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#2 60歳になる年の「ねんきん定期便」が届く。

いよいよ60歳になる年の「ねんきん定期便」を受け取る。
年金は原則、65歳からの支払いとされているが、60歳を過ぎれば70歳までの間でいつからでも受給開始は可能であるから、自分の年金スケジュールをこの機会に一度、しっかりと抑えておく必要があるなあと思った。

と言っても、長年会社勤めをして厚生年金をしっかり納めてきた身ではないので、年金額はとても少ない。
だから年金計算というのは、あんまり楽しい作業ではないんだよね。
それでも60歳からの人生が先立つものがなければままならなくなるので、自分の年金事情はつかんでおかないとならない。
仕方がない、やってみよう。

60歳になる年の「ねんきん定期便」ということで、これまでの定期便とは様式が異なるのかな?と思って開けてみると、最初の項に「年金の受給開始は60~70歳まで選べるよ。でも年金受給を遅らせれば金額が増加するよ」「70歳まで受給を待てばこーんなに増えるよ(最大42%)。だから年金受給は70歳からにしましょうね!」というような内容のアピールが目に飛び込んでくる。
ご丁寧に視覚に訴えるグラフまで表示されている。
いやいや、年金受給を70歳まで待てるわけ、ないではないか!

年金を60歳から受け取る場合は「繰り上げ支給」となり、支給額が減額される。
60歳で30%減(以降、減額率は1か月ごと変更されていき)61歳ジャストで24%減、62歳で18%減、63歳で12%減、64歳で6.0%減となり、65歳で100%の支給率となるのだ。
65歳を過ぎてから受け取る場合は「繰り下げ支給」となり、今度は逆に支給率が増加していき、66歳で8.4%増、67歳で16.8%増、68歳で25.2%増、69歳で33.6%増、そして70歳で42%増となる。
一度受給が開始されたら「やっぱもっと先にしまーす」という変更はきかないため、いつから受給するかを慎重に検討しなければならない。

もともと受給額が少ない私はこれ以上減額されるては困るし、本当は今すぐにでも受け取りたいくらいだから65歳以降も考えられない。
従って、65歳からの受給。とすんなり答えは出るのだが、ちょっと不安材料も多い昨今の情勢だ。それは、
・年金受給開始年齢が75歳まで繰り下げ可能になりそう
・国家公務員の定年が65歳になりそう
・企業の雇用義務が70歳になりそう
という法律改正(案)。

定年を70歳にするから、年金の基本支給(100%)も70歳ね、と国はしたいのであろう。

年金受給可能時期が75歳まで繰り下げられても、受給開始が可能な年齢は60歳のままとされてはいるが、受給開始時期が60~75歳の15年間設定というのは、さすがにいささか長すぎだと思う。
しかるに、そのうち、受給開始時期が65~75歳となるのは明らかではないだろうか。
もしも自分が65歳に到達する前に、例えば「基本支給は68歳からになりますよ~」なんて法律が改正されたら、ああ、後悔先に立たずである。
「もっと早く受給しておけばよかったぁ」と悔やむ未来はイヤだし、だからと言って100%の支給率も死守したい。
うーん、悩むなあ。

悩むと言えば、私には国民年金のブランク期間もある。
基礎年金(国民年金)は20~60歳までちゃんと加入していれば480か月であるが、私は20代の10か月分+転職の合間の7か月=計17か月分が足りないのだ。
この17か月分は、60~64歳までの間に国民年金に任意加入すれば埋められる。

そこで、そうしたほうがいいかどうかを判断するために、「ねんきん定期便」に書かれていた問い合わせ先にちょっと電話を入れてみた。

電話口の女性はとても気さくな感じで、「では、計算してみましょうか?」と言ってくださるから「はい、お願いします!」と私。



「お客様の場合は(「お客様」と言われたかどうは定かでない。それくらい親切な雰囲気で)17ヶ月分を支払いますと、65歳から月額1,625円上乗せされます(実は納付全免期間もあるためこの金額なのだ)。但し、そのために今から支払う保険料は合計281,180円(月16,540円×17か月)になりますから・・・微妙なとこですね。」
微妙というのは、80歳まで生きなければ任意加入した分の元が取れないという計算になること。確かに微妙である。

住宅ローンが終了したときのあの解放感と同様、「支払いが終わり、支給が始まる」というのは長年のあこがれでして。
フリーランスになってからは、不安定な収入の中で、住宅ローンと毎月の国民年金および個人年金(後述)の支払いは重かった。
だから月々2000円にも満たない増加額のために、ようやく終わった年金の支払いを、また60歳から行うというのは正直いえばイヤなのだ。

国民年金の任意加入窓口を一応聞き(役所の国民年金課)、65歳の支給でよければ今後の手続きはどうなるかを確認すると、
「(私の場合)61歳になる3ヶ月前に特別支給の老齢厚生年金の通知が届きます。そして65歳になる1ヶ月前に老齢基礎年金の通知が届きます。通知が届きましたらそれぞれ手続きを行ってくださいね。」
「手続きを行ってくださいね」の言葉の中に「大事な年金ですからね」というニュアンスが含まれているように聞こえて温かい気持ちになった。
電話してよかったな。

さて、年金は3階建て構造とされているが、私の年金も一応は3階建てでして、こんな感じ。
1階:“満額に達しない”国民年金(約25年加入)+厚生年金の基礎年金(約13年加入)=約38年加入
2階:“ほんのわずかな”厚生年金(約13年加入)
3階:“雀の涙の”厚生年金基金(企業年金・3年間加入)+民間の個人年金(年金払積立損害保険)
いろいろ組み合わさっているようには見えるが、2階と3階が超軽い平屋も同然の3階建てである。

2階部分はまだ給料の安い若い頃の厚生年金なので、“ほんのわずか”なのね。
それでも、厚生年金があるだけましだと思ったのは、生年月日による経過措置で、私の場合は61歳から受給できること。
ありがたい。

3階部分の厚生年金基金とは、21歳の時に初めて就職した中小企業が加入していた基金。
わずか3年間なので“雀の涙”なのだ。
この厚生年金基金への問い合わせについてもちょっと触れておこう。

ここに勤めていたのはたった3年間。
しかも退職したのが今から36年も前のこと。
退職するときに受け取った保険証書と通知はがきに「60歳になった時に手続してください」と書かれていたので、ずっと大切に保管してきた。(はがきは既に紙焼けして赤茶けている)
でも36年も経ってるからこの年金基金が今も生きているかわからない。不安になり、ネット検索をしてみた。
案の定、この基金は解散している。そういうご時世だよね。

解散した場合は「企業年金連合会」が窓口になるとあり、ひと安心したのもつかの間、36年前に受け取った通知はがきの住所から私は3回も移転していることに気づいた。
今の私の住所を連合会は知っているのだろうか?とまたぞろ不安になる。

早速、住所変更の手続きのページを確認し、「住所変更申請書」をダウンロードして記入し、3月下旬に郵送してみた。
1ヶ月後に返事が来たのだが、「現在登録されている内容に変更がありませんでしたのでご報告します」と書かれている。
厚生年金と企業年金連合会が連携しているということなのかな?でもそれならなぜ住所変更の申請というのがあるのかな?
でもまあ、61歳(私の場合)到達月の初旬に「企業年金連合会老齢年金裁定請求書」が送付されますとあったので、安心することにしよう。

落ち着いてみると、雀の涙ほどの支給額について必死に確認しまくる自分がなんだか、情けないやら、いじましいやらで苦笑するわ。
当時働いていたこの会社は今はもう存在しないが、厚生年金基金に加入してくださったことにお礼が言いたい。
そういえば当時、この通知はがきを父に見せたとき「へぇ~、中小企業なのにちゃんとした会社だなあ」と父がつぶやいたことを思い出す。

3階部分のもう一つである民間の個人年金とは、60~64歳の空白期間を埋める商品として売り出されたもので、親せきの勧めで37歳の時に加入した。
年に1回の支給が5回あるタイプで、この個人年金の年額が65歳から支給される私の基礎年金の年額とちょうど同じくらいなため、65歳になった時にガクッと年金額が下がらないようにするためにも、公的年金受給の開始を65歳にしたいんだよなあ。
一方で、年金の基本支給年齢が65歳→70歳になりそうなだけでなく、新型コロナウイルスの影響で国内外の経済活動が停滞し、大恐慌が襲ってきてもおかしくない情勢となりそうな今日この頃では、年金はやはり今のうちに受給したほうがいいのか?

ああ、こうやって私の悩みは堂々巡りしていく。

とにかく、年金だけでは暮らしていけない。
家賃はないけど、マンションの管理費も固定資産税もある。
水道光熱費、通信費、食費など毎月最低限の固定費もそれなりにかかる。
預貯金次第ではあるが、病気、介護、その他もろもろのアクシデントがこれから起こるであろうから、切り崩すわけにもいかない。

稼がねばならない。

60歳からの人生において、最も大切なものは「お金と健康」とは実は思っていないのだが(それについてはまた後日書こう)、収入があまりにも不安であると「自分が思ったことや考えたことを実行に移すことに重点をおいた暮らし方がしたい!」(前回「還暦を迎えた。自分をルポするエッセイを始めようと思う。」ご参照)なんて生活もできないしなあ。

60歳を過ぎればいつ死んでもおかしくないと思うのであれば、お金のことをちまちまと悩むことすら、どこか楽しめる生活を送るしかないね。


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