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職人がレッドリストに載る未来がくるかもしれない

一次生産から加工業や製造業や建設業まで、割に合わない評価を受け続けている技術職や職人が転職&高齢化&人口減で激減する。これはもう、統計的にも避けようのない未来です。

先日、田村シェフとお話をしたときにこうおっしゃっていました。

このままだと質の高い仕事をしている生産者さんがどんどんいなくなってしまう。その時に自分たち料理人は技術があっても、
素材が手に入らなくなってしまってはどうしようもない。

だから、もっと生産者さんたちに光が当たるようなことを仕掛けていきたい。

農業、林業、漁業などの一次生産と呼ばれる業界が後継者不足でやばいと言われてもう20〜30年近くたつ気がします。

ITやlotや流通革命、そしてAIやロボットの組み合わせで大量生産的な解決策は出るには出るでしょう。しかし、そこにあるのはフラットなプロダクトとしての食材になってしまう可能性が高い。

僕は多様性があることこそ豊かな社会だと考えているので、この流れにはちょっと危機感を感じています。

※特に漁業は色々な問題も絡んでおり魚も漁師も危機的状況です。


建築業界の職人も絶滅危惧種になる

同じことは他の業種でも言えるでしょう。僕のいる建築業界でも、腕のいい職人不足の声は年々大きくなっています。

先般、熊本の地震の際には瓦職人が圧倒的に不足し、長い間ブルーシートを屋根にかぶせてやり過ごす家がたくさんありました。

飛行機で熊本に向かうときに、地上に青い屋根の家がまばらにある光景を見て、人手不足と有事の際に似た構造の家屋が一斉に似たダメージを受けるリスクをまざまざと見せつけられました。

瓦職人に限らず、左官やタイル、高難度の木工などの高い技術力と経験を求められる職人は高齢者ばかりです。

そして、この生涯現役で活躍してくれている層が現場から離れるとされる2025年前後から、一気に建築現場での職人不足と技術不足で、デザイナーが絵を描いても作りたいものが作れない状況が出てくるはずです。


多様性の保全こそ危機を乗り越える鍵

同じことは人だけではなく、食べ物にも言えます。

あっという間にスピード可決してしまった種子法廃止。

端的に言えば戦中戦後の食料不足に対して、国をあげて安定的かつ地域ごとに多様性のある主食の供給を目的に作られた法律でした。が、時代にマッチしていない&民間の競争力を活かすために、という理由で廃止になりました。

問題は、市場の競争原理が働いた際に多様性が担保されず勝ち残った一者総取りの状態になることです。

そのとき、その種に対して強い病気が流行すれば、下手をするとまた食料不足=米不足のピンチを迎える危険性があります。

これは種子法の対象である米や麦などの話ですが、人間だって同じなんじゃないかと思うんです。

色々な働き方、職種、仕事があることによって、何か大きな技術革新や概念の切り替えがあったときにも社会全体で耐えられる。

つまり、多様性と流動性こそ社会のセーフティネットそのものなんじゃないでしょうか?


その為に何ができるのか?

では、その多様性と流動性を保つために僕たちには何ができるのでしょうか?

一つは、状況を知り伝えること。

知らない人が多いまま、気づけばレッドゾーンに突入して絶滅してしまう事は避けたい。その為には、レッドリストのように警鐘を鳴らす存在が必要です。

ただし、ヤバイヤバイとみんなで言っていても状況は改善しません。

状況をシェアしつつ、次の手を考えて実行するのが大事。とは言えまずは知ってもらうことがはじめの一歩でしょう。


2つめは、保全のタネを植えること。

これは、後継者不足の所があれば後継希望者を紹介したり情報を伝えたりする事もそうですし、自分自身が小さくともその技術を少しかじってみる等でも良さそうです。

100%の伝承・継承は無理でも、いわゆる金継ぎ教室やワークショップのように入門のきっかけになる入り口作りをすることにも価値があると思います。

僕の場合はDIY施工やできる箇所を自分たちで作ったりしますが、その都度プロの方のすごさを痛感しています。こうして少し自分でやってみたり、そこからプロの方々に仕事をお願いすることも多様性を維持する役にたてるでしょう。


3つめは、活動を支援する=お金か人手を出す。

身もふたもないですが、何かするにはお金も人出も必要です。もしも自分で何か動いたり、考えたりが時間的な制約などでできない場合は、共感できる理念で活動している人にお金や人手を託すというのも一つの解決策です。

ここら辺は、日本はまだまだ寄付文化も未熟なままですが、寄付=税控除を狙った節税+αの行為としてではなく、応援したい気持ちからお金を出すという文化はもっと根づいていけばいいなと思っています。


本日はちょっとマジメな社会派のお話でした。

問題だらけな現代ですが、ちょっとでもマシに手直ししつつ、次世代へとバトンを託せればと思います。


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