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澤田賢一郎|ナレーター×フリーナレーターズユニオン代表【パラレルアーティスト図鑑#3】

こんにちは。ガリバー宇田川です。

NPO法人日本アーティスト協会が提供する「パラレルアーティスト図鑑」では、複数の分野で活躍する表現者の方にスポットを当て、多様な社会を生きていくヒントをシェアしています。

第3回となる今回は、爽やかナレーター、そして、フリーナレーターズユニオン発起人兼代表理事としてご活躍中のの澤田賢一郎さんにお話を伺いました。

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フリーナレーターズユニオンは、日本語ナレーションに特化したナレーターコミュニティであり、「フリーランス」「芸能プロダクション代表」「事務所所属だが自由に案件に関わる者」など自立したナレーター同士で仕事を紹介し合う、相互キャスティング団体です。

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澤田さんは自身が現役のナレーターであり、組織を運営するビジネスマンでもあります。

コロナ禍で自粛が続く4月末、Zoomで取材に応じていただきました。

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◆パラレルキャリアについてどう思いますか?

僕自身、そもそも自分がパラレルという意識がないんですよね。

色んなことをやっているように見えると思うんですが、基本的にクリエイティブの仕事をする上で、技術の部分だけに注力するというのは、仕事のしかたとして不完全だと思っているんです。

僕の場合、ナレーションという仕事をしていく上で、自分が仕事をし易い環境を作っていこうとしていたら、自然と今のような活動になっていったという感じですね。

僕も事務所に所属していたことはありますけど、その形って、営業やマネジメントを事務所に委託するということ。

そういう業務があること自体を知っていて任せるのか、何もわからずただ任せているのかでは全く違うと思います。

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◆ナレーターの今とこれから

今は、「上手いけど食えない」という状況が生まれてしまっているんですよ。

その根本は知識や考え方、マインドセットだと思うので、SNSや記事などで発信していこうと思っています。

9割食えないと言われている業界の中で、ユニオンメンバーの6割以上が自分の好きな活動のしかたで食えるようになっているのは明るい話題かなと思っています。

ユニオン内でもよく言っているんですが、自分の仕事を生み出すのと、他の人の仕事を生み出すのは、別じゃないんですよね。

あくまでも仕事相手のニーズにこたえることが仕事と考え、自分がフィットしないからといって機会ロスをせずに、誰かができる仕事があれば積極的に受ける。

そうすることでプレイヤーとしての自分の価値だけではなく、仕事を受ける人間として価値が上がるんです。

ユニオンとか自分とかではなく、自分ができること全てを使って相手の役に立つというマインドを持つことが大切だと思います。

仕事で稼げている人の特徴としては、自立している人、依存しない人ですかね。

スキルを持った上で、一緒に仕事をしていても安心できる人間性は大事だと思います。


◆ナレーターの仕事の課題

最近、ユニオンのメンバー内でも「仕事の価格表を公表してもいいのではないか?」という話題があがっています。

依頼する側が業界の相場を知ってもらえば、変に買い叩こうとしないでしょうし、初めて依頼する人も安心かなと。

アニメの声優さんの最低金額は1万5千円なのですが、ナレーションはそれよりもちょっと高いです。

あくまでも僕の感覚ですが、直接ならWEB動画やTV番組などのナレーションの相場は3~5万円、実績のある方でも5~10万円くらいでお受けできると思います。

大手の代理店経由だともっと高くなるとは思いますけどね。

CMに関しては、その期間中は競合企業に提供できないという契約を結ぶ代わりに、数十万~百万円単位で高額になることもあります。


ナレーターのキャリアには、正直、ベストは無いと思います。

養成所を出ても9割以上が食えていないわけなので、一緒に考えながら開拓していく人が増えてくれたらいいなと思います。

そもそもプレイヤーの数に対して仕事の数が足りていないんです。

声の仕事は、そのままだと直接的に関われる業種は少ないので、例えば映像を作る上流の部分から丸ごと受けられるようにしてしまえば、自分で仕事を作れるようにもなる。

その仕組みさえ持っていれば、ただしゃべるだけの仕事をするより、映像を作れるというサービスも提供できることになるので、結果的に価値が上がると思うんです。

(仕事の食い合いを懸念する人はいませんか?)僕の周りにはそういう考え方の人はいないですね。

それって今ある仕事を取り合う人の発想で、僕らは競合ではなく協業の感覚なので、仕事のパイを増やす活動をセットでやっています。


◆澤田さんのキャリアを教えてください

学生時代、アニメ好きの友達と一緒に地元の愛知から東京に修学旅行に来た時、声優の職場体験を受けて感動したことが始まりです。

鉄腕アトムのお茶の水博士の声優さんがやられていた勝田声優学院➤他養成所➤事務所➤フリーといった形でキャリアを積んできました。

ただ、実は僕は父親が会社をやっていて、今は弟が継いだんですけど、一般の家庭よりもお金があったんです。

これはよく声優さんの世界でも言われることですが、「プロになるなら家が金持ちじゃないと無理」っていうのがあるんですね。

僕もこれにお世話になったこともあって、家を出る時にある程度の覚悟をして出てきたものの、結果的にかなり助けられていたと思います。

お金や時間は、他の人よりも有利だったと思います。

今になって思うのは、勉強やワークショップなど、本当にお金がいるなということ。

さらに技術を積み上げた後には、ビジネスをするための費用が必要です。70万円近くかけてHPを作ったり、ビジネスの幅を広げるために交流会などへ参加したり。

僕がやっているのは、僕が「これがあったら便利だったな」と思うことなんです。

仕事をしやすくするための環境や、養成所ジプシーしてお金を浪費しなくても短期的に成長できる環境など、本気の人が仕事を成立させやすくなる環境を作って提供しています。

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◆今の活動スタイルのきっかけを教えてください

仕事しないと死ぬというのが一番大きいんじゃないですか(笑)。

僕も食えるようになったのはここ数年ですが、自分の人生考えて本気で仕事増やそうと動き出してからは1年で成立させられました。

声優事務所にいる時でも、事務所からの仕事で得られる芸能の年収としては10万円程度でしたし、フリーになれば尚更自分で持ってこなければ仕事が自動的に降ってくるわけでもなかった。

貯金が底をついたら死ぬので、その前にできることは何でもやって生活できるようになろうと、毎日新しいことに挑戦しながら必死に動きました。

まずはビジネス系の交流会に参加して、ナメられないようにと背伸びもしながら、経営者の方々と肩を並べて話せる自分でいたいという思いから、信頼される人間であろうと意識も変えました。

日々経営者の皆さんとお互いの仕事の話をすることで、自分の固定観念による声の仕事の思い込みを壊すことができました。

自分の業界の常識にとらわれずに広い視野と本質を見る目が身についたかと思います。

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◆現在の活動の状況

今年はコロナの影響で先が読めないですが、概ね安定しつつあります。

初年度は、目立ちすぎると業界内で叩かれるんじゃないか(苦笑)というリスクを考慮して、水面下で仲間を集めながら、取引先を開拓していきました。
2年目は内部のメンバーの成長を促進させるために内部整備に時間をかけました。
3年目から現在までは、体制も安定してきました。

仕事の比率については、2年目までは自分がナレーションをするのとキャスティングするのとで半々でしたが、今は自分の仕事量は変わらずキャスティング案件が増えてきて、1:3くらいの比率になっています。

僕自身がプレイヤーとして活動し続けるからこそ「声の仕事で食える人を増やす」という言葉に説得力も増すと思うので、組織運営や新たな仕事の仕方の構築も進めながら、この先もずっとプレイヤーを続けていくつもりです。

苦労したこととしては、やることがめちゃくちゃ多くて、進みが遅くなることがある点ですかね。

初期は特に信頼できるメンバーのスカウティングや、仕事の創出をしていくことで、メンバーが「ここに居たい」という環境や仕組みを作ることに奔走しました。

今は約40名ほどのハイレベルなプロが参画してくれていて、運営委員会理事として全体のことも考えつつ頑張ってくれている仲間も多いので、案件数はそこらの事務所には負けない自信はありますね。

それでも、これからもっと高いレベルを目指したり、僕自身もっとやりたいことがあるので、常に人手が欲しい状況ですね(笑)。


◆今後のビジョン

「本気でやっている人間の5割が食える環境を作る」というビジョンを軸にして活動しているので、様々な取り組みを進めています。

それをやってくれる仲間がもっと増えたらいいなと思っています。


◆さいごに若者へメッセージをお願いします!

本気出してほしいです。
時間は減っていく一方なので、覚悟を決めて。

僕は再現性のあることしか言わないので、本気出せばやれると思います。

ただ、自分の思っている本気は本気じゃないことが多いので、そこにとどまらないでほしいです。

自分の居やすい環境にとどまらないで、新しい環境に飛び込んで自分の視野を広げるといいと思います。


さいごに

声の業界の未来を切り拓くべく奮闘中の澤田さんのお話、いかがだったでしょうか?

これから声の仕事を志す皆さんの指標になるお話だったかと思います。

ご興味のある方は、ぜひ澤田さんのSNSやフリーナレーターズユニオンへコンタクトしてみてください。

澤田さん、ありがとうございました。


※コロナ禍で自粛が続く4月末、Zoomで取材に応じていただきました。
(※取材からの抜粋のため、かなり端折っている点、ご注意ください)


<インタビュアー/ライター>
ガリバー宇田川
HP▶https://udagulliver.themedia.jp/
note▶note.com/udagulliver画像1


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