますからね。
「少しだけ」と思って行っても始めてみたら結構頑張れちゃうことが多いですし、頑張れなくても「ちゃんとジムに行った」という満足感と「大きいお風呂に入ってリフレッシュできた」という幸福感に包まれて帰れます。
5:宣言と報告
狙い:強化UP
宣言については自らを追い込むためにされてる方が結構多いのではないでしょうか。「俺、ジムに通い始めたわ」と周囲に言ったりしますよね。ただ、これは最初の頃はそこそこ効果がありますが、あまり長続きするものではありません。
そこで、「報告したら褒めてくれるお友達」を作りましょう。LINEで報告グループを作るのがベストだと思いますが、僕はジム通いしてるお友達がそんなにいないのでツイッターで友達に褒めてもらってます。
人は褒めてもらえると嬉しくなります。最近流行りの承認欲求というやつですね。褒めてもらえると自己肯定感も高まりますのでオススメです。褒めてくれるお友達がいなさそうな場合は、、、そんなことは忘れて次の項目にいきましょう!
6:トレーニングを楽しくする
狙い:強化UP
ワークアウトミュージックというジャンルがあります。ハイテンポの音楽を聴きながら筋トレをするとテンションが上がりますし他にも色々と良い効果が得られます。
ただしケーブルが絡まると危ないので、ワイヤレスのイヤフォンがオススメです。最近は2000円くらいでも品質が良いものが出ています。
あたりまえですが、トレーナーさんに指導してもらっているときは失礼だからやめましょう。
7:成果が出る
狙い:強化UP
上記の1〜6を駆使してまずは1、2ヶ月頑張ってみましょう!すると、成果が目に見えて出てきます。人は成果が出ないとなかなかモチベーションを保てないものです。まして筋トレは辛いですからね。。。ですが成果が出れば次も頑張ろうという気持ちになれます。
そしてその「成果を出す」ために必要なのが正しいトレーニング。同じ辛さで成果を最大化するためにも、最初のうちは個人トレーナーさんに指導してもらうことが大切です。
ただし、途中で必ず伸び悩みます。そうなったときにこの「成果が出る」だけを頼りにしていると途端につまらなくなるので、他の強化UPや弱化DOWNも合わせて実施するようにしましょう。
8:習慣化が習慣化を呼ぶ
狙い:弱化DOWN
2ヶ月くらい続けると、それが日常に溶け込んできます。「よし、ジム行くぞ!」と自分を励まさなくても、寝る前に歯磨きをするのと同じように「火曜日だからジムだな」となりますので、「行くのだるいなー」という弱化の随伴性が働きにくくなります。
また、行かないとなんとなく気持ち悪くなります(人によるとは思いますが)。「ちょっとくらいだるくても行きたい、むしろ行った方が元気になる」となればもう完全にあなたはこちら側の人間です。実際、仕事で疲れが溜まっても身体を動かすことでリフレッシュできますし、夜もよく寝られるので本当に元気になりますよ。
以上、8つの方法を書きましたが、人によって行きたくなる要因・行きたくない要因は異なります。自己分析をして行きたい要因を増やしたり行きたくない要因を減らす(あるいは軽減する)ことで、強化の随伴性が弱化のそれを上回り継続してジムに通えるようになるでしょう。
一度燃え上がったジム通いのモチベーションの炎を消すことなく続けて、一緒に健康的なナイスバディになりましょう!
おまけ:個人的おすすめトレーニング本
個人的におすすめのトレーニング本を2冊、ご紹介します。世の中には腐る程トレーニング本が出ていますし好きなのを買えば良いと思いますが、「たくさんありすぎて迷う」という方は参考にしてください。
・プリズナー・トレーニング 圧倒的な強さを手に入れる究極の自重筋トレ
上の文でウェイトトレーニングを勧めておいてなんですが、自重トレーニングの本です。この本の良いところは、ものすごく簡単なレベルから始まる、自重のため関節等を痛めにくい、実施するトレーニングが6種類だけということです。ウェイトはあるレベルを越えるとどうしても怪我のリスクが出てきますので、特に10代や逆に40代以上の方は低負荷でやれる自重トレーニングも視野に入れると良いと思います。
各トレーニングはレベル1〜10まで設定されていてレベルが上がるにつれて負荷を増やしていくのですが、最高レベルのレベル10は片腕懸垂とかなので一般人はレベル5〜7くらいを目指せば十分です。
この本はリハビリmemoというブログの内容を体系的に整理した本なのでブログを読めば大体のことは書いてあるのですが、整理されているだけあって本の方がわかりやすいです。
最近まで(あるいは今でも)筋トレ界で「常識」とされてきたことが昨今の研究で覆されていて、そのあたりもふまえて最も効率の良いトレーニングや栄養補給について書かれています。例えば「筋トレは最大筋力の80%の重さで8〜12回やるのがベスト」と言われていましたが、これも「30%の重さでも疲れるまでやれば一緒」という研究結果が出ています。
この本と先のプリズナートレーニングをあわせて読むと、何も重たいウェイトを上げるだけが筋力アップへの道じゃないんだな、と理解することができます。どちらも読むだけでも(個人的には)とても面白いので、書店で見かけたら是非お手にとってみてください。