スタートアップの社長が発信をつづけることの本当の価値【声の履歴書 Vol.99】
こんにちは。Voicy代表の緒方です。
この「声の履歴書」という連載は、Voicyがこれまで歩んできた道のりや、いま考えていることについて創業者の私があれこれ語っていこうというシリーズです。よかったらマガジンをフォローしてくれると嬉しいです。
さてこのnote連載も今回で99回目です!約3年にわたって創業当時のことから、会社の成長と失敗、直近の考えていることなどを書いてきたわけですが、今回は区切りとして僕のようなスタートアップの社長が発信をつづけることの意味について考えてみたいと思います。
僕と同じような経営者のみなさんや、そのまわりで働いている広報・PRのみなさんに参考にしていただけると嬉しいです。
社外と社内に向けてこんな発信ツールを使ってます。
もしかしたら僕は日本のスタートアップ業界ではかなり発信に力を入れているほうかもしれません。つねに頭のなかでは「あれを言おう、これも言いたい、どこでどうやって伝えようか…」と考え続けています。
でも、ネットでなにかを言い続けるってむずかしくなってきていると思います。
間違ったことを言うと炎上リスクもあります。ご迷惑をおかけすることがあったらもちろん謝らないといけないのですが、最近はやたらと人の発言について揚げ足を取るような動きも見えてきて、なんだかなぁという思いもあります。
それでもやはりメリットがあると思っていて、小さな会社の経営者というポジションだからこそやらねば、と思ってやっています。僕は正直、「みんなもどんどんネットで発言していこう」とは思いません。しんどいこともあります。
スタートアップの社長だからと腹をくくってやっている、という意識が強いかもしれません。
では実際なにをやっているのか。
まずSNSはTwitterとインスタです。
TikTokとYouTubeはやっていません。
これはなぜか。動画はコスパが合わないと思っています。特にYouTubeではエンタメコンテンツ、もっと言うと“暇つぶし的なコンテンツ”でなければ伸びづらいのでは、と思っています。
たとえば以前、スタートアップの社長がYouTubeチャンネルを開設する流れがありました。いろんな人が仕事について、ビジネスについて語りはじめたのですが、だんだんと消えていってしまいました。動画は制作コストも考慮すると、あまり企業の代表が発信するには相性が良くないのかもしれません。
メインはTwitterです。Voicyの緒方については、ここを見ておいてほしいという場所がTwitterです。情報のハブとして使っています
はじめましての方に僕のことを知ってもらえるように、プロフィールやモーメント機能、固定ツイートなどを工夫したりもしています。
で、Twitterではなにをお知らせするか。
コンテンツが必要になってきます。
そこで、いまみなさんが読んでいる「声の履歴書」という連載記事をnoteで書き、そしてVoicyでも音声版を発信しているわけです。
(よかったら音声版も聴いてみてください)
Twitterにつぶやいたことをベースに、noteやVoicyでまとまったコンテンツとしてしっかりと発信し、またTwitterでお知らせする。そんな流れができています。
もちろん、社内向けにも発信の経路を持っています。
「社長日報」という社内限定のVoicyチャンネルがあるので、ここで社員に向けて声でメッセージを届けています。週報という名前ですが、急ぎで伝えたいことがあるときはさくっとしゃべって、臨時で出すこともあります。
また社内Slackには「#社長の頭の中」という部屋があります。ここでは僕が普段考えていることをつらつらと垂れ流し、ゆるやかに共有しているイメージです。読んでも読まなくても大丈夫。時間のあるときに覗いてくれたらなと思っています。社長ってよく決定事項だけを社内告知しがちだと思います。でも考えるプロセスや悩んでることも赤裸々に共有しています。そのほうが納得感や安心感、そして経営目線を理解することもできると思っています。
ほかにラジオ番組もレギュラーでやっているわけですが、これについては前に書きましたね。
発信は近距離砲と長距離砲を使いわける
ぼくは大きく2種類の発信を使いわけています。
言ってみれば「近距離砲」と「長距離砲」。社内やすでにVoicyを知っている人向けに伝えるのが近距離砲で、社外に知らない人も含めて広くオープンに届けるのが長距離砲。
たとえばTwitterをやったり、noteを書いたり、イベントに登壇したりするのはVoicyのことを知らない人に対して、まず興味を持ってもらうことを目的とした長距離砲です。ブランディングや世界観の提示にもつながります。
一方で、社長の一番の仕事は「社内のみんなを同じ方向に向かせること」、そして「仲間を集めること」です。社長の発信はそれらを達成するための1つのプロダクトだと思っています。うまく設計して使えば優位性になるし、会社の強みにもできるはず。
短距離砲はシンプルに、とても業務効率にも役に立っています。たとえば僕のメッセージを伝えるために、細かい話を一人ひとりにするのは時間がかかる。でも社内ラジオという形で残しておけば、メンバーはいつでも触れることできます。
面接に来てくれる人にもちゃんと伝わっているのがうれしいです。会社の説明に要する時間が明らかに減っています。面接で毎回20分は短縮できているので、深い話からはじめられるんです。
(Voicyの社内限定放送の仕組みはこちら)
Voicyの本質は声の非同期化にある
僕は外でたくさん発信しているタイプだと思いますが、これでも実は社内向けの発信のほうにかなり注力しています。
社内限定VoicyやSlackのチャンネルで、「今週はこんな人と会います」とか「先週のリリース、ここがすごいよかったね」とか、「AIを使ってこういうことをやりたい」とか、「経営者としてはここに悩んでいる」とか。経営目線の話もするようにしています。
よく言われるのが、いわゆる「社内報」ってちゃんと見ている人の割合は3%くらいということ。でもVoicyの社内報は7割くらいのメンバーが耳を傾けています。エンゲージメントが高い。僕も思ったことをすぐに話せるし、みんなも耳で聴きながら、同じ目線を持ってくれています。
世の中の「社長」と呼ばれる人はだいたい忙しいんです。あまり暇な人はいない気がします。だから何かを書いて知らせるよりも、話して届けたほうが効率がいい。
「社内文書は誰でもアクセスできます!」「ドキュメントをちゃんと整備しています!」っていう会社は増えています。マニュアルみたいなドキュメントはしっかりと非同期でアクセスできるようにしていると思います。
でも「社長の話」だけはいつまでも同期のままなのです。面接とか全社ミーティングとか、みんなでご飯を食べてるときに出てくる、意外と大事な話、創業にまつわる昔のエピソード、会社や社員に対する想い、そういうものっていつもライブでしかなくて、非同期になっていないんですよね。
僕のやっている近距離法は、忙しい社長の声をちゃんと非同期で「置いておく」のが肝です。声というこれまでナマモノとしてしか存在していなかったコンテンツを非同期化するのがVoicyの本質なのです。
スタートアップの最も貴重なリソースである社長の時間を、近距離・長距離問わず非同期化することで相当セーブできているわけです。発信は資産になります。このnoteもそうです。
だって同じ話を同じ熱量で何度もするって意外と大変じゃないですか。実務的にも、あと気持ち的にも(笑)
自社のサービスより有名になる必要はない
長距離砲は単純に会える人が増えるという利点があります。ラジオでいろいろ人に会って、仕事につなげることができますし、Twitterなどで話しかけやすい。Voicyというサービスを知ってもらったり、パーソナリティとして加わってもらったりするところにも非常に役立っています。
ひとつ、情報発信をする上で気をつけていることがあります。
それは自社のサービスより有名にならないこと。僕自身が有名になることは避けています。「Voicyのために」というスタンスは崩しません。だから緒方のプライベートを発信することはないですし、あまりバラエティ方向に偏った露出もしていません。
つまり、「あの緒方って最近よく見るけど何してる人?」とはならないようにしています。会社と必ずひもづくようにしたいと思っています。
(この考え方は、緒方のPR担当の記事にも詳しくまとまってます)
アウトプットを続けることが大事な資産に
社長はPRの切り込み隊長です。PRは社会に対して期待をさせる仕事。それに対して事業が追いついていくのが理想です。そのお約束を達成したら、その結果をしっかりと報告するのが広報だと思ってます。
この「声の履歴書」というnoteのシリーズも次回でちょうど100回を迎えます。
毎回同じ記事とテーマを、Voicyのトークでも届けてきました。
noteを読んでくれる人はVoicyや緒方のことを知らなかった人が多く、Voicyで聴いてくれる人はコメントや共感の声を返してくれる人が多い印象です。
テキストと音声では接触機会が異なります。たとえば検索からはテキストのほうが見つけやすいかもしれません。一方で接触時間は声のほうが長くなりますね。そうすると発信主に対して感じる親密度が変わってきます。
こういったメディアの使い分けはとても興味深いところです。ただひとつ言えることは、この発信をつづけることで、Voicyへの理解者は確実に増えているということ。大事な資産になったなぁ、と思います。
さて次回、第100回は特別ゲストを招きたいと思います。お楽しみに。
ーー最後まで読んでいただきありがとうございました。
声の編集後記
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