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2018/7/21の日記~神様メール、ゴリラと妊娠、25歳の抱負~

なたが知っているのなら話も早いのだけれど…。ブリュッセルには神様が実在する。家出をした息子を除いた、妻・女神と娘エアとの3人暮らし。クズで怠惰で暴力的なこの神様、創造した世界を旧式PCで操り、引っ掻き回し退屈しのぎをしている。そんなDVクズファーザーに嫌気がさしたエア、反抗的な衝動そのままに人類に「余命を知らせるメール」を送る。神様の暇つぶしのためだけの世界を大混乱に陥れる。そして兄キリストに倣って奇跡を起こす6人の使徒を新たに探しに旅に出る。父である神はエアを追って人間界に降り立つ…。これは、フランス・ベルギー映画「Le Tout Nouveau Testament/神様メール」のあらすじ。

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 それじゃあ皆さん、世の中の理不尽さを思い浮かべてみよう。
 「風呂に浸かった瞬間に電話が鳴る」、「食パンを落とすと必ずジャムを塗った方が下になる」、「隣のレジの方が必ず早く進む」…。

アスファルトがアイスクリームのように溶けてしまう暑さなのに、サウナのようなスーツは脱げない。

外の車の走行音は深夜1時に僕らを眠らせてくれない上に、深夜4時の外は絶望的に明るい。

あなたは、昨夜見た気持ちのいい夢をちっとも覚えていないし、昼に見た気分の悪い殺人ニュースは夢に覚えるほどに鮮明だ。

アパートの管理会社は故意に重複させたに等しい電気代を肩代わりしてくれないし、奨学金の返済額はあまりに巨額で手に負えるのか不安で仕方がない。

あなたの努力は決して実らないし、そのそれなりの努力も「努力」と絶対に評価されない。

好きなアニメの実写化は壁を殴りたくなるほどに出来が悪いし、テレビはため息をつくくらいにつまらない。

何度諭したところで他人は万に1つも理解してくれないし、時間が経つほど自分自身でさえ分からなくなる。

朝のワイドショーの占いは当てにならないし、それにすがるような自分もきっと誰も当てにしない。

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 あまりに世の中は理不尽すぎると思う。ジャコ・ヴァン・ドルマル監督が擬人化(神様や運命に対してこの表現もどうかと思うが)したように、神様や運命めいたものは時に暴力的なほどに思える。物理的にも精神的にも。正直に言っちまえば全て投げ出して、逃げ出してしまいたいほどだ。だけど僕も25歳になってしまったし、社会のシステムに組み込まれている気がするし、見方によっては守られている。ぬるい風呂に浸かるような、少しだけ足りない親切には何も文句は言えない。風呂の温度をあと3度上げる為の900kcalは「努力」でなんとかしろ、甘えてんじゃあないよと、誰かが「無意識に」見下してくる。オーケー。お前も何もわかっていない、とロックでパンクに思わざるを得ない。

 神様メール。この映画が何を伝えたいか、というと「不自由からの解放」だ。神様だけが握っていた運命は旧式PCを通して僕らの手に委ねられている。「今」死なないことが分かっているから青年は憶することもなく歩道橋から飛び降りる。それは1つのエンターテイメントと化す。ゴリラと結婚できるし、男だって望めば妊娠できる。残り64日の余命だからなんだってんだ、って好きな女の子と逃避行もできる。最後にはカラフルでポップな花が咲く。まぁ映画を見てくれ。

 だからじゃないが皆さん、明日訪れるはずのカラフルでポップな未来を想像して、今日のところはひとまずもう寝ようぜ。

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 ふと入ったコンビニの冷房は丁度良くて、掻いた汗をひんやりと冷ましてくれる。

愉快で痛快な会話が深夜1時になってもまだ僕らを眠らせてくれない。だけど朝の目覚めは笑ってしまうほどに気持ちがいい。

あなたは、子供のころ描いた夢をずっと覚えていられるし、朝に見た誰かの幸せなツイートは人に教えたくなるほどに可憐だ。

パレードの色鮮やかな照明は、相応の電気代の上に光り輝いているのだと理解しても、大丈夫、そんなことでキミと彼のせっかくの最高のムードが崩れてしまうことは、絶対にない。

あなたがやってきたことは決して無くならないし、その「それなりの努力」を自分自身の力で肯定することが出来る。

好きなミュージシャンの新しいナンバーは、枕を思わず抱きしめたいくらいに好きになれるし、親戚の幼い子どもや愛犬の何気ない笑顔は、ため息をついてしまうほどに尊い。

何度同じ話をしても友達は笑ってくれるし、時間が経てば経つほど「誰かを笑顔にした事実」が顔のニヤニヤを抑えるのを難しくさせる。

朝のワイドショーで占いはたぶんいい結果のはずだし、それを希望のレファレンスにしてしまうくらい、あなたはきっと浮足立っていくんだ。

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P.S. 25歳を迎えて、友人に訊かれ、答えた抱負「地に足つけても、浮ついた気持ちは忘れまい」。一体どう具現化するのでしょうね。小説(のようなもの)を書いて、仲間と相変わらず歌っていきつつ。社会人への一歩を進み、研究に辟易もしつつ。

☆☆☆
P.S.のP.S

26歳でも相変わらずだよ、とだけ言っておこう。

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