復職日記19
こころの調子が悪い時。
こころはお腹の底に落っこちているように感じる。
働いているときは、なんとかそれを両手で掬い上げて、からだのまんなかに持ち上げているのだけれど、休みの日は、落っこちたまま。
今日も一日、ぼんやりしていた。
午前中の病院をなんとか頑張って行って、診察室で小1時間待つ。
待っている間はひたすらにゲームした。
不安が声にもれてしまう患者さんが居て、わたしよりもお辛そうで、早く診てあげてほしいなあと思う自分と、そんな声出さないで、こっちまで苦しくなっちゃう、という意地悪な自分がせめぎ合う。
こころがお腹に落っこちているとき、わたしはとても意地悪だ。
世界に対して意地悪になる。
いやだ、こっちにこないで、何もわたしのなかに入ってこないで、という気持ち。
今日はその気持ちが大きかった。
ようやっと名前を呼ばれて、診察室に入る。
主治医に近況を報告する。
行きたくない、休みたいという日に、ぐっと耐えて仕事に行けたことをお話しして、その代わり、休みの日は何もできないです、眠ってばかりいます、眠りたくて眠る日もあるけれど、動きたくない、何もしたくない、という気持ちで眠る日もあります、今日は診察に来るのも、大変でした、と伝えると、
ほんとうによく頑張ってるんですね。
と言われた。
それはあたたかくわたしの中に染み込んで、いまのこの時間になってもまだ、頭の中で反芻される。
診察を終えて、直行直帰でおうちへ。
なんとかやり遂げた、これで安心して眠れると思ったら、お腹の底にあったこころが、少しだけ浮上した。
在宅で仕事をしている同居人氏1へのお土産に買ったコンビニスイーツを、一緒に食べる。
暴力的に甘いそれは、おいしいことはおいしいのだけれど、なんだかどこか、うわの空な味がした。こころがこのスイーツとちゃんと向き合っていないな、悪いことをしたな、と思った。
一方となりでスイーツを食べる同居人氏1は、至福の表情で頬張っている。
食べ終えて一言、このスイーツは飲み物だ!とのこと。同居人氏1はいつでもおいしそうに食べ物を食べる。だから同居人氏1の作るごはんはとてもおいしい。わたしはそれはとても素晴らしいことだと思っている。
それから即ソファへ。
何も考えたくない、誰とも話したくない、かと言って本を読むにも何も頭に入ってこないとき、わたしはとにかくソファでかけ布団に丸まって目を瞑る。
そのまま眠り、眠りから覚めて、また目を瞑り、外の音をずっと聞いている。
公園から聞こえるこどもの声。道ゆく人の足音。風の音。雨の音。木々の音。業者の人の工事の音。配達員さんの乗るバイク、自転車のベル、軽自動車の音、犬の鳴き声。
家の中の音も聞く。
換気扇の音、在宅勤務中の同居人氏1のマウスのクリック音、トカゲちゃんたちがもぞもぞと動く音、自分を包むかけ布団が肌と擦れる音。
目を瞑ると、意地悪な気持ちのわたしにも、世界はやさしい。
目を瞑って耳だけになると、お腹の底に落っこちたこころが、少しずつ少しずつ、あたたまって、ふわふわと浮き上がって、元の位置に戻ろうとしている感じがする。
この時間になってもまだ、こころがゆらゆらしている。明日はどうなるんだろう。今はなにもわからない。まずは、何も考えずに湯を浴び、からだを清潔にしよう。それからまた、目を瞑ろう。夜の外の音を聞こう。意地悪なわたしが溶けてなくなりますように。そう思いながら、布団に丸まろうと思う。
投げ銭?みたいなことなのかな? お金をこの池になげると、わたしがちょっとおいしい牛乳を飲めます。ありがたーい