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音楽の話をする時は大丈夫な時

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その人の好きな音楽を知ることは、その人の心の中に流れる音楽を知ることだ
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2019年8月の記事一覧

Gymnopédies / Erik Satie

私はこうやって誰も読まない文章を書いている。

また、自分しか読まない文章も記録している。

忘れたくない出来事、忘れたくない感情。
そういうものを書き留めてある。

生きた証、というのとも少し違う。

誰かに見せるものではない。

私が死んだら一緒になくなる。

浅井健一は、
「誰でも、神様にしか言えないことがある」と言っていた。

そうだ。

神様にしか言えないことは、口にしてはいけない。

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Africa / TOTO

ひとしきり夏が終わり涼しくなってきた頃。

同じ授業を取っていたグループで、帰りに晩御飯に行くことになった。

僕は「松任のキッチンユキに行きたい」と言った。

当時は好き嫌いが多かったので、変な店に連れていかれないよう先制攻撃を旨としていた。

確か遠くの店に何台もの車で行くのは無駄だろう、という話になったのだったか。僕は運転手を免除され、今ひとつ掴みどころのない、澄ました感じの女の子が運転する

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Stand by Me / Ben E. King

僕は高校で弓道部に入り、一人の男と出会った。

彼とは辛気臭い音楽の趣味や斜に構えたものの見方などが似ていて、すぐにつるむようになった。

土曜だったか日曜だったか、休日の部活の後、初めて彼の家に遊びに行くことになった。

電車で何駅も行き、駅から起伏の多い道を体感30分ほど歩いて、彼の家に着く。

部屋に入り一息つくと、彼はやおらビデオテープを取り出してきて再生し始める。

『スタンド・バイ・ミ

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ユーレイ / ウルフルズ

ベースのジョン・B・チョッパーこと黒田利博脱退後最初のフルアルバム『トロフィー』から。

お前はユーレイ
どこにいる
そばにいても見えない
お前はユーレイ
捕まえられない
だけどオレの一部

この曲は明らかにジョンBのことを歌っている。

友達というのはそういうもので、自分の守護霊のようなものなのである。

彼のクリエイティブさ、彼女の天真爛漫さ、彼の自由さ、彼女の理知、そういうものが全部自分の一

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Look Back Again / 矢井田瞳

大学3年の夏、友人に車で街まで送ってもらっていた。古い言葉で言えばアッシーである。そして、金沢では繁華街の香林坊・片町辺りのことを「街」という。豆知識だ。

車中。クールな友人には珍しく、人生の悩みみたいのを吐露してきた。

めんどくせえな、と思った。

僕は基本的に薄情である。

ああ、街が近づいてきた。
この辺でこの話の総括をしなくてはならない。

そこにカーラジオから流れてきたのがこの曲だっ

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