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坂本龍一「音楽図鑑」

1984年発売4枚目のアルバム。YMO散開後に発売されたアルバムで坂本ファンの間でも評判が高いアルバムのひとつ。これ以前のアルバムは具体的なコンセプトのもと楽曲が作られていたが、本作では全くの先入観なしで思いつく限りの音を記録して制作された。坂本曰く「羅針盤も海図もなしに海に乗り出して何が起こるかっていう冒険」。坂本のアルバムは難解な曲が多いがこのアルバムでは比較的聴きやすい曲も多く入門編にはいいかもしれない。
1992年に本アルバムに2曲足されて収録された「音楽図鑑完璧盤」(その前には「TIBETAN DANCE(VERSION)」のみを追加した「完全盤」も発売されていた)、2015年には未発表曲と別ヴァージョンをディスク2として収録付属した「音楽図鑑 ‐2015 Edition」が発売された。
今回は最終形態である2015年版を紹介していく。

収録曲

Disc1
TIBETAN DANCE
作曲 坂本龍一
坂本がチベットの少女のダンスをイメージして作られたフュージョン寄りで軽やかなクラップが特徴的なダンスナンバー。坂本の曲の中では比較的シンプルな曲の位置づけで親しみやすく、シンプルなメロディが繰り返される事もあってか1度聴いただけでも割と印象に残りやすい。個人的にやはりサビが一番好き。
このアルバムのイメージとして一番に出てくるのはやはりこの曲だろう。
大村憲司(ギター)、細野晴臣(ベース)、高橋幸宏(ドラム)が参加し、YMOメンバー+ライブのサポートメンバーによる演奏となる。特にベースは相変わらずの聴きごたえがある演奏である。ちなみに山下達郎によるボーカルヴァージョンも存在していたらしい。
2005年発売の「/05」にはピアノアレンジされたヴァージョンが収録されている。

ETUDE
作曲 坂本龍一、清水靖晃
こちらも軽やかな明るいメロディでジャズ要素が非常に強い曲。本来のクレジットでは坂本のみ作曲となっているが、イントロと2分28秒あたりの4ビート部分はサクソフォーン奏者の清水靖晃によるものらしい。この部分のドラムはドラマーの山木秀夫が叩いており、それ以外の部分は坂本が叩いている。

PARADISE LOST
作詞 坂本龍一、ピーター・バラカン
作曲 坂本龍一
ゆったりしたレゲエチックなリズムが特徴の曲。スティールパンやピアノの音、「ISLAND OF WOODS」を彷彿するようなシンセによる鳥の鳴き声等、南国の静かなビーチを彷彿するような常夏の理想的な癒しがあり、目を閉じてそっと聴きたくなるような曲である。
一応ボーカル曲で、聞き取りづらいが左の部分から小さくだがラジオから流れる音声のような感じで歌詞を語りっぽく?歌っている。
ヤン富田(スティールパン)、近藤等則(トランペット)、山下達郎(ギター)が参加している。

SELF PORTRAIT
作曲 坂本龍一
泣きメロのようなイントロから始まる、坂本の曲の中でも特に希望を感じとれるようなドラマチックかつ感動的な曲。
高橋幸宏(ドラム)と山下達郎(ギター)が参加している。ちなみに主旋律のシンセの音は山下達郎の声をサンプリングしたものらしい。
後に坂本が音楽を担当した映画「子猫物語」に使用され、サントラにも収録されている。そのせいか猫が走り回る映像が頭によぎる。
この曲を初めて聴いた時は何とも言えないワクワク感があったことを覚えており、個人的にこのアルバムの中で一番好きな曲。
1996年発売のシングル「08/21/1996」にはピアノ、ヴァイオリン、チェロの3編成によるセルフカバーがカップリングで収録されている。

旅の極北
作曲 坂本龍一
ドラムの音がメインで織りなす情熱的なシンセサウンドが特徴で「PARADISE LOST」とは対照的に冬国の寒そうな情景が思い浮かぶ曲。このドラムキックの音は80年代後半の坂本の曲ではよく起用されている印象。

M.A.Y. IN THE BACKYARD
作曲 坂本龍一
坂本曰く「珍しく描写音楽的タイトル」。M.A.Y.とは当時坂本の家にやってきてた野良猫の名前の頭文字を合わせたもので、Mはモドキ、Aはアシュラ、Yはヤナヤツ・・・なかなか個性的なネーミングセンスだw。
サウンドは猫が3匹で遊んでいるようなマリンバの音が可愛らしい曲だが、ちょいちょい不穏な感じの旋律が混じるテイストとなっている。
ちなみにM.A.Y.は「メイ」ではなく「エム・エー・ワイ」と読むらしい。
1996年発売のアルバム「1996」には3編成によるセルフカバーが収録されている。

羽の林で
作詞・作曲 坂本龍一
翻訳 ピーター・バラカン
坂本のボーカル曲で全英語詞。ゆったりしたテンポの曲で秋の夕暮れのススキが生えた林の情景が思い浮かぶ様な印象。
タイトルの羽は歌詞から察するに、鳥の羽ではなく昆虫の羽を指していると思われる。
山下達郎(ギター)とデイヴィッド・ヴァン・ティーゲム(パーカッション)が参加している。
元々はインスト曲だったがミディ移籍最初の盤でこのアルバムの売り上げを出す為と、少しでもポップにする為に後付けで追加された。

森の人
作詞 矢野顕子
作曲 坂本龍一
前曲に引き続き坂本によるボーカル曲。タイトルの森の人とはオランウータンの事。こちらもゆったりしたテンポの曲で、静かで平和な森の中をイメージしたかのような大人しめのサウンドでちょっとしたリラクゼーションチックな曲。割と雰囲気が好きな曲。
「羽の林で」と共に坂本のかなり個性的な歌唱が逆に雰囲気にマッチした感じではある。

A TRIBUTE TO N.J.P.
作曲 坂本龍一
N.J.P.とは現代美術家のナム・ジュン・パイクの事。坂本のピアノと中村哲によるサックスの2編成でこれまたジャズチックな曲。途中で登場する声はナム・ジュン・パイク本人の声をコラージュしたもの。
高級なレストランかカフェあたりで流れてそうなお洒落な感じが良い。

REPLICA
作曲 坂本龍一
使い捨てカメラのシャッターを押す音と巻き取り音のような音が全体的にフィーチャーされた不思議な味わいを持つ、次回作「エスペラント」にありそうな坂本らしい小難しい感じのサウンド(この曲はまだ優しい方ではあるが)。何かが頭の中をグルグル回るような所謂電子ドラッグ的な感覚がある。個人的に3分16秒あたりからの旋律が好き。

マ・メール・ロワ
作曲 坂本龍一
琵琶のような和音チックな音と子供の歌声をフィーチャーした曲。子供がメロディを歌っている部分にトイピアノが並走してメロディを弾いている部分がどこか可愛らしい。タイトルは「マザー・グース」のこと。
ひばり児童合唱団とデイヴィッド・ヴァン・ティーゲム(パーカッション)と近藤等則(トランペット)が参加している。

きみについて・・・・・・。
作詞 糸井重里
作曲 坂本龍一
「音楽図鑑完成盤」から収録された曲で元は「Life in Japan」というレコード盤にのみ収録されていた。曲の印象としては坂本流カーペンターズといったところか。
ちなみに元のタイトルは「きみについて」だが2015年ヴァージョンにはなぜか「・・・・・・・。」が追加された。後に2002年発売の坂本がCMやテレビ番組のテーマソングなどを集めた「CM/TV」と「WORKS I - CM」にも収録され、インスト版が「WORKS II - TV / Inst.」に収録されている。

夜のガスパール
作曲 坂本龍一
2015年ヴァージョンで改めて収録された曲で「きみについて」同様の経緯。フュージョン寄りの情熱的な曲。モーリス・ラヴェルが作曲した同名の組曲が存在するが関係は不明。

青ペンキの中の僕の涙
作曲 坂本龍一
こちらも2015年ヴァージョンで改めて収録された曲で同様の経緯。一昔のデパートの店内放送で流れてそうな曲で人によってはどこか懐かしい気分になるかも。

TIBETAN DANCE(VERSION)
作曲 坂本龍一
「完全盤」以降に収録された「TIBETAN DANCE」のリミックスヴァージョン。原曲の主旋律の音よりドラムやギターなどの音が目立つ。

Disc2(2015 Editionのみの付属)
M2 BILL
作曲 坂本龍一
ここからは未発表曲・ヴァージョン集となる。
ジャズ・フュージョンテイストの曲でタイトルはアメリカのジャズピアニスト、ビル・エヴァンスから取られたもの。途中から度々登場するコーラス部分は山下達郎によるもの。

M4 TOD
作曲 坂本龍一
ベースの音がひと際目立つポップな曲。サビにあたる旋律が好き。
タイトルはアメリカのミュージシャン、トッド・ラングレンから。

SELF PORTRAIT ‐ 04A FEATURING MINAKO YOSHIDA
作曲 坂本龍一
4曲目の未発表ヴァージョン。
原曲との違いはシンガーソングライターの吉田美奈子がコーラスとして参加している。サウンド事態はピアノ演奏が主体となっており、こちらのヴァージョンも非常に捨てがたい。

両眼微笑 ‐ 0011‐02
作曲 坂本龍一
ポップな曲。元々は坂本がラジオDJを務めていた番組「サウンドストリート」のテーマ曲。1991年にシングルCDとして発売された「BEHIND THE MASK +3」にカップリングで収録されている同名曲の別ヴァージョンとなっており、原曲にはない吉川忠英によるアコースティックギターの音が追加されており、曲の時間もこちらの方が長い。

M11 BRUC
作曲 坂本龍一
まさに80年代のテクノポップって感じのロマン派的な曲。木琴の音は清水靖晃によるもの。
タイトルはオーストリアの作曲家、ブルックナーから。

M16 UNTITLED
作曲 坂本龍一
ベースとキックの音がひたすら続くだけの曲。坂本によると、曲の骨組みとなる部分で曲というのはここから組みあがっていくというのを想像してほしい事と、一部のマニアックの人に面白がってくれたらという事で収録したとのこと。

旅の極北 ‐ 0016‐03
作曲 坂本龍一
5曲目の別ヴァージョン。主旋律の音が原曲と異なる。

M23 BALLAD
作曲 坂本龍一
フュージョンテイストの曲で、個人的にはあまり主張しない「TIBETAN DANCE」的な印象。

羽の林で ‐ 0013‐04A
作詞・作曲 坂本龍一
翻訳 ピーター・バラカン
7曲目の別ヴァージョンだが、大きな違いはボーカルがカットされているぐらいで、あとは細かな音のミックス違いといったところか。

マ・メール・ロワ ‐ 0014‐02‐MAY16
作曲 坂本龍一
11曲目の別ヴァージョンでこちらは子供の声がカットされているぐらいで大きな違いは見受けられない。

M31 TOKYO MELODY
作曲 坂本龍一
サックスと鉄琴・木琴の管楽器をフィーチャーしたガムランっぽい曲。1985年のフランスによるドキュメンタリー映像「Tokyo Melody」で本曲のレコーディング風景が一部映るだけだった曲のようで、今回ようやく日の目を浴びることになった。

M33 UNTITLED
作曲 坂本龍一
6曲目と同じ無題で、こちらは特にメロディがないシンセサイザーの音をひたすら鳴らし続けるだけの曲だが、寧ろ晩年のアルバムの曲に近い印象。

現在所有しているアーティストCD・音源(邦楽編)
https://note.com/odmssyw/n/n4d7ea2d38165

現在所有しているアーティストCD・音源(洋楽編)
https://note.com/odmssyw/n/n9e4b10ae1dce

現在所有しているアーティストCD・音源(その他)
https://note.com/odmssyw/n/n34964b507575

現在所有しているアーティスト DVD・Blu-ray
https://note.com/odmssyw/n/n47d6b0d7eb31

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