訪れてファンになったDHC酒造
休暇をいただいて日本酒を飲むため新潟まで行ってきた。滞在中はいろんなお酒をいただいた中、振り返ってみてDHC酒造さんが最高だったので書き記す。
DHCと言うと「♪ぜろいちに~ぜろ さんさんさんの~」でお馴染み(?)のコスメや健康食品を連想する。たまたま同じ名前…ではなく、まさにアノDHC傘下だった。
大手だから量産品かと思いきや、見学してみると小さな造り酒屋だった。100年の歴史を持つ小黒酒造を、2014年にDHCが買収して今に至るらしい。もともと「大学翻訳センター」から事業展開したことを思うと、日本酒くらいは当たり前かもしれない。
買収時のファンの心境は計り知れないけれど、少なくとも私には「良いシナジー生み出している」と感じられた。大手資本でも規模を求めず丁寧に酒造りをしていて、それでいて小さな酒蔵では出来ないような新しい取り組みや、ブランディングに取り組めている。
特に印象的なのは女子トイレだった。一部屋をパウダールームにあてて、DHC製品を完備している。ここで写真とってるおじさんいたら事件モノだけど、この日は他のお客さんおらんかったんや。
有料試飲時のアテがDHCの健康食品というのも面白い。逆に、通販サイトで健康食品を買う時に、ついでに日本酒を買うことだって出来るとか。
本題の日本酒に入る。我々は500円で飲み比べられる有料試飲を選んだ。甘口フルーティな「嘉山」、料理と合わせたくなる辛口淡麗「悠天」、絶妙なバランス「越の梅里」の3種類。振れ幅ありながらそれぞれ美味しい中で、1983年産まれの私は同い年の「越の梅里」に惹かれた。
田舎に帰郷したような落ち着いた縁側のお部屋で、お姉さんの説明を受けながらいただく。米所の威信をかけて山田錦を打倒すべく15年かけて開発されたお米の話とか。UVカットの透明グラスで品質も見た目も妥協しないとか。そんなお話だけで3杯はイケる。
精米歩合の違いを比べたりしていると、気付けば最初の有料試飲をはるかに超える量をいただいてしまった。
ただ「たくさん飲ませてもらった」と言うだけでなく、最高の状態で飲ませていただいたのが尊い。例えば、ステテコ親父が飲んでいそうな「朝日晴」でも、温度計さしながら丁寧に湯煎してぬる燗つくり、木をくり抜いた酒器に注いでいただくと、感動レベルに旨い。
「亀口直採り 嘉山」の微発砲を真鍮のおちょこででいただくと、見た目にも口当たりもうまい。同じ樽でも採り方によって味も発泡も違うのは、飲み比べて面白かった。
これまで自分の無頓着により、うまいお酒が持つ本来の魅力をフルパワーで味わえていなかったんじゃないか?と心配になるくらい素晴らしい体験だった。それと同時に、一期一会に最高の状態で提供するという茶道のようなことを、接客でもやってのける心意気にうたれた。
これだけのおもてなしをいただいて採算がとれるのか心配になる。いや、ファンとして継続的に購入したり、周囲に広めたりという「ファンベース」を目指しているのだろうか。いずれにせよ、私はファンとして応援したい気持ちになりこの文章を書いている。
ちなみに、〆にいただいたクラフトビール(ちゃんと買った)も旨かった。ぜひ、DHCの日本酒を飲んでほしいし、新潟に訪れる誰かの行き先の候補に挙がればいいなと思う。