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「HEii」とは、かつての遠野から沿岸部までを含んだ地域をさす「閉伊(へい)」と「平易…

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「HEii」とは、かつての遠野から沿岸部までを含んだ地域をさす「閉伊(へい)」と「平易(へいい)」を合わせた造語。「内陸から沿岸部までを含めた広い視野に立って、当たり前のことを大切にする」そんな地域づくりを目指して発行しています。

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  • 遠野オフキャンパス

  • HEiipress vol.5 敷地の力

  • HEii press vol.04 三田屋の歩き方!

  • HEii press vol.03 美味しい!メイドイン遠野

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#1-2 Living in National Treasures とは?

 根幹にある「Living in National Treasures」とは一体どのような考えなのか。発案者である造園家・田瀬理夫さんに話を伺いました。 あるべき姿にもどしていくという目標 造園家の田瀬理夫さんは、日本各地の街の景観や公共施設の庭などのデザインを手がけたことで知られる。造園家として仕事をするなかで、農業法人を立ち上げ、遠野市附馬牛町でクイーンズメドウ・カントリーハウス(Queen’s Meadow Country House 以下 QMCH)という場所を営ん

    • #1-1 三田屋の暮らし

      おかみさんに聞きました! 三田屋さんで50年にわたって商売を切盛りされてきた菊池洋子さんに、昔の町家での商いや暮らしの様子を伺いました。 ーもともと遠野市のご出身だったのですか?  私の生まれは陸前高田です。お見合いで結婚しまして、昭和33年の11月に三田屋に参りました。 ーご結婚当時のお店の様子を教えてください  当時は、17歳から勤めた番頭が一人。店員たちが10名。店員はみんな住み込みでした。店員が10人いたところに、11人目として私が来たようなものですから「私が

      • HEii press vol.01 「町家のくらし」

        2013 Spring  遠野で新しい活動がスタートしました。その名も「遠野オフキャンパス」。活動の第1弾は、ある一軒の町家調査。東京で活動する建築家や編集者、建築系の大学生とともに、遠野高校の学生が活動に参加した4日間を振り返ります。 vol.1 目次 ・三田屋の暮らし ・Living in National Treasuresとは? 町家調査から遠野の魅力を掘り起こす 遠野駅から降りて商店街を歩いていると、シャッターを下ろした店、人気のない通りが続きます。このような

        • ♯7-4 庭園調査

          遠野と水流 水路の思い出  遠野の町は、水の流れのなかに築かれたと言われるほど水流が豊富で、来内川にダムが築かれるまでは、しばしば洪水に悩まされてきました。一方、その水を利用して、街場には酒屋や糀屋、味噌屋、醤油屋が軒を連ねていました。いたるところで水が湧き、大きな水流に触れられる場所は、一日市町だけでも10ヵ所以上にのぼったとも。かつての水路を掘り起こすことで、年配の方は、小さい頃、近所の屋敷の池で筏を浮かべて遊んだり、遡上する魚を捕まえたりしたことの記憶が蘇り、生き生き

        • 固定された記事

        #1-2 Living in National Treasures とは?

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        • HEiipress vol.5 敷地の力
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        • HEii press vol.07 「馬とともに歩む 」
          6本

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          #7-5 そうだ! 路地(ロウジ)を直そう

          わざわざ自分たちでやる価値 今年の三田屋オフキャンパス建築改修チーム(中学生、高校生、大学生、大学院生、社会人の混成チーム!)は「町家の路地(ロウジ)」の修復に取り組みました。既存の路地は雨漏りがひどく、垂木や野地板、柱、基礎もガタガタでした。いつ本格的な改修が行われるかわからないため、それまでに崩壊しないよう簡易な改修を行いました。腐っている部材を解体する際には実測作業も並行しています。この記録は、路地の形成過程を明らかにする資料になると考えています。  というのは、三田

          #7-5 そうだ! 路地(ロウジ)を直そう

          #7-1 馬と歩く風景

           千葉家住宅は、暮らしと自然が有機的に結びついていた時代を体現する曲り家です。現在建物の改修工事が進められていますが、敷地内にとどまらず、集落一帯が千葉家住宅の立地にふさわしい環境となる地域像を模索しています。今回は、綾織観光の起点のひとつとなる「岩手二日町駅」から「千葉家住宅前」までの約2.8㎞の道程を馬とともに歩きました。水田地帯、上綾織の農村集落、山谷川、畑、民家、マンサード、それらを取り囲む森や山々などの景観を「歩くスピード」で体験し、馬のいる集落を具体的にイメージし

          #7-1 馬と歩く風景

          #7-3 通りの立面ズ

           三田屋オフキャンパス2018では高校生を中心に、市街地の町並みの記録を取りました。遠野の町家の特徴、屋根のカタチや仕上げを学んだうえでの活動です。かつて樹皮葺きの町家があったこと、大正から戦後の間に町家のヴァリエーションがみられたことなど、地域の方から伺うことができました。町そのものが、高校生にも専門家にも遠野を知る学びの場となっています。 通りを軸にした暮らしの物語 遠野オフキャンパスでは、三田屋での活動と並行して、鍋倉城下のフィールドワークを重ねています。いくつかの遠

          #7-3 通りの立面ズ

          HEii press vol.07 「馬とともに歩む 」

          2019 Spring  風土に根ざし、長く継承されながら、いままさに失われつつある暮らしや生業、環境、文化に対する深いリサーチをもとに遠野の未来を考え実践する「遠野オフキャンパス」。  今年で7年目を迎え、遠野駅前の街場を対象にした「三田屋オフキャンパス」、中山間地域の環境や馬とともにある暮らしを考える「馬とくらしオフキャンパス」、重要文化財千葉家住宅とその周辺地域の未来を考える「千葉家オフキャンパス」と徐々にそのフィールドを広げています。 vol.7 目次 ・馬と歩く

          HEii press vol.07 「馬とともに歩む 」

          #7-2 遠野の建築とルーツ

          南部曲り家の成立曲り家とは?  日本には、アイヌの「チセ」や白川郷の「合掌造り」など、さまざまなかたちの民家があります。遠野では「南部曲り家」が有名です。南部曲り家とはどのような建物でしょうか。ここで少し解説したいと思います。  「曲り家」とは、人が住む住居と馬屋が一緒になったL字型の民家のことを言います。似たようなかたちの民家は、北陸の「中門造り」など日本各地に見られますが、地域によって性格が異なります。青森県と岩手県にまたがる旧南部藩域のものは、馬を育てる都合から生まれま

          #7-2 遠野の建築とルーツ

          #8-1 「立ち寄り観光地」から「滞在型観光地」へ

          千葉家プロジェクトのこと 千葉家住宅は、自然と暮らしが有機的に結びついていた時代を象徴する建物です。重要文化財の対象は敷地内の建物群ですが、農家は本来、建物だけでなく、山林や田畑、川、牧草地など、それをとりまく環境やそこで営まれる生業が一体となって成り立っていました。  千葉家プロジェクトは、「重文千葉家の活用を考える会」が中心となり、千葉家住宅を含む周辺地域一帯を「本当の日本のふるさと」として再生し、末永く継承していくことを目指す活動です。集落に点在する曲り家やマンサード

          #8-1 「立ち寄り観光地」から「滞在型観光地」へ

          HEii press vol.08 「道具と山」

          2020 Spring  8年目の遠野オフキャンパスは、重要文化財千葉家住宅の立地する上綾織を中心に展開しました。現在修復・復原工事中の千葉家住宅を含む周辺地域の未来を考えながら活動する「千葉家プロジェクト」と連動して、建物や植生、環境、道具などをリサーチしながら、暮らしや生業などが織りなしてきた土地固有の風景の成り立ちを探っています。 vol.8 目次 ・「立ち寄り観光地」から「滞在型観光地」へ 千葉家プロジェクトのこと ・「山」の話   山さ行くときはナタ持って ・上

          HEii press vol.08 「道具と山」

          #8-5 オフキャンパス はじまりの場所

          「三田屋オフキャンパス」の足跡と未来  2012年2月、遠野をリサーチしていた造園家の田瀬理夫さんと大学生が、もうすぐ解体されるという町家「三田屋」に出会いました。その時「農家としての千葉家の曲り家に匹敵する、もしくは相当する三田屋の建物、敷地の構成、たたずまいは、遠野の町中においても群を抜いた存在だろう」と直感し、すぐに市長に手紙を書きました。そして、三田屋を残していく道を探ること、町中にさまざまな大学や研究機関がリサーチを行う(=オフキャンパス)集合体(=大学のようなもの

          #8-5 オフキャンパス はじまりの場所

          #8-3 上綾織から発信する新日本民俗学

          マンサードに見る生業の証 千葉家の保存修復工事が進む上綾織で、2016年にマンサードの調査を始めました。これまで、87棟の外観調査と7棟の実測調査を行っています。昭和30年代にこの地に根づいたとみられるマンサードには、たばこ・酪農・畜産・稲作など、各々の家の生業に応じた設えがあります。  2019年9月と11月、上綾織山口地区の一棟のマンサード小屋で、遠野市内の高校生や都市部の大学生たちと活動しました。主屋は、茅葺き屋根に金属板の屋根材を被せた曲り家です。千葉家に奉公してい

          #8-3 上綾織から発信する新日本民俗学

          #8-4 私たちは都市の創造性をどのように育むことができるか?

          遠野オフキャンパス特別レクチャー@三田屋 鷲尾和彦(博報堂生活総合研究所/「生活圏2050」プロジェクトリーダー)  「生活圏」とは、地域社会やコミュニティでともに生活する人々が協働し、地域の特色を活かしながら、それぞれの生活を営んでいる生活環境のこと。自然環境、文化資源、科学技術、産業など、地域固有の資源を活かし、「新しい価値」を生み出そうとする取り組みが世界各地で生まれている状況について、鷲尾和彦さんにレクチャーしていただきました! 写真:鷲尾和彦 その場所でしか手

          #8-4 私たちは都市の創造性をどのように育むことができるか?

          #8-2 「山」の話 山さ行くときはナタ持って

          「山」の話  上綾織では、猿ヶ石川支流の山谷川によって開析された谷地形に、集落と山、その山上にある野馬土手までが人々の生活と生業の舞台となり、地域景観に直結する文化的景観の一部を構成しています。農家の営みとワンセットに存在する山の中でも、特に緩勾配の斜面地は、かつて、ミズナラ、コナラ、トチノキ、サイカチなど落葉広葉樹の雑木林や馬の放牧地、採草地として生活や生業のために利用されていました。1960年代以降、これらの斜面地の多くは杉などの植林地に置き換わり、これまでの生活・生業と

          #8-2 「山」の話 山さ行くときはナタ持って