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Voicyのチャプターはなぜ「10分」なのか? サービスごとの“快適な制限”【声の履歴書 Vol.14】

こんにちは。Voicy代表の緒方憲太郎です。

Voicyがこれまで歩んできた道のりについて書くシリーズ。ようやくVoicyをリリースしたところまで書きました。今回はそもそもVoicyの「1チャプター10分」ってどうやって決まったの?という話です。

どんなに小さいことでも「決める」って本当に難しいですね。

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さて、Voicyを使ってくださっている方にはおなじみ「チャプター」のお話。Voicyのチャンネルは1つの放送のなかにチャプターをいくつも入れられるようになっています。

1つのチャプターの長さは10分まで。パーソナリティーは1つの話題を10分以内で話して、聞き手も10分単位でまとまった話題を消費できます

でもこの1チャプターあたりの時間、めちゃくちゃ悩みましたね。

文字も動画も…コンテンツが小刻みになってきた

スマホやSNS時代になって、コンテンツは年々短くなっています。例えば文字は、1冊の本からTwitterのようなフォーマットまで小さくなっています。動画も映画から始まって、気づいたらTiktokまで小さくなりました。

でも音声コンテンツはずっとラジオの30分から数時間の番組しかなかった。そうなると新しいフォーマットが出てくるに違いない。そう思っていました。

それに世の中のコンテンツを見渡してみると、やっぱり何らかの制約があるからこそクリエイティブが生まれている側面があります。受信者にとって心地の良い形で制約を与えることによって、発信者側にも工夫が生まれる。それの一番最たるものがTwitterの140文字です。

じゃあTwitterが200文字じゃダメだったのかとか、60文字じゃダメだったのか、120文字では……って考えた時に、たぶん120字でも140字でもそう変わらないはずです。

ただ一定の制約があったことによって、そこにユーザーのクリエティビティが加わったこと、とにかく簡単に出していいんだという精神的なハードルと単純な発信の手間のハードルがとことんまで下がったことで、「渋谷なう」なんて書くだけで盛り上がれるようになった。

だから音声もこれからはたぶん短尺だろうと。「サクッと話してサクッと出しても許される」というところに持っていきたかったので、初めは1チャプターを3分にしてみたんです、リリースする前に。

そしたら3分だと全然しゃべれない(笑) さすがに時間が足りなかったのか、パーソナリティーさんはかなり急かされて話していました。

その結果、1チャプターを10分以内とし、短くしゃべりたいときは1チャプター内におさめて、長くしゃべる時は複数チャプターに渡って長くしゃべれるようにしました。

話し手の自由は維持した状態だけど、「一旦10分で切る」という制約を入れることで、いつの間にか10分以内に話を納めることに悦を感じるようになってくるのではないか。そんな狙いもありました。

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(Voicyの放送を開くと、その中にいくつかのチャプターが入っています)

「長くなりがちなインタビューが早く終わった」という声も

とあるメディアの方からすごく喜ばれたことがあります。そのメディアではVoicyにインタビュー音声を流すために、1チャプターで1つの質問を扱うという形にしたんですね。

そうすると普段は話がすごく長くなりがちな取材相手でも、画面を見せながら収録するとちゃんと10分で終わったそうです。「はい10分!」みたいな感じで。

その取材相手も「よしよし、きっちり終わらせたな」と満足げだったそうです。普段は1つのトピックを振ると30分〜1時間くらい話し続けていつまでも終わらないのに、「Voicyのアプリがあるだけで本当に時間通り終わるんです!」って言ってました。

そんなふうに制約を入れること自体は間違いなく良い結果をもたらすであろうとわかっていました。ただ問題なのはやっぱり、その時間でした。

最初は3分にしたけど、3分にしたらパーソナリティーは全然しゃべれなかったし、リスナーのほうも3分だけのコンテンツが面白いと感じるわけでもない。

じゃあ5分だろうか、10分だろうか、いや12分だろうかと考えました。

6分にしたら1時間で10コになる。10分にしたら1時間に6コ。でもやっぱり時計って5分ごとに刻みがあるしな……。そもそも人って10分以内のコンテンツなら聞こうとか、5分以内のコンテンツなら聞こうっていう、自分が犠牲にしてもいい時間があるんじゃないかとか、いろいろ考えました。

食べ放題の価値は、「これ以上の負担がないということ」

友人が食べ放題の飲食店を経営しているんですが、すごく面白かったのが、「ムール貝、3,500円食べ放題」のお店があったとして、3,500円もムール貝食えへんねんと。じゃあ何が価値だと思う?っていう話になったとき、「これ以上請求されません」ということがいいんだよって言ってたんですね。

人間は、これ以上の犠牲があるかもしれないと思った瞬間にめちゃくちゃ二の足を踏むし、逆にこれ以上は犠牲がないとわかれば、その中で安心して自由に振る舞える。そこが食べ放題の強み。

「食べ放題」っていう名前だけど、実はそれは「これ以上に負担がない」ことを意味しているんです。

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コンテンツも同じです。「これ以上お時間とらせません」ということが明確にわかっていると、人は安心してそのコンテンツを享受しようとする。

では、「◯◯分以下なら聞いてもいいか」って思えるラインはどれくらいだろう。それはやっぱり10分以下だと思いました。

Voicyはパーソナリティとリスナーを声でマッチングさせているサービスです。そのマッチングのためのフォーマットはどんな形が最適かを常に考えました。

10分区切りのチャプター、発信者側の反応は…?

快適な制限をつけて、且つ、何が適正かをめちゃくちゃ考えて、最後はえいやっと決めた感じですね。

リスナーがVoicyを聞く時は、どんなに長くても10分で1つの話題が終わる。2倍速にすれば5分で終わるわけで、一定の安心感があるはず。

そこに賭けて1チャプターを10分にしたんですが、発信者側からの反応はどうだったかというと、初めはボッコボコに言われましたね。

ーーというわけで、「快適な制限」を追い求める話は次回も続きます。なぜなら正解なんてどこにもないからです。(マガジンにまとめていくのでよかったらフォローお願いします)。

声の編集後記


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