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異世界へ


堤防の下に転がり落ちて、すぐに何者かに袋のようなものを顔に被せられたと思ったらVRをつけられたような感じで、映し出される映像はこんなのでした。

堤防の上を親と兄弟が飛び跳ねながらこいつがやっと死んだと喜んでいるのです。まさにその光景は狂気でした。

そしてゲームのリザルト画面(ミッションの最後に成績が出るアレ)が出てきて【 RANK B 】

僕はゆっくり起き上がりました。

多分その時は真顔でした。ゆっくり体を起こして四つん這いになった瞬間に

目の前で「アアアアアアアアアアアァァァァァ!!!!!」と自分の顔が回転しながら叫ぶのです。

それをボーッと何が起きているのかわからないといった感覚で、眺めてる自分もある不思議な感覚です。

その叫んだ僕はずっとずっと止まることなく怒鳴り散らしています。夜中の堤防といえど誰もこなかったのが奇跡です。

「だから言っただろう!!簡単には死ねないって!!なんでお前はちゃんとしないんだ!!!いつもいつも誰かのせいにして楽ばっかしやがって!!!いつまで期待なんかしてる!!!誰も助けにも来ないのに馬鹿みたいにいつまでも!!!この世には夢も!!希望も!!何もなかったんだよ!!!死んで!!お願い死んで!!もういいから!!わかったから……わかったから……死んで……死んで!!!!」

倒れている僕にそう叫んで怒る僕がいます。

気づくと途方にくれる感じで堤防の下に僕はいます。

そして「早く死ななきゃ大変なことになる」と人生で一番切迫して焦っていました。

もう一度堤防の上に上がります。

あれ? さっき自分を突き落とした人は?

と辺りを見回すと声が聞こえてきます。

「お前今何したかわかっとる?これさ、一発で死ななきゃ何回もやらなきゃいけないんだよ?教えてやろうか。ちょっと見せてやるわ。お前の生まれ変わる前、こうやって死にぞこなったやつがどうなったか」

僕は見ました。自分にそっくりだけど少し違う人が何回も何回も堤防から落ちて道路の車に跳ねられて、また道路に出ては跳ねられて、死んだらまたそれを繰り返しています。そんなもんじゃ死ねなくなってきたら橋の上から剣のような木に向かって真っ逆さまに落ちて……

その声は僕に言います。

「お前はとんでも無いことをしたんだぞ!!何度も繰り返すほどにどんどん死ねなくなるんだ!!本当に死ねるまで何回自殺したと思ってる!!一回死に損なうにつれて100回死ななきゃいけないんだぞ!!先延ばしにするほど痛いのに死ねないと苦しむ時間が増える!!!」

それを聞いて僕はさらに「早く死ななきゃ一刻も早く死ななきゃ」と思いました。

道路に夜間のトラックがチラホロと走っています。

次来たら。次来たら。と考えていました。

その時におかしなことに気づきます。

信号がついていません。

近くにコンビニがあるのになぜか看板がなくなっているのです。

確かにうちの近くでこの川で変わりないのに、いろいろな違和感があります。

そしてトラックが来ました。 早く死のう。 その一心でした。

トラックが近づいてきて、すんでのところで

「いや、なんかおかしくない?!」と言って立ち止まりました。

ギリギリでトラックは僕に気づいたようで、少し僕をかわして走り抜けました。

普通なら降りてきてブチ切れられてもおかしくないのですが、僕はまだフワフワした感覚で未だにそこが現実か夢の中なのかわからないままでいます。

堤防から道路、さらにそれを越えた先には歩道です。

でもそこも何かが少し違います。

近くの明かりは薄暗い街灯と近くの自販機の明かりだけです。

ここは異世界か?異世界に紛れ込んだのか?ネットで見たことがある異世界スレの掲示板には決まって読めない字があったと聞く。だとしたら自販機に書いてある文字は?と思い自販機の缶ジュースが並んだサンプルの中を見てみると

本当に見たこともない字が並んでいる……多分この辺に金額が書いてあるんだろう場所にも普段【あたたかい、つめたい】の表記がある場所にも、全く生まれてから一度も目にしたことがないこの世に存在しえない字が並んでいる。

完全に異世界じゃん……どうやって戻るの?その手のスレに何か書いてあったな。

そうだ。その場所のものは何も口にしてはいけなくて食べたり飲んだりしたら帰れなくなると聞いたことがある。

そして、タバコを吸うと戻れると聞いた。

僕はすぐタバコを取り出して吸った。

その時、自分か自分じゃないかよく分からない人格になった。

何というかこう何でもかかってこいやみたいな、筋金入りの何かのようだった。

その時にびっくりしたんですけど、自分が来た。僕が、この場所に。

それもまたキャラが変わってた。

何か慌てながら何とか伝えようとしている自分が目の前にいる。

「ちょ、え、わ、わかった、じゃあわかった、死ぬのがしらけたんでしょ?んっとちょっとこれだけは聞いてコレ」と、どっからどう見てもただの縄をそいつが渡してきた瞬間に僕はそれを堤防に向かってぶん投げた。

そうするとそいつはすごくびっくりした顔をしてさすがに怒鳴りそうみたいになったあとにゆっくり説明してきた。

「ちょ、本当にお前はさあ……あれ輪廻なんだよ、何かの拍子に千切れちゃったからまた輪っかにしてもとあったところに戻さなきゃならないんだよ……どこいったかわかんないじゃんか」

完全にスカした感じで僕は「そんなもん知らねえよ、何で俺がそんな大役引き受けるんだよ」と言ったらさすがに怒りながらそいつは詰め寄ってきた。

「これがどういうことになってるかわかんないの?お前のせいで輪廻がなくなった。この世界から。誰も生まれ変わることができない。そしてこの空間だけは違う次元に切り離された。元の世界には二度と戻れない。向こうは似たようで少し違う世界が無数にできて、しかもその入り口がガバガバになった。お前がここに迷い込んだみたいなことがグシャグシャに向こうの次元で起こる。そして、もう二度と誰も生まれてこなくなった。いずれ誰もいないこの世ができる」

「あっそう。じゃあ俺はこっちの世界をなんとかしとくわ」

「じゃあ前の世界で最初に作ったザッとの歴史の流れ作りなよ、こっちの世の」

そう言われて自分は投げ出されてた自分の靴を持ってきてそれを使って必死に説明していた。

この最初の設定をミスったらまたとんでもないことになるとこの時本気で思っていた。

その新しい世界の設定を話している時に我慢していたけど徐々に涙が落ちていた。気がつけば自分の勝ち気なキャラはどこかへ消えて本来の普通の時の自分に徐々に戻ってたと思う。

もう誰も悲しませない世界の作り方を、どういうルートで世界が進んで行かなきゃならないかを、細かいところはもう忘れたけど家族の存在ではない離れられないニコイチの二人三脚のスタートを設定したことは覚えてる。それで焦らないで少しづつ、道を逸れたら教えてあげてと。

少しの希望を持って、立派になったその日には向こうの世界から二人来る。を付け加えた。

こうしておいたからあとはそっちでうまくやってくれよ。また会えるようにしたからと、僕の中で思い描く違う次元の友人に向かって心でこたえた。



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