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声は“一番搾り”じゃないとダメ? Voicyが「編集不可」の理由【声の履歴書 Vol.16】

こんにちは。Voicy代表の緒方憲太郎です。

Voicyがこれまで歩んできた道のりについて書くシリーズ。今回は以前にも書いた「ネットサービスにおける快適な制限と自由」に関する話です。

例えばVoicyで録音した音声は基本的に編集できません。誰もがそのまま“録って出し”で配信することになります。これは一体なぜでしょうか?

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noteの成功に見る“究極の不自由さ”

突然ですけど、そもそもインターネットサービスの利用者は本当の意味で自由を求めてないと思うんです。

例えばいま、日本のブログサービスではnoteがすごく伸びてる印象があります。いまこれを書いてる場所もnoteです。でもnoteってある意味、めちゃくちゃ不自由ですよね。

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(noteのマイページ、きっと考え尽くされたシンプルさです)

HTMLは好きに書けないし、自分のページの見た目も大きくいじれない。でもこれって、もうこれ以上はひとつも動かせないっていうところまで突き詰めた究極の不自由さです。だから誰が書いてもnoteっぽくなるんですよね。

Instagramもそうですよね、リンクを貼れないとかいろんな制約があるから、誰がやってもInstagramになる。

さて、冒頭でも書きましたが、Voicyアプリで録音した音声は編集できないようにしています。それって不便だと思いますか? とことん自由に編集できたほうが便利そうじゃないか?って。

たぶん、そうじゃないと思います。

「編集できる」→「編集しなきゃ」になる

編集できる自由を得たら最後、きっとみんな編集しないといけなくなるはずです。誰かが始めたから、だんだんとみんなしなきゃいけなくなる。

最近だとスマホで顔写真の加工が自由にできるようになりました。ただこれって、まわりの皆が加工しているから、なんとなく自分も加工しなきゃって思い始めた気がします(僕の勝手な想像なので違ったらすみません…)。

で、そのうち全員ちゃんと写真の加工をしてかわいく、かっこよくするのが常識って思うようになっていくのではないかと。

これを音声コンテンツに当てはめると、しゃべりが本当に面白い人よりも、加工と編集が上手い人がどんどん出てきてしまう。そうすると発信にかかる時間と手間がめちゃめちゃかかるようになってくる。

それはきっと違うだろうなと思いました。コンテンツ制作の手軽さが失われていくと、YouTuberみたいに1日中撮影と編集に時間をかけていないと勝てない世界になっていきます。

そこに対して、「そのままでいいんだよ」と、そもそも何の加工もできませんよー、という制限が必要だと思いました。

声は絶対に一番搾りじゃないとダメ

声はその人の本人性・身体性がすごく大事です。だから、1回目にしゃべった時に一番熱量があるんです。

例えば、この間食べてめっちゃ美味しかったものについて話すとして、「これこれこうで、あれ美味かったねー!」って話したやつを、ちょっと直して、「あれ美味かったねー!」からやり直そうってなったらもう熱量はだいぶ下がってるんですよ。

だから、声は絶対一番搾りじゃないとダメなんです。

声は身体性そのものであり、一番気持ちが乗っかる媒体です。だから編集はできないほうがいい。たぶん声の世界は、リアル以上に見栄えを良くする必要がない。自分らしさをそのまま楽しめるようになってもらいたいです。

音声って本当に「ここがちょっとなー」って言いだしたらキリがないですよね。でも友だちと話してるときは、適当にしゃべっても全然通じているじゃないですか。そのときに「ここ直したいな」なんて思わないですからね。

余計なこと言ったな〜とか、あそこでちょっと笑っちゃったな〜とかあったとしても、聞く人はそこを含めてそのまま知りたいんです。編集して加工したあとに残ったものって、綺麗だけど面白くないでしょ。

音声コンテンツの強みの1つは生産性の高さ

編集させないというのは音声コンテンツの生産性の高さにも直結します。

例えばVoicyの場合、アプリに向かって10分しゃべれば当然10分のコンテンツになります。それって音声コンテンツの明確な強みですよね。

文字コンテンツでユーザーを5分拘束しようと思ったら、3000〜4000文字は書かないといけない。そうしたら3〜4時間はかかります。動画コンテンツで5分間ちゃんと作ろうと思ったら、文字よりも長く時間がかかるかもしれません。

そう考えると、音声コンテンツはその生産性の高さにひとつの利点があります。

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Voicyで5分間の楽しいコンテンツ作ろうと思ったら、こんな流れでいろいろ準備入れても10分以内には終わる。この差はけっこう大きいと考えています。

ーーというわけで音声配信サービスの制限と自由の話でした。次回もお楽しみに(マガジンにまとめていくのでよかったらフォローお願いします)。

声の編集後記



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