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ご先祖カメラ

ご先祖さまカメラ


「あーあ、宿題がまだ終わらないなー」

「死んだら、ずっと寝てられるのかな?」


ヒカルくんはため息を吐きました。


偶然、ヒカルくんのおじいちゃんは

その言葉を聞かれてしまいました。


「なんて、酷いことを言うんじゃ・・」

「ヒカルに、生きてる事のありがたさをわからせるにはどうすればいいんじゃろ?」


おじいちゃんは考えました。


ーある日ー

「大発明したぞ!」


ヒカルくんのおじいちゃんは発明家だったのです。


「また、発明しちゃったの?」と

ヒカルくんとヒカルくんのママは

呆れた顔をします。


「もう、発明品を置き場所なんてありませんよ!」


「また、ガラクタを作って!」


とママが言いました。


ーおじいちゃんの発明シリーズー


『こんにゃくで出来たリモコン』


おじいちゃん「あれは大発明じゃったな」

「いつも使いたい時に失くなるリモコンだけれど冷蔵庫に置けば失くならない!」

ママ「結局、おでんに入れて食べたじゃない」

ヒカル「あのこんにゃく美味しかったな」


『トイレがいつでもできるオマル自転車』


おじいちゃん「どこでもトイレができる自転車じゃ!」

ママ「恥ずかしくて使えなかったわ」

ヒカル「デザインが鳥だったのがダサいよ」


『なんでも切れる包丁』


おじいちゃん「女性の力でもカボチャでもなんでも切れる包丁じゃ」

ママ「切れ過ぎて、まな板ごと切れたじゃない!」

ヒカル「危険すぎるから使えないね」


ヒカル「次は何を発明したの?」


おじいちゃん「それは・・」


『ご先祖さまカメラ』


ヒカルとママ「なにそれ?」


おじいちゃん「カラダの中の『ご先祖』を見る事ができるカメラじゃ!」


「また役に立たない物を作って!」

お母さんはどこかへ行ってしまいました。


ヒカル「どうやって使うの?」

おじいちゃん「このカメラでカラダを写すだけじゃ」


「じゃあ、撮るぞ」


ヒカルくんはポーズを決めました。


「ハイ、チーズ!!」


ブブッ


ヒカル(おならしちゃった・・)


おじいちゃん「写真が出来たぞ!!みてみよう!!」


わーい!


ヒカル「この丸いのなんだろ?」


ヒカルくんの透明なカラダの中に

たくさんの人たちの顔がたくさん写っている。


おじいちゃん「その一人一人がヒカルくんのご先祖さまじゃ」


「ご先祖さまは、君のカラダの中をみんなで散歩したり、挨拶したり、話したり、遊んだり、愛し合う事もできるんじゃ」


おじいちゃん「いつも君の中で君の事を見ている」


「そして、君の幸せを祈っているんだよ」


ヒカル「この二人は、なんでくっついて目がハートになっているの?」


おじいちゃん「その二人は夫婦じゃな『愛し合ってる』んじゃ」


「この二人がいて子供を作ったから君とワシが今いるんじゃ」



ヒカル「おじいちゃんにそっくりな人がいる!」


おじいちゃん「おじいちゃんのおじいちゃんじゃ」


「ワシと似て勉強が大好きじゃった」


ヒカル「ぼくは勉強が嫌いなのにね」



ヒカル「この人、面白い髪型してるね!」


おじいちゃん「それは、ちょんまげじゃな」

「日本の男の人は昔は『ちょんまげ』をしていたんじゃ」


ヒカル「頭が寒くないのかな」



ヒカル「この人はカブトを被っていて強そう!」


おじいちゃん「昔、家族と大切な人を守っていたのかもしれんな」


ヒカル「この人が守ってくれたから、ボク達がいるんだね!」



ヒカル「この人はボールを持ってるよ」


おじいちゃん「平安時代に日本人も『蹴鞠』というボールで遊んでいたんじゃ」


ヒカル「ボクはサッカーが好きだから、この人に似たのかもしれない」



ヒカル「わっ!この女の人は歯が真っ黒だ!」


おじいちゃん「昔の結婚した女性は歯を真っ黒にするのが流行ったりしたんじゃ」


ヒカル「虫歯だと思ったよ」


ヒカル「この人は毛むくじゃらだね」


おじいちゃん「原始時代の頃は暖房も冷房もない」

「いまと比べたら想像もつかないくらい不便じゃったんじゃよ」


ヒカル「いまは便利な世界で良かったよ」


ヒカル「この人・・おじさん?おばさん?」


おじいちゃん「失礼じゃな(ワシにも性別がわからんが・・)」


おじいちゃん「この人を虫眼鏡で覗いてごらん」


ヒカルくんは虫眼鏡でご先祖さまを覗いてみた。


ヒカル「わー!たくさんご先祖さまがいる!」


おじいちゃん「ご先祖さまのご先祖さまじゃ!」


「ご先祖さまにもご先祖さまがいて」


「そのまたご先祖さまの中にもご先祖さまがいて・・」


ヒカル「数えきれないね」



ヒカル「ここに誰かいるよ!」


ヒカルくんのお尻の辺りに『おばあちゃん』が写っている。


おじいちゃん「おお!この人がヒカルのおばあちゃんじゃ」


ヒカル「この人がおばあちゃん?」


おじいちゃん「そうか・・ヒカルが幼い時に死んでしまったから」


「おばあちゃんの顔を覚えていないんじゃな」


ヒカル「おばあちゃんってどんな人だったの?」


おじいちゃん「とても素敵な人だったよ」

「どんな発明をしても笑ってくれた・・」


「ああ・・おばあちゃんに、はやく会いたいな」



おじいちゃんはヒカルの顔をジッと見つめた。

いつもの笑っているおじいちゃんじゃなく真剣な顔をした。



おじいちゃん「いいかい?」


「簡単に『死にたい』と言ってはダメなんだよ」


「たくさんのご先祖さまがつないできた命」


「『命のバトン』は簡単に捨てはいけない」


おじいちゃん「君がここにいるのは『キセキ』なんだよ。大切にしなきゃいけないんだよ」



ーある日ー


おじいちゃんが死んだ


ボクは泣いた


いつも怒っていたお母さんも泣いた


親戚も泣いた


家族全員が集まって泣いた


「いま、おじいちゃんは何をしているんだろう・・」


おじいちゃんから貰った『ご先祖さまカメラの写真』を見てみると


見てみると・・



「おじいちゃん・・」


写真には笑顔のおじいちゃんと笑顔のおばあちゃんが抱きしめ合っていた。


おじいちゃん「やっと会えた」

おばあちゃん「ずっと一緒だね」







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