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二〇一六年八月 弐

scene 130

8月も半ばに差し掛かり、寒河江中央学院高校は教職員も夏季休業に入る。今年からできた「山の日」という祝日から一週間だ。
俺の実家には仏壇がなかったので、「お盆」という風習をよく知らなかった。ざっくり、八月の中頃に会社員も夏休みくらいに思っていた。
石川家に婿入りした昨年、お盆という風習には意味や手順があると知り、感心した。火を焚いたり墓参りしたり客が来たりお坊さんが来たりと結構賑やかだが、それにはすべて意味があったのだ。小川あたりならとうとうと説明できるだろうが。今年はそのお盆にケイトとナルヨシが加わり、ゲストとして二人の両親、三浦夫妻も訪れる。昨年にも増してにぎやかなお盆になりそうだ。
「三浦さんたちは、夕方までにはこっちに着くそうよ」
携帯で電話していた母が、通話を終えて微笑む。八月に入ってからは夕立が数回あっただけで、毎日晴れの連続だ。そんな日の午後、この屋敷の中はエアコンを使わなくとも、開け放たれた玄関から吹き込む風で十分に涼しい。神社と間違うほど木立に囲まれた石川宗家は、森林の涼しい風に恵まれている。
「思ったほど渋滞してねみでだしな」
三浦家は自家用車で寒河江に向かっているとのことだ。俺もこのあいだの正月には雪江と二人で所沢へ車で帰ったが、ほとんど渋滞していなくてもたっぷり半日かかる。多少の渋滞があって夕方には着くということは、早くに自宅を出たのだろう。
「ケイトのトマトがちょうどよく熟してるよ」
畑を見てくれている祖母がにっこり笑う。
「じゃ、ひと仕事しますか」
俺は独り言のようにつぶやき、首にタオルを巻いてブッシュハットをかぶり、外に出る。倉庫から草刈機を持ち出し、目につく雑草を刈る。とにかく広い敷地は、家屋敷や畑、車庫に倉庫に駐車場など、活用しているスペースは半分にも満たない。残りは公園のような遊歩道を備えた森林である。なんでも、今では日本に自生してない植物がそのまま残っている箇所があるらしく、大学で研究対象になっているとか。そういう貴重な部分に手を付けないよう、歩道沿いの雑草を刈って回った。
「本気で学院の運動部をバイトで雇いたいな、これは」
小一時間草刈り機を抱えて歩き回ったおかげで、もう全身汗だくだ。
「若旦那、あどしぇーさげ、一服してけらっしゃい」
声に振り向くと、真っ黒に日焼けした孫兵衛さんが笑っている。首にタオルを巻き、学院の野球部のレプリカキャップをかぶっている。野球部の練習試合の遠征費を補助するために利益を多めに乗せて売っているのだが、寒河江市民は結構これに協力してくれて、町中や田畑でこれをかぶっている人をよく見かける。
「いやー、おんちゃんだってまだ体本調子でねえべ」
少しずつだが、山形弁がナチュラルに出てくるようになっている俺。
「なーにさすかえない、むしろ去年より調子いいみでだ」
孫兵衛さんは草刈り機を取ると慣れた手付きでエンジンをかけた。
「んぼこだ帰ってくっさげ、見栄え良くしとがんなね」
去年の暮にこの庭の雪の中で倒れ、生命を落としかけた孫兵衛さんだが、その足取りはしっかりとしている。体は無事回復しているようだ。
「んじゃ、お願いするっす」
草刈り機の作動音に負けないような大声で孫兵衛さんにそう告げ、俺は喫煙所へ向かう。
石川宗家のVIPカー、メルセデス・ベンツ専用車庫として使っている納屋の軒先近くに設えられた東屋が喫煙所だ。ほとんど直射日光が差さない場所にあり、暑い時期は結構快適だ。そこにはもう父が先客として座っていた。
「暑いどごご苦労だな」
盆の真っ只中で、日中の気温も年間最高記録だが、石川宗家の当主は個人事務所へ出勤していくときと変わらない服装だ。白い夏用ビジネスシャツに、明るいグレーのスラックス。足元は雪駄なのが普段との違いか。
「やっぱお客さん途切れないから、結局普段と同じカッコだ」
俺はそう言いながら父の向かいに座り、タバコを咥える。
「まぁな、誰が来るかわかんねえすよ、こっちのほうが気が楽だ」
「去年県知事来たっけね」
「去年は県議選だっけがらな、特別だべ。あど、今野先生が今年は顔出すってゆうがらよお」
父は山形県選出の衆議院議員の名をさらりと出す。父が若い頃私設秘書として付き従ったという政治家で、俺と雪江の媒酌人でもある。春に卒業した柏倉はその伝手で、この先生の東京事務所でアルバイトという形で政治家修行を始めている。
「俺がなにしたてや、頼親」
声に振り向くと、そこにいたのは山形一区選出の衆議院議員、今野紀一郎先生その人だった。この辺り一帯、街なかから山ぎわ、田んぼと畑の中に至るまで、この顔と政党名とスローガンのポスターだらけだ。実物は少しだけ顔にシワが多く見える。
「ないだて先生、ゆってくれればお迎えあがるべした」
父が真剣な顔になって立ち上がり礼をするので、俺も慌てて同じように頭を下げる。
「しぇーさげしぇーさげ、いっつもゆってるべ、頼親は俺の舎弟だってよ、弟さ会うのに堅苦すいこどすねべ」
ノーネクタイのシャツに夏物のスーツ、という装いの今野紀一郎先生は、むしろ父よりも山形弁がキツい。
「んだら、さっそく中さ入ってけらっしゃい」
「いやー、俺さも一服さしぇろっちゃ、いまどぎはタバコも堂々と喫われね。頼親の家だら、じぇったい外がら見えねがら安心するい」
今野紀一郎先生は笑って喫煙所のベンチに腰掛ける。脇に控えていた秘書がタバコとライターを渡した。
「先生、タバコは持たねのがっす」
父がようやくくつろいだ表情になって、今野紀一郎先生に語りかけた。
「俺が昔、先生がタバコくわえたとこに火を差し出したら、バガヤロ、男がそんなマネすんな、ってごしゃがっだっけ」
「おがすげな店のホステスみでなごど、政治を志す男はしてわがらねなよ。ええふりこいで点けられるほうもバガヤロなんだず」
今野紀一郎先生はそう言ってタバコに火を点け、タバコとライターを秘書に返した。
「ポケットにタバコが入っているのを見られないようにと、これだけは聞き入れてもらいました」
秘書さんが冷静に言って少し下がった。
「んだっけ、若旦那ど会うのは披露宴以来だな、名前だけ媒酌人ですぐいねぐなって、悪いっけな」
今野紀一郎先生が俺に深々と礼をするので、俺は土下座一歩手前の位置で礼を返す。
「先生、おらえの愛郎さほだいすねでけらっしゃい」
父が笑う。
「ほだな、頼親、お前がしぇで来たあの柏倉賢也には助かったのよぉ。そっちこっちの草野球チームがら助っ人頼まっで、投げで打って大かづやぐだも、俺も鼻たがいのっだなー。若旦那に面倒見でもらったってケンヤゆうっけじぇ」
「いや、私は柏倉くんが在籍してた軽音楽部の顧問なだけでして」
「すばらしぐケンカ強いんだってゆうっけじぇ、若旦那ば」
今野紀一郎先生が真面目な顔でいうので、父が爆笑した。
「先生、その話は後でゆっくりするっす、家さ入ってけらっしゃいっす」
父は今野紀一郎先生を促して、玄関へ向かう。俺と秘書さんはその後をついて並んで歩き出す。
「私、今野紀一郎山形事務所の笹原と申します。名刺は後ほど」
笹原と名乗った秘書さんは、俺の方を向いて軽く礼をした。俺はよろしくと応えて礼を返す。増田さんくらいの年齢だろうか。オニシロウ店長に近い雰囲気があり、眼光が鋭い。黒っぽいスーツをまとって大きめのビジネスバッグを持っているが、汗ひとつかいていない。
「私は昔の旦那様と同じ、私設秘書というやつで。言うなれば、芸能人のマネージャーみたいなものです」
「なるほど」
「先生の名前を売るのが仕事ですから、今野先生のところの若者が草野球の助っ人に来て活躍した、と記憶してもらうのも重要な仕事です」
「柏倉はお役に立ってますか、良かった」
國井たちのことは、教え子と言うよりは親しい後輩のように思っている。俺は素直に喜んだ。
「部活の顧問で一年足らずの付き合いでしたが、柏倉は非常に真面目だと感じました。口数が少ないので無愛想だと思われがちですが」
「東京に出張して彼に会ったら、よく話しかけてますよ。夜間大学へ行きたいって言うから、夜間部は東洋大が充実してるって教えておきました」
「どうもすいません色々」
「今野先生も彼が夜間大学に通う意思があることは知っておられます。ペーペーの頃なんぞ、夜やることは何もないだろうから、むしろ結構なことだと。彼は今野紀一郎東京事務所のただのアルバイトですが、学生の身分はあったほうが有利です。学生時代から今野紀一郎先生に師事していたと言うと、卒業後正式に私設秘書になった時、聞こえがいいし」
「なるほど」
「彼がそれまで持つかどうか、ですけどね」
秘書さんは少し挑発するようにそう言った。
「多分、大丈夫かと。体力と気力は有り余ってる奴です」
俺が返すと、秘書さんがニヤリと笑った。
「期待してますよ、っとおじゃまします」
秘書さんは今野紀一郎先生に続いて玄関をくぐった。
「あら先生!ご無沙汰してます」
家に入ってきた今野紀一郎先生に気づいた雪江が歓声を上げる。小振りなエプロンで若奥様ぶりをアピールした雪江は、今野紀一郎先生にくっついて仏間へ向かった。俺は汗をかいたので服を着替えると秘書さんに言付けて風呂場へ行く。シャツを脱いでタオルで体を拭って顔を洗う。部屋に戻ってデニムからカーキ色の綿パンに履き替え、シャツも仕事用のものに替えた。


scene 131

着替えて居間に入ると、今野紀一郎先生が家族と談笑していた。俺は正座して丁寧に挨拶をする。
「先生、私の旦那と会うのひさしぶりよね?」
「さっきタバコ場で会ったげっとな、今度は着替えてきたどれー。気使うなずー若旦那ー」
まったく今野紀一郎先生は、国会議員というよりそこらの気のいいおじさんのようなノリである。
「俺は大学出てすぐ先生のとこに行って、秘書にしてもらったんだ。もっとも、学生の時から事務所には出入りしてたっけげど」
「オヤジがぽっくり死んで地盤受けついだばりでよー、オヤジの私設秘書は一緒に引退するしー、だーれもいねっけがら、頼親がなんでもやったのよー」
「オヤジさんの政策秘書は残ってけだっけがら、俺がしたのは雑用と荒事ばんだっす」
今野紀一郎先生と父は目を見合わせてニヤニヤ笑った。何をしたのかは聞かないでおこう。
「そういえば理事長、県外がらの生徒ば、こごさ下宿させっだって聞いだげど」
今野紀一郎先生が、母に話題を振った。
「さすがお耳が早いわね先生。ちょっと事情のある子供なの。でも、とても素直で可愛い子たちよ」
「事情て何や。さすかえないごったらおしぇでけろ」
「男女の双子なんだげっと、外見と中身が入れ替わってるんです」
「なにほいづ」
「男みでなおなごど、おなごみでな男よう」
「わざどしったなが、ほいづは」
「わざどて言うか、男の体さおなごの魂入っておなごの体さ男の魂入ったんだんだな。ふざげでしてるわげではねえのはわがる」
「東京に行くとよくいますけどね、女装男子とか男装女子。アレは狙ってやってるそうです」
秘書の笹原さんが食いついた。
「川崎の麻生区の子だけど、マスコミやネットで騒がれ始めて、ご両親が田舎へ避難させようとして学院へ。さいわい、こっちでは大した話題にはなっていないようだけど」
「理事長もさまざまするったらよ」
今野紀一郎先生はチラと秘書の笹原さんを振り返って言う。笹原さんは素早くメモを取っていた。後で調べるのだろう。
「いろんな事情のある子を助けたいもの」
「おらも何がするいようだら、手伝うさげな、声掛けでけろ。頼親、おらぁ盆の間は山形さいっから、事務所さ顔出せ」
今野紀一郎先生はそう言うと、秘書の笹原さんとともに立ち上がり、祖母に大声で挨拶して石川宗家を辞した。笹原さんは、すぐに県連からお手伝いが来ますと言って去る。
「お父さんがあんちゃん扱いされてるの初めて見た」
俺は父に話しかける。
「まぁな、ほんとにあんちゃん時代からのつぎあいだしよ。年齢は一〇ばり上だし、頭あがらね兄貴分なのはまづがいねぇ」
「市議になるまでは、東京に行ったり来たりだったものね。新婚なのに月の半分も一緒にいられなかったのよう」
母が鼻声を出し、皆笑った。
それをきっかけにしたかのように、訪問客が次々にやってくる。そのタイミングを見計らってか、笹原さんが言っていた手伝い人員が三名やってきて、給仕や雑用をこなす。訪問客は仏壇に手を合わせてから、居間で茶を飲みながら談笑していく。一人一〇分ばかりで帰っていくが、とにかく絶え間なく客が訪れるのだ。俺は父の横で客の対応に立ち会う。少しづつ、客の名前と顔と地域を覚え始める。客の中には、鈴木の父親もいた。
「まんず石川先生、おらえのバカ娘ば面倒見でもらって、ほんてありがどさまっす」
「洋介、愛郎さほだいすねでしぇーがらよ」
父が鈴木の父親をファーストネームで呼び捨て、げらげら笑った。
「愛郎、洋介はよ、俺の実家ど縁続きでな、こいつがちゃっこいころからおべっだんだ」
「へー。んだのがー」
軽く訛ってみた。というか、最近はこの程度はナチュラルに出る。
「俺のばあちゃんは、岡村様がら嫁来たのよう。おらえなの岡村様から嫁ば貰ういような家ではねえんだげっと」
父の実家は、近隣では石川の五分家に準ずる家格なのだと聞いたことがある。
「お前のうづはふぐすいがら、親戚になっておぐべど思ったんだべ」
「ほだなごどないべしたー」
父と鈴木の父親はそう言って笑いあった。鈴木の家は寒河江では古くから米穀業と燃料小売業を営んでいる。このふたつを営むことができるのは富裕層に限られる。政治家の後援会幹部とは、そういう人が務めるのだ。
鈴木の父親が帰ると、しばらくして左沢の軍兵衛さん、柴橋の吉兵衛さん、東根の又兵衛さん、長崎の佐兵衛さんら分家衆が次々とやってくる。少し間をおいて東京の五兵衛さんがキャリーケースを引いてやってきた。石川五分家が揃う。五分家は盆と正月、宗家に挨拶に来るのが石川家の古くからの慣わしだという。
ただし、そう堅苦しいわけではなく、当然のように酒盛りが始まるというだけである。遅めの午後だが、煮物や漬物など質素な肴で酒を酌み交わし始める石川家。左沢の翔子さんは台所の母と雪江を手伝っている。柴橋・東根の奥さんたちは祖母を囲んで世間話に余念がない。普段に増してにぎやかだ。
「愛郎さ頼むだいごどあんだげど」
東根の又兵衛さんが、相変わらず水のようにビールを飲みながら言う。
「俺にゃ農家の手伝いは務まらねよ」
又兵衛さんは父よりだいぶ年上なのだが、気さくな人柄なので俺は敬語っぽい話し方はしない。なお、俺はもう親戚からは愛郎と呼び捨てされている。その感触は、嘲りというより親しみ、身内としての呼び捨てである。
「愛郎がさぐらんぼなのさんねなてわがてるべず。お前の得意なごどば頼むだいなよ」
「俺の得意なのって、ギターしかねえべ」
「ほいづよう。あのよ、東根で毎年十一月三日に市民まつりばやってんなよ。ほんで、この何年かは、東根出身の演歌歌手ば呼ばったんだ」
山形に住んで一年半だし、それは聞いたことがある。ある大物演歌歌手のファミリーに属しているそうだが、俺などはその大物の名前と代表曲をかろうじて記憶している程度で、ファミリーという人たちは売れているかどうかまったく知らない。
「アレはそこそこ売れっだんじぇ。三ヶ月に一回くらいNHKの歌番組さ出るんだ。東根は出身地だがらつって、タダみでなギャラで来てけでんだど」」
又兵衛さんは俺が考えていたことを見透かしたように話を続ける。
「あんまり毎年来てもらったがら甘えだんだべな、今年は七月になてがら頼んだら、もうスケジュール入ったってゆうんだ。それも、師匠の芸能生活五〇周年記念連続公演だがら、ファミリー総出演だも、休まんねっだな」
「一応芸能人だもの、遅くても半年前に言わねえとねえ」
「毎年、市民まつりでステージ終わったら、その場で来年も、つって頼んでだんだー。去年その場で頼みそごなって、ぼやっとして忘れっだんだど、マヌケだマヌケ」
「ほんで俺は何するの」
「体育館のステージはもう取ってあるさげ、何が音出してけろ。あの、新しい神町桜高校だ」
神町桜高校は、東根市にあった二つの公立高校を統合した新設校で、公立ながら男女とも制服が最新センスで人気があるというのを聞いている。又兵衛さんは、東根市は県内では珍しく人口が増えている市で、若い夫婦が東根市の開発地に新居を購入するケースが多いのだと付け加えた。
「音出してっても、俺が一人でギター弾いてるわけに行かねえべ」
「友達しぇでこいちゃ、何だったら学院の、部活の子供らどがよ」
今年の軽音部はまだ人前に出せるレベルではなく、陵山祭が精一杯だ。音楽仲間と呼べるミュージック総和の店長やスタッフは、楽器はできるがバンド活動をしていない。
「そうか、伊藤会長」
音楽仲間と言える連中を思いついた。そもそも大ベテランの大御所だ。
「又兵衛さんくらいのトシで、バリバリのロックバンドやってる人に声かけますわ」
「なにほいづ」
「天童のエースっていうジーンズショップの会長がやってるバンド」
「ああ、伊藤くんがぁ?」
「あれ、知り合いだった?」
「んだな、若い頃青年会議所で一緒だったんだっけ。ほだいも仲いぐしったわげではねえげどよ、伊藤くんもけっこういろんなあづまりさででくっから、今もたまに会うんだっけ」
又兵衛さんに限らず、名家である石川宗家と五分家の皆さんは、非営利団体の名誉職や監査役などを務める機会が多い。うちの両親も、そういうのをいくつ掛け持ちしているかわからないほどだ。
「伊藤会長、若い頃から同じメンバーでずっとバンドやってて、ジジイバンドってゆってテレビに出たこともあるって」
「んだがしたー、昔からガイジンみでなかっこばりすっけ、服屋やってるがらばりではねっけんだな」
又兵衛さんはそう言って笑い、任せたと言って俺の肩を叩き、席を変えた。

(「二〇一六年八月 参」へ続く)

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