見出し画像

木曜日にはココアを

川沿いの桜並木のそばに佇む喫茶店「マーブル・カフェ」。そのカフェで出された一杯のココアから始まる、東京とシドニーをつなぐ12色のストーリー。
卵焼きを作る、ココアを頼む、ネイルを落とし忘れる……。小さな出来事がつながって、最後はひとりの命を救うー。
あなたの心も救われるやさしい物語。



この本をおすすめしたい人

・おうち時間に退屈さを抱えていて、気分転換したい方
・なんとなくすっきりしない気持ちの方
・まだ本は読み慣れてないけど、読書習慣を持ちたい方

おすすめの読み方

冬から春、気の滞りやすいこの季節の、おうち時間のおともに。


感想

さらっと読みやすい短編集。
(わたしは就寝前に、お布団にくるまりながら少しずつ読み進めて、3日ほどで読了しました)


ただ、この小説がただの短編集とちがうのは、ひとつひとつの物語の主人公たちの、それぞれの人生が交わっている、群像劇であるということ。

つまり、1話ごとに主人公は変わるのだけど、みんな同じ世界を生きていて、ある人の物語の一部が、次に主人公となる別のだれかの物語の一部と交わっていて、繋がっていくんですね。

それはバトンを渡しているというよりは、波紋のようにたくさんの輪が交差しながら繋がっている感覚。中には、いろいろな人の物語の一部にちょっとずつ、何度も登場する方もいたりします。


その交わりのなかで、だれかの言った何気ない一言や、その人にとってのちいさな失敗が、別の誰かの心の、奥深くを救っていたりするんです。


そして、その波はきっと、この物語の中だけに留まっていません。


そう。

読んでいるわたし達のところにも広がっているんです。


読みながら、だれかが口にした一言に、わたし達自身の人生が救われたり、あたたかく照らされたりする。

物語をひとつ読むごとにちいさく、心を明るくしてもらいながら、わたしも何度か、だれかのセリフをメモに書いて残しました。


人と直接繋がれる機会が減っている今も、わたし達はこの物語の世界と同じように、周りにいてくれる人たちの物語と、少しずつ交わりながら生きています。

自分が何気なく発した言葉や行動も、波紋のように広がっていて、直接は知らないだれかの物語に、心に、影響を与えているのかもしれません。


今の時代のおうち時間に、ぴったりな小説だなって思いました。

短編集ってこともそうですが、著者の青山さんの言葉選びや表現もとっても分かりやすく読みやすいので、本は読み慣れていないけどこれから読書週間を作っていきたい方の、最初の1冊としてもオススメです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?