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富士山の冒険

2016年10月11日深夜、「富士山のぼりてぇ。」そう呟いた。


それから三ヵ月後2017年1月14日、友人・ロケットにコンタクトを取り、登山実現に向けて舵をとる。シーズンを探り、宿をとり、仲間を募り、スケジュールを組む。


かくして7月19日午後15時40分、僕とロケットとKちゃんの3人は富士山5合目を出発するのである。アンダーシャツ、山男のイメージからチェックシャツ、中学時代のウィンドブレーカーを着て、その上にマリンパーカー。ずっとマウンテンパーカーを持っていると勘違いしてたんだ。それから1万5千円の登山靴に、登山用の帽子、水筒。出で立ちは幼稚園のハイキング。まぁ舐めた格好。二人のようにレンタルすればよかったのだが、わたくし散財マン、登山靴をわざわざ買う。


高木のたたずむ霊験あらかたな登山道をロケットのナビゲートでぐいぐい進んでいくと、右手に見えますは富士山警備派出所。すでに息も上がっていたし、用も足したかった。ここで休憩。だが富士さん、ただではトイレをさせてはくれない。環境保護の為に要200円。僕のおしっこは200円の価値があんだ、と妙な説得。先へ進む。6合目付近になれば植物の位相も変わる。
登山行程としては、1日目は8合目の山小屋で一泊し、未明に朝日を見に頂上アタックをする予定である。


岩肌がまばらで殺風景な6合目を超えると、僕らはついに雲の上の人となる。しかし、かかし、天上人になってからきついもの。岩肌をすすめロックンローラーとばかりに頑張るものの、運動不足の体には応えるものがあった。甘いものが食べたいという甘えに応えてくれる山小屋が7合目に出現。散財マン、400円のあんぱんを購入。このうえなく普通なはずのあんぱんが尊い。帰ったらアンパンマン愛でよう。基本、山小屋での物価は地上とは別格に高い。だが散財マン、次の山小屋でも300円のチップスターを購入。その次でもカップヌードルを購入。


適宜休憩を取りながら、塩飴を舐め、水分を取るのだが、高度が上がるにつれ、高山病にやられていくのであった。喋ると息切れするし、頭痛や吐き気がした。散財マン、酸素ボンベを買おうとするも、山小屋のおじさんにたしなめられる。「深呼吸で十分。」深呼吸する。たしかに深呼吸で十分だった。ナイスおじさん。


とはいうものの、だ。完全に日没してしまい気温8度の中、頭痛や吐き気と一緒に岩肌を登るのは正直つらいものがあった。だが、道のりは無限ではない。8時20分、8合目海抜3400メートル富士山ホテルへ到着。極限状態だった。マリンパーカーのおかげで身体は悪寒が止まらないし、相変わらず吐き気は酷かった。それから、夕食のカレーライス、もはやうまいのか不味いのか判断しかねる。半分Kちゃんに食べてもらう。お主一体どこにそんな食欲が…。


未明の頂上アタックに備え9時過ぎには就寝。だが吐き気でとても眠れたものではなかった。2時半起床。この上ない快晴。夜空では三日月が、地上では河口湖がニンマリと笑っている。腹が痛くてトイレ。便秘。屁しかでない。僕のおならは200円。そう思い込む。


体調を悪くしたロケット、離脱。頂上のご来光はKちゃんと僕のヘッポココンビに委ねられた。暗闇の中を、進む。時刻は3時半。日の出まで1時間。気温2度。横風が容赦なく身体を痛めつける。貼るカイロ仕事しない。9合目を超えたあたりで、岩肌。ロッククライミングかよ…。息絶え絶え、息絶えそう。心が折れそう。朝日が近づく。「頂上の朝日も、6合目の朝日も変わらんよ(笑」と道行くおじさん。心骨折。おじさんそれを言っちゃぁ終しめぇよ。ヘッポココンビ、それでも頑張る。そして、登頂!さらにご来光!
ちくしょう、、、綺麗だ。


 こんなしんどい思いしたのに、何度も心折れて下山しかけたのに、それでもお天道さんは闇の静寂(しじま)を焼いていく。僕らの廃れた心を焼いていく。朝食にぴったりでしょ。諦めかけた心のムニエル、達成感風。ミルクには雲海も添えて。うまくないなんて文句は言えない。ちくしょう、、、おいしいんだ。
 21年来の付き合いであるKちゃんと昔話を岩肌に咲かせながら下山。5合目にて知り合って17年近くになるロケットと合流。月日が全てでないが、それが積み重なったものは相当な輝きを放つことも確か。すぐ後ろで富士さんが言っている。頑張った。頑張ったよ俺達。万歳!
 24歳一つ目の冒険はとりあえず終わり。

おまけ

△あの輪の中に皿が入れば、なにか御縁がありますらしく…それ!!

△はい、明後日の方向へ

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