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美味しい香りの思考法から読み解く、味覚の観察スケッチ

昨晩、外苑前にあるnoteの会社さんで田村さんの香りのワークショップに参加してきました。元々の経緯は、飲食店はもっと美味しいノンアル作るべき!というnoteからノンアル話がちょっと盛り上がって、そこに田村さんが商品開発をされているアロマティザンという商品のお話などで乗ってくれて、ワークショップやるよ!というお知らせがきたので速攻で申し込んだ、という経緯。

で、先に言いますが、会の内容の詳細レポートは他の方に譲ります。

今回は香りの感じ方の説明や、どういう組み合わせをして香りや味を設計するかの方法論、そしてそれらをレベルアップさせるための観察方法を僕なりの視点でまとめ直します。

ワークショップではテーブルにずらっと14種類のハーブ類が並べられて、実際に田村さんが作ってきた「美味しい香り」3種類を飲みながら、中身を当てつつ香りや知覚の話をしました。

整然と並べられたハーブ&スパイス類。写真では7個だけど、全部で14種類ありました。

「美味しい香り」として3種類のドリンクが。使われているハーブやスパイスがそれぞれ違い、左は2種類Mix、中央が4種類Mix、右は8種類のMixとのこと。

もうね、1個とかは当てられるけどあとはサッパリわからん!でもワインとすごく似ていて、奥の方に土っぽい香りがしたり、海の塩みたいなミネラル感を感じたり、草の香りや植物の青みがかった香りがしたり...こんなに重層的な香りの液体は初体験。

ちなみにこれ、ワークショップ参加して飲んでいない人にはサッパリだと思いますので、ぜひ公式ショップでお買い求めいただきまして作って飲んでください。きっとビックリします。飲んでから読んでもらったほうが理解が深まるはず、たぶん。

というわけで、前段終わり。

まずは科学的なところも含めて、香りって何よ?というところから説明していきましょう。(例によって長いので時間あるときにどうぞ〜)


香りの基本あれこれ

まず、基本中の基本です。

香りというと嗅覚=鼻でくんくんするアレを想像しますが、これは空気中の香り成分を吸っているだけです。これ以外にも、口の中で感じる香りの成分や、飲みこんだあとに立ち上ってくる香りの成分もあります。

前者がたち香、後者があと香と言います。ここら辺は樋口さんのnote「ドライアイスを使った香りの演出」を読んでください。

要するに、香りといっても複雑で、単純に香り成分の知覚だけではなく、味や色や舌触りなどいろいろな影響を受けてトータルで味わっているわけです。

これ以外にも香り成分の揮発のしやすさ、温度による感じ方の違い=冷たい時と暖かい時とでは香りの感じ方が変わったり、好きな香りを検知しやすい人と苦手な香りを検知しやすい人など個人差も大きくあります。

また、後述しますが香りの知覚能力は訓練することである程度までは鍛えることが可能で、味覚の解像度が上がることで今までハッキリとわかっていなかった香りを捉えたりもできるようになるそうです。


味覚と知覚から美味しい香りを考える

味を構成する基本の五味=甘い、苦い、辛い、酸っぱい+旨い、というのは聞いたことあると思います。この五味+香り+食感などが味わうという知覚ですね。そして今回は「美味しい香り」という液体をどう構成するのか?がテーマです。

液体である以上、食感などの要素は排除されます。そして、五味から構成すると複雑になり過ぎるとのことで、田村さんはワインやハーブティーから着想を経て甘味・酸味・苦味の三つ+香りで美味しい香りの液体作りにチャレンジされたそう。

イメージとしては上図の右側のようなイメージですね。甘味、酸味、苦味の三つの要素でステージを作ってあげて、メインとなる要素を支えつつ、間のスペースに香りを設計していくような感じ。

ちなみに、この図だけだとサッパリわからないと思いますので、もうちょい補足します。


香りの構成方法とワインテイスティング

突然なんですけど、ワインのテイスティングってしたことありますか?赤い果実が〜・・・とか、海を感じさせるミネラリティが〜・・・とかのアレです。

ソムリエ試験対策なんかでは、ワインの香りの表現力を鍛えるために香りのトレーニングキットがありまして、フランスの人が開発した54種類の香りのやつが有名です。

54種類の香りは以下。

フルーツの香り
1 レモン
2 グレープフルーツ
3 オレンジ
4 パイナップル
5 バナナ
6 ライチ
7 メロン
8 マスカット
9 リンゴ
10 洋ナシ
11 マルメロ(花梨)
12 イチゴ
13 ラズベリー
14 グースベリー(西洋スグリ)
15 カシス
16 ブルーベリー
17 ブラックベリー
18 サクランボ
19 あんず
20 桃
21 アーモンド(ナッツ)
22 プルーン
23 クルミ

花の香り
24 サンザシ
25 アカシア
26 菩提樹(リンデン)
27 ハチミツ
28 バラ
29 スミレ

植物の香り
30 ピーマン
31 マッシュルーム
32 トリュフ
33 酵母
34 ヒマラヤ杉
35 マツ
36 リコリス
37 カシスのつぼみ
38 干し草
39 タイム
40 バニラ
41 シナモン
42 クローブ
43 コショウ
44 サフラン

動物の香り
45 皮革
46 ムスク(ジャコウ)
47 バター

香ばしい香り
48 トースト
49 ローストアーモンド
50 ローストしたヘーゼルナッツ
51 カラメル
52 コーヒー
53 チョコレート
54 スモーク

はい、ずらっとこんな感じ。

大別するとフルーツ、花、植物、動物、ナッツやスモークの5種類ですね。これで香りの世界が全てってわけではなくて、ココナッツとか黒糖とか、ここにはないけど香りが特徴的なものはもちろん他にもあります。代表的なやつだけです。

で、ワインのテイスティングだと香水みたいに最初に感じるトップノートから中間にあるミドルノート、飲み終わった後に立ち上ってくるラストノートの3種類くらいで香りや味わいの変化を見たりします。

これ以外に色を見たり、粘性を見たり色々見るんですけど、そこらへんは複雑になるのですっ飛ばして香りの構成方法を図解化しますね。


さっきの分類をザックリ描いてみるとこうなります。

で、どう構成するかですが、おそらく基本ロジックとしてはメイン要素+サブ要素+隠し味の3つで構成するのが良さげです。

スタンダードに行くなら上から組んで、果実や花+葉や茎や草+種や根っこや鉱物でそれぞれをバランスみて構成するとまとまりそうな印象。

例えばこんな感じ。

【 基本の香りの構成例 】
メイン:花 = ラベンダー
サ ブ:葉 = レモングラス
隠し味:根 = ヒノキ

オーソドックスにメインに花or果実の要素で香りが強くキャラが立ってるラベンダー、そこを軸に葉の要素として清涼感あるレモングラス、隠し味にテルペン類の香り成分を持っているヒノキ。

・・・って、これワークショップで出てきたやつの組み合わせ例ですけどね。

実際はさらに杉パウダーと山椒を加えてあり、砂糖で甘味の軸を作りつつ、アスコルビン酸で酸味を足して全体のバランスをとっていました。プロの技術だ。。。たぶんロジックだけではそう簡単に再現できないと思われます。。。

でも一個ヒントもあって、おそらくこれって日本の伝統芸能である華道の考え方が使えそうです。



香りを真・副・控で考える

華道の考え方で、真(しん)・副(そえ)・控(ひかえ)というものがあります。

真(しん) = メインの軸
副(そえ) = サブの軸
控(ひかえ)= メインのカウンターになる隠し味

華道をやっているわけではないので超ザックリですけど、概要だけいえばこんな感じです。さっきの要素の組み方と似てますよね?

とはいえ、田村さんも言っていましたけどロジックの予定調和だけで作るとフックのない味わいになりがちなので、最終的にはあえてロジックを崩す違和感を盛り込んだりの工夫は必要だそうです。そこら辺は...センス?いや、個性って言ったほうがいいかな。


以上!・・・と言いたいところなんですけどね、この上記の香りの構成方法ってロジックわかっても再現したりアレンジしたりはかなり難しい部類に入ると思うんですよ。

それに、香りってそれ単品で成立しているものではなくて、特に食事ってミスって毒物食べたりすると命に関わるので記憶にも残りやすい。

例えば、みなさん梅干しを想像してみてください。なるべくリアルに。口の中に梅干しが入っている時を思い浮かべて...ほら、なんかすっぱくってヨダレの出てくるあの感覚ありません?

要するに、味の構築って記憶とも密接に結びついていて、単純に香りと味のロジックだけではなくてもっと複雑な読み込みが必要なんですね。

そこら辺はもう、どれだけ引き出しを持って、その組み合わせをイメージできるのか、なんでしょうね。

じゃあ、それってどうやってトレーニングすんのさ!という疑問にお答えします。

それこそ #観察スケッチ をしてください。

でもこれ、基本的にはプロダクトや空間デザインやグラフィックなんかの視覚表現用で、物理的な機能のある物を観察する方法なんですね。

それで実は去年の今頃に田村さんと飲みに行って話して以来、もやもやと「食の観察スケッチ」もできるんじゃないか?一流の料理人は知らず知らずにやっている訓練方法があるはずでは?と思って頭の片隅で考えていたんです。

で、昨日ついにその仮説に至りました!後編へ続く!


後編書きました!


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