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伊勢原|東學坊|創業四百年の伝統と歴史が静かに息づく旅館


こんにちは。CONOMACHI STORIES編集部です。

定期的に小田急沿線の「この街」スポットを紹介していくレポート。

今回は伊勢原駅の伝統ある宿坊「東學坊」さんにお邪魔して、代表の相原様から宿を継いだ経緯や想いについてお伺いいたしました。

大山詣りを400年以上手助けする「東學坊」の若きリーダーの想い

▷伝統を継ぐということ

東學坊: 伊勢原駅からバスで30分の宿坊。創業400年を迎え、昔から大山詣りの参拝者たちの宿として代々利用されてきた。大山豆腐をつかったお食事と荘厳な自然を感じる露天風呂が人気。
住所:神奈川県伊勢原市大山437

小田急線伊勢原駅からバスで30分。
あたご滝バス停で下車し、坂道を上ります。
目の前には青空に大山が高くそびえたっています。

右手に大きな提灯を掲げている、どっしりとした木造の建物が目に入ってきました。
一見すると神社のようにも見えるこの建物は、伊勢原市大山で創業400年を迎える「東學坊」さんです。
厳かな雰囲気の門を前にすると、自然と身も心も引き締まります。

今回は東學坊の代表、相原理人(あいはらまさと)さんにお話を伺いました。

(編集部)
東學坊さんは創業400年を迎える宿坊と伺いました。相原様は何代目になられるのでしょうか?

(相原様)
私で19代目になりますね。ここには古くから続く宿坊がたくさんあります。

私の同級生には30代目なんて人もいます。

大山の宿坊には必ず先導師という存在がいます。先導師は参詣者を大山阿夫利神社まで導く神職のことで、参詣の勧誘や宿の提供、寺社への道案内などを主な仕事としています。

先導師だった先代が突然倒れてしまい、その仕事を続けることができなくなってしまったため、15年前に急遽、私が先導師を引き継ぐことになりました。

本来なら、先代から手ほどきを受けながら心構えや所作を身に着けていくのですが、それができない。

当初はとにかくやるしかないと、見よう見まねで任を務めていました。

ただ、すぐに先代と同じようにできるはずもなく、ある講元さん※にこっぴどく怒られたことも。

(相原様)
今から思えば反骨精神だったのだと思うのですが、それをバネに先輩の先導師さんや、女将などから詳しく手ほどきを受けました。

おかげさまで今ではその講元さんにも先導師として認めてもらえるようになり、今もその講元さんにはご利用をいただいています。

本気になって怒ってくれた講元さんにはとても感謝しています。

※講元・・・組をつくって神仏へ詣でる講中の主催者のこと。

▷東學坊の魅力

母屋から橋を渡ったところにある露天風呂では自然を満喫しながら疲れを癒せる。
天候・寒暖により母屋の内風呂も利用可能。

(編集部)
先導師としてのスタートは大変だったんですね。どういった方が東學坊を利用されているのでしょうか?

(相原様)
おかげさまで大山詣りで利用いただいているお客様には引き続き、ご利用いただいています。

私が引き継ぐ前からご利用いただいている講の方々が多いですね。

コロナの頃から登山ブームが始まりましたが、大山もその影響を受けています。

大山の頂上まではケーブルカーを使って4時間ほど、全て徒歩だと6時間ほどで、午前中に登り、下山後に昼食をとる方が増えています。

そこで、昼食をご注文頂いたらお風呂を無料で利用いただけるプランを用意したところ、多くの方にご利用いただいています。

実は大山豆腐を世に知らしめたうちの一人が私の父だったこともあり、食事にはかなりこだわって作っています。
私の兄が大山豆腐を製造しているので、毎日、新鮮な豆腐をご用意して心を込めてお料理を作っています。

(相原様)
以前は海外の方の利用も多かったので、コロナが落ち着けばまた海外の方が増えていくのではないかと考えています。
海外の方は日本の文化、特に神事に興味を持つ方もいらっしゃいます。
日本の歴史や文化は世界で見ても洗練されたものだと改めて感じますね。

▷プレッシャーと決意

(編集部)
400年という歴史ある宿坊、先導師を引き継ぐプレッシャーは大きいと思うのですが、いかがでしょうか?

(相原様)
おっしゃる通り、400年続く宿坊を継続させていくプレッシャーは大きいです。

特に、コロナが蔓延した時に世の中が大きな不安に包まれましたが、私たちも大きな影響を受け、これからどうなるのだろうと夜も寝られない日が続きました。

そんな時に、私が尊敬する先導師の方が朝拝をやられていることを伺いました。

毎朝、祝詞を捧げることで自分はもちろん、ご利用者の方々の不安を払拭できると感じ、ご希望する方に朝拝をスタートしました。

(相原様)
朝拝された方からは「祝詞をいただいて心が軽くなった」「気持ちがリセットできた」といった言葉をいただいています。

自分の不安を払しょくしたいという思いから始めたことが、利用者の方のためにもなれたことは嬉しいことですね。

400年という伝統は新しいことに挑戦してきた積み重ねだと思っています。

私自身も新しいことに挑戦し続けて、伝統を作っていくつもりです。

(編集部)
伝統に甘んじることなく、進取の精神をお持ちで素晴らしいですね。

大山・伊勢原に住んでいる方はどんな方が多いのでしょうか?

(相原様)
歴史ある街ですので、穏やかな、優しい人が多い印象です。

ただ、ずっと伝統を守っているだけではいけない、と問題意識を持つ人も増えきていて、地域おこしの会合が行われるようになりました。

私も様々な会に参加し、役員などを務めることも多くなってきました。

大山は日本遺産に認定されていますが、伝統を守りつつ、時代に合わせた新しい取り組みを行って、次の100年を作っていきたいですね。

相原様、ありがとうございました!

東學坊の伝統を受け継ぎつつ、次の100年を作っていく。素晴らしいお話をお伺いできました。

今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。