『アセッサー(評価)』

私は現在、介護保険行政を担当しているのですが、先日、仕事の中で「アセッサー評価」という言葉を知りました。
アセッサー及びアセッサー評価とは何かをまとめてみます。

アセッサーとは

一般の定義

アセッサー(assessor)は直訳すると「評価・査定を行う人」という意味である。
日本の人事領域においては、ヒューマンアセスメントの場面で対象者の観察及び評価・査定を行う人という意味で用いられることが多い。

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 人材育成・研修・マネジメント用語集

介護現場において

アセッサーとは、事業所・施設内において介護職員のキャリア・アップを推進・支援していく役割を担う人材をいいます。アセッサーは、介護職の管理的立場の人であり、被評価者である介護職員の「できる(実践的スキル)」の度合いを評価(アセスメント)するとともに、職場における被評価者のスキルアップのための具体的な方策を被評価者と一緒に検討を行い、スキルアップの支援(OJT=On the Job Training)を行う役割があります。

一般社団法人シルバーサービス振興会 介護プロフェッショナルキャリア段位制度

アセッサーは、一般的にはビジネス・人材育成用語として使われているようですが、介護の現場においては、内閣府が創設した介護プロフェッショナルキャリア段位制度に位置付けられている役職です。
平成24年度創設ですが、制度自体を知りませんでした。。。

キャリア段位制度

成長分野における新しい職業能力を評価する仕組みであり、企業や事務所ごとにバラバラでない共通のものさしをつくり、これに基づいて人材育成を目指しています。

一般社団法人シルバーサービス振興会 介護プロフェッショナルキャリア段位制度

平成24年度に内閣府が打ち出した実践キャリア・アップ戦略の一環で始まったもので、既存の研修が「わかる(知識)」の評価基準だったのに対し、
「できる(実践的スキル)」を評価していきます。介護ではレベル1~4の基準をつくり、レベル認定を行います。
介護職の離職率の高さが問題視されますが、評価の共通のものさしをつくることで、経験やスキル向上が処遇改善につながりやすいキャリアアップの道筋を構築し、市場における人材価値を高め、働き手の新規参入や人材育成が見込まれます。

アセッサーになるには

アセッサーは、キャリア段位を評価するために必要な存在です。
アセッサーになること自体が一つのキャリアとも言えそうですね。
では、アセッサーになるにはどうすればいいのでしょうか。

アセッサー講習

アセッサーになるには、一般社団法人シルバーサービス振興会が開催するアセッサー講習を受講する必要があります。
受講には実務経験や資格などの要件が5つあり、いずれかを満たす必要があります。
講習の内容は、指定テキストによる自主学習、eラーニング学習、トライアル評価で構成されており、事業所や自宅などで受講が可能です。多忙な介護職にとって、こういったハードルが低いのはいいですね。

開催時期や費用は?

例年、2期開催しているようです。令和3年度のは以下のとおり。
第1期【申込】8月6日~8月26日 【受講】8月下旬〜10月下旬
第2期【申込】10月5日~10月29日 【受講】11月下旬~2月下旬

費用は23,230円(税込)
自治体によっては補助金があるようです。
補助対象(事業所or個人)や補助金額などは当然自治体によってことなります。
事業所の所在する県や市町村に確認してみてください。

アセッサー評価の現状と私見

厚労省が47都道府県を対象に行った、課題対応力強化の取り組みに関する調査の中で、44県がキャリア段位制度を「知っている」と回答したが、実際に支援に結び付けて活用している自治体は限られているとのこと。

一方で、介護事業所向けにも同調査を行っており、その中で気になった結果が、8割以上の事業所で、経験年数を重ねた介護職員間に介護技術のばらつきがみられるという点です。私が実際に事業所とお話しする時にも「職員によってレベルに差がある」という声を聴くことがあります。

「トヨタ式カイゼン」の中で、マニュアル化により誰がやっても高いレベルで同じ品質を達成できるようにするという考え方・方法があります。
これに似た側面がキャリア段位制度・アセッサー評価にあると思いました。
アセッサー評価を取り入れることで、抑えるべきポイントや優先度が明確になり、質の確保が容易になり、人材教育も「人によって言うことが違う」という混乱を防げるのではないでしょうか。

介護は対人間の仕事のため、トヨタのような製造業よりも職員の資質やスキルが重要になってきます。
だからこそ、評価基準を設けることで、標準的な評価ができると同時に、個性の面の評価も見えてくるのではないかと考えました。
アセッサー評価が介護職のモチベーション向上、ひいては介護サービスの質の向上に繋がればと期待します。

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