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墓前で泣かないでくださいの話

昨日読んだ本の中で、よい言葉があったので、記録したいと思います。
ストーリーは警察ミステリーで、殺されて亡くなった身元不明の被害者の知り合いが見つかって「泣いてくれる人がいてよかったですね」言うセリフに対して、「そうでしょうか」と刑事が話す内容なんですが、まず、ネイティブアメリカンの教えをもちだします。
あなたが生まれたときはまわりの人は笑って、あなたは泣いていたでしょう。だから、あなたが死ぬときはあなたが笑って、まわりの人が泣くような人生を送りなさい。」というものです。
そして、「もしそういう人生が送れたのだとしたら、泣いていた周りの人たちも、いつか笑えると思うんですよ」と。
あぁ、そうだなぁ。私も、私の死後に私のことを思い出したときにも笑ってもらえるような、そんな人生を送って、笑って死にたいな、って思いました。
刑事の話は続きます。「しかし、そういう人生を送りたかったのに、送れなかった人もいます。つまり笑って死ねなかった人たちです」
・・・事故・事件・地震・災害・戦争・コロナ関連死、誰もがベッドの上で最期を迎えるわけじゃないことは分かっていならがも、予期せずやってくる死に対して、それが理不尽であればあるほど、その「死」に目が行ってしまいます。
人生を楽しく生きた、笑っている私を思い出して、残された人にも笑ってほしいのに、どうしても「死」(死に方)に目が行ってしまうこともあります。
ストーリーは、残された人たちが、死から目をそらしてその人の「生」を見ることができるようになるためには、「どうしてその人が死ななければならなかったのか」を知ることが大切ではないか、ということでミステリーの謎解きが始まるわけです。

「死」はその人の人生の最後の一瞬で、大切なことだけど、その人の人生は生まれたときから死ぬまで、もっともっといろんなことがあって笑ったり泣いたり、誰かと何かを共有して生きた時間があります。

私の赤ちゃんも、私のお腹の中では生きていて、私と、家族と時間を共有していました。
「亡くなった人を思っていつまでも泣いているというのは、その人の生ではなく死を見ていることになると思うのです」というセリフもありました。
どうして赤ちゃんが死ななければならなかったのか、を科学的に知ることはできないけど、赤ちゃんが私のお腹に宿って「生」きた時間があることは事実です。私が赤ちゃんの「死」ではなく「生」に目を向けると、妊娠中に一人で温泉旅行に行ったのも一人じゃなかったなぁとか、お腹けられて痛かったなぁ、とか、懐かしく思い出します。今は不妊治療しても妊娠しないのに、あの子はどうしてお腹にやってきたんだろう、とか、どうしてあの時、早く病院に行かなかったんだろう、とか、たくさんの「どうして」や後悔を抱えながら生きていくことで、赤ちゃんも私と一緒に生きているのだと感じました。それならば、やっぱり一緒に「笑って」生きていきたい。

行政書士として、遺言書作成やお亡くなりになったあとの手続きのお手伝いをしていますが、遺言書を作る方とはその方のこれまでのお話しをできるだけたくさん聞かせていただきたいし、大切なご家族を亡くされたご遺族の方から、亡くなった方はどういう方だったのか、できるだけたくさん、お話しを聞きたいと思っています。
相続関連のお仕事というのは、戸籍をたどってその人の人生を読み解いたり、他人の人生に踏み込む仕事です。他人の私が関わらせていただく以上、できるだけたくさんの時間をかけて、その方との時間を共有したいと思っています。
ご主人を亡くされた奥様のお話しは、得てして長いです(笑)。お子さんたちは「母の話は、適当に切り上げていいですからね」とおっしゃいますが、私は時間の許す限り、お話しをお聞きしています。メモを取ることをご了承いただけた場合は、メモを取りながらお聞きして、保管しています。
また、遺言書作成のご依頼があった場合は、遺言書を作ろうと思うに至るまでのお気持ち・・・何を一番大事にされて遺言を残そうと思ったのかをまずは知りたいと思います。そうしないと本当に愛のある遺言にはならないからです。『めんどくさい行政書士』だな、と思われているかもしれませんが、亡くなったあとにその方の想いを残す、最後の大切なお手紙です。それが法律的なことだけでなく、残された方の心も救うものになると信じています。

話は脱線しましたが、私の赤ちゃんが使命をもって私のお腹に宿ってくれて、私に教えてくれたことを抱きしめながら、これが私の使命だと思い、自分の人生を「笑って」過ごしたいと思っています。

だから、いつか私が死んでも、いつまでも泣いていないで、笑ってくださいね。

♪わたしのーお墓のーまーえでー、泣かないでくださいー♪

「彼女が最後に見たものは」まさきとしか 小学館文庫

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