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復職日記7

こつこつ毎日働いておる。
リズムが掴めてきたのと、少し息切れを感じているのと、両方だ。


働いていると、いろんな人が話しかけてくれる。


この本はどこにありますか?


が、大抵の内容なので、そこにご案内するのだけれど、ちいさな利用者さんたちは、違った形で話しかけてくれたりする。


この本読んだの!

今日はいっぱい借りるの!

これも読んだんだよな〜

あ、これ知ってる!


などなど。
目が合うと、さっと顔を逸らす子もいれば、じ、っとこちらを見つめ返してくれる子もいて、こちらを見つめ返してくれる子が、あとから、たたたたたっと近寄ってきて、上記のようなことをお話してくれる。


先日は、


わたしは伊達政宗にハマってるの。


と、真剣な顔で言われて、面食らった。
伝記の学習マンガがお好きらしい。



この坂本龍馬は顔が変!


と、美化された坂本龍馬の伝記本を指差してきっぱりと言い放ち、颯爽と立ち去っていった。なんかかっこよかった。


わたしがちんちくりんだから、話しかけやすいということがあるんだろうけれど、街中でも道をよく聞かれる。


先日は、朝のゴミ出しのときに遭遇したおじいさんをご案内した。


その日は休日だったので、頭もぼさぼさ、ほんとうはパジャマとして着ているTシャツとスウェットを、さも部屋着ですよ、という体で外に出て、ゴミを出しに行ったら、ゴミ置き場の前で、スマホとにらめっこしているおじいさんがいる。


なんとなく、話しかけられる気がする…という予感を抱えつつゴミ置き場に近づくと、やはり話しかけられた。


すみません、○丁目○番地○号に行きたいのですが…


と言われたのだが、番地で言われてもこちとら地元民でないのでよくわからず。おじいさんのスマホを見せてもらい、開いてあった地図アプリをみると、確かにこの近くだ。


どなたかのお宅に行かれるのかな?と思ったので、伺う先の電話番号はご存知ですか?と聞いたところ、知らないと言う。


くたいに行くんです。


くたい??と思ったのだけれど、整体の一種かなんかで、どこかの個人宅で行われている体操教室に行くのか、と納得したわたしは、ひとまずおじいさんにその場でお待ち頂き、自宅にダッシュで戻って、自分のスマホを取りに行った。


スマホを取っておじいさんの元に戻ると、いない。


と思ったら、数メートル先をふらふら歩いている。


ダッシュで追いついて、わたしのスマホに目的地の住所を入れて、来た道を戻り、4、5分歩くと、指定の番地にたどり着いた。

そこには一軒家があったので、ここのお宅でしょうか?とおじいさんに問うと、いえいえ違います、このお宅の隣りの、この、工事現場に用があったんです、とのこと。


くたい、とは、整体とかじゃなくて、躯体、で「くたい」と読むもので、工事現場の専門用語だったよう。

おじいさんは、体操教室に来ていたのでなく、働きにいらしていたのだった。


何はともあれ、おじいさんが遅刻して若い現場の人に怒られなくてよかった、と胸を撫で下ろし、お別れした。


ほんの少し前までは、自分の辛い気持ちでいっぱいで、誰かに助けを乞われることなんてなかったから、少しずつ調子を取り戻しているのかなあと思う。


明日は雨かな。
雨ならば雨で、利用者の方が少ないうちに、本棚をきれいに整頓しておく仕事がある。
黙々とできるから、好きな仕事だ。
明日もちゃんと出勤できますように。

投げ銭?みたいなことなのかな? お金をこの池になげると、わたしがちょっとおいしい牛乳を飲めます。ありがたーい