クレディスイスのAT1債のリスクと資産運用の仕方
1.クレディスイスのAT1債とは何か
AT1債とは、追加的Tier1資本と呼ばれる銀行の資本の一種で、銀行が経営危機に陥った場合に株式に転換されるか、価値がゼロになることで損失を吸収する債券です。
AT1債は、2008年の金融危機後に導入されたもので、銀行の自己資本比率を高めることで、公的資金に頼らずに自力で再建できるようにすることを目的としています。
AT1債は、投資適格格付け以下の企業債であり、高い利回りを提供しますが、デフォルトリスクや価格変動リスクも高いです 。
2.クレディスイスのAT1債がゼロに書き下げられた経緯とその影響
UBSによるクレディスイスの買収とスイス当局の介入
クレディスイスは、シリコンバレーバンクやシグネチャーバンクなどの米国の銀行の破綻により大きな損失を被り、経営危機に陥りました。
クレディスイスは、2023年3月19日にUBSに約32.5億ドルで買収されることになりましたが、この買収はスイス政府や金融監督当局(Finma)の仲介によって成立したものでした 。
Finmaは、UBSへの買収を支援するために、クレディスイスのAT1債をゼロに書き下げることを決定しました。これは、AT1債保有者に対して最大級の損失を与える措置でした 。 2-2. AT1債市場への波及効果とスイス債の信用リスク
Finmaの決定は、AT1債市場に大きな衝撃を与えました。AT1債は通常、株式よりも優先されると考えられていましたが、Finmaは株主に32.5億ドルを支払う一方で、AT1債保有者には何も支払わないという異例の措置を取りました 。
このことは、AT1債が想定されていたよりもリスクが高いことを示すものであり、他の銀行のAT1債も売り圧力にさらされました 。特に、同じくFinmaの監督下にあるスイス発行のAT1債は信用リスクが高まりました 。
AT1債市場は約2600億ドル規模であり、銀行や投資家にとって重要な資金調達手段や投資対象です。しかし、クレディスイス事件はAT1債市場の将来性や損失吸収メカニズムに疑問符を投げかけました 。
3.安定して高利率が必要な金融商品を3選紹介
High-yield debt(高利回り債):投資適格格付け以下の企業債で、デフォルトリスクが高いが、高い利回りを提供する 。例えば、米国発行の高利回り債指数(ICE Bank of America US High Yield Total Return Index)は2023年5月11日時点で4.15%の利回りを示しています。
・High-yield savings accounts(高利回り貯蓄口座):
オンライン銀行が提供する貯蓄口座で、従来の銀行よりも高い利率を提供する。例えば、Varo Savings Accountは最大5%(条件付き)の利率を提供しています。
・Safe investments(安全な投資):
市場変動や資本損失のリスクが低い投資で、低い利率でも安定した収入を得られる。例えば、米国政府証券(Treasury securities)やCD(Certificate of Deposit)などがあります。
4.FIREまでにそれぞれの金融商品にて資産を年別シミュレーション
4-1. シミュレーションの方法と仮定条件を説明
FIRE(Financial Independence, Retire Early)とは、早期退職や自由な生活を目指すライフスタイルです。FIREまでに必要な資産額は人それぞれ異なりますが、一般的な目安として25倍ルールや4%ルールがあります 。
FIRE(Financial Independence, Retire Early)とは、早期退職や自由な生活を目指すライフスタイルです。FIREまでに必要な資産額は人それぞれ異なりますが、一般的な目安として25倍ルールや4%ルールがあります 。
25倍ルールとは、年間必要な生活費(支出)×25がFIREまでに必要な資産額だというルールです。例えば、年間500万円必要ならば500万円×25=12.5億円必要です。
4%ルールとは、退職後最初の年度から毎年4%ずつ引き出すことで30年間持つだろうというルールです。例えば、12.5億円あれば最初の年度から500万円引き出せます。
シミュレーションでは、25倍ルールや4%ルールを参考にしつつ、以下の仮定条件を設定します。
年間必要な生活費(支出):500万円
現在年齢:40歳
FIRE希望年齢:50歳
現在の資産額:1000万円
初期投資額として、高利回り債に500万円、高利回り貯蓄口座に300万円、安全な投資に200万円を割り振ります。
年間の収入(収入):300万円
年間の貯蓄率(収入-支出):40%
年間の投資成績(利回り):高利回り債は4.15%、高利回り貯蓄口座は3.00%、安全な投資は0.50%と仮定します。
4-2.シミュレーション結果
以下の表は、それぞれの金融商品にて資産を年別にシミュレーションした結果です。
分析として、以下の点が挙げられます。
高利回り債は最も高い利回りを提供しますが、最もデフォルトリスクや価格変動リスクが高いです。市場環境や発行企業の信用状況によっては、損失を被る可能性があります。
高利回り貯蓄口座は中程度の利回りを提供しますが、預金保険制度の対象となる場合があります。ただし、オンライン銀行によっては預金保険制度の対象外であったり、条件付きで高い利率を提供したりする場合があります。
安全な投資は最も低い利回りを提供しますが、最も市場変動や資本損失のリスクが低いです。インフレーションや税金などの影響を考慮する必要があります。
5.まとめ
クレディスイスのAT1債は、UBSによる買収とFinmaの介入によってゼロに書き下げられました。これはAT1債市場に大きな衝撃を与えました。
安定して高利率が必要な金融商品として、高利回り債、高利回り貯蓄口座、安全な投資を紹介しました。それぞれにメリットとデメリットがあります。
FIRHまでにそれぞれの金融商品にて資産を年別シミュレーションしました。シミュレーションでは、高利回り債が最も高い成果を示しましたが、リスクも高いことに注意が必要です。
読者に向けたアドバイスや提言として、以下の点が挙げられます。
自分の目標やリスク許容度に合わせて金融商品を選択することが重要です。一つの金融商品に偏らずに分散投資することも有効です。
高利回り債や高利回り貯蓄口座は魅力的な金融商品ですが、市場環境や発行者の信用状況によっては大きな損失を被る可能性があります。常に情報収集や分析を行い、必要に応じて売却や移行を検討することが必要です。
安全な投資は低い利回りですが、安定した収入源として有用です。インフレーションや税金などの影響を考慮し、適切な期間や金額を選択することが必要です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?