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尾田わらば
2021年3月29日 22:43
今でも時々、あの頃を思い出す。順調に思われた2015年は徐々に悪化の一途をたどり、年を跨ぎ、春を迎える頃最悪を迎えていた。どうして眠れないのかわからないくらい眠れない日があった。みな寝静まっている。誰もこんな時間に連絡を寄越してくれないから、もちろんスマホも揺れるはずもない。時折、大きなトラックがアパートの前の道路を、息切れした老犬みたいに走り去っていくときだけ静かにベッドが振動した。深夜
2021年3月25日 23:47
先輩なら全然いいよ。と、ファミレスで長い間手を繋いだことがある。どういう経緯で手を繋ぐことになったのかはちょっと思い出せない。向かい合って座る若い男女が手を握るその姿は、はたから見ても、恋人同士のふれあいというよりはむしろ拮抗した腕相撲の仕合みたいに見えたかもしれない。夜の7時を過ぎたくらい。コートを着なくても夜道を歩けるくらいの気温。国道沿いで、車の出入りの難しいところに立地するファミレスだ