2月27日 GUN
昨夜、灰皿代わりにしていた飲みかけの缶を倒してしまった事を
ふと思い出し、カーペットに滲んだ黒を取ろうとしていたらこんな時間。
外はピーカン。気分が良くなって100円ローソンで、缶コーヒーを買う。
100円ローソンの上の階に住んでいる人が布団を干していて、100円ローソンの看板にかかってしまうのではないかと少し考えた。
理由は特にないけれども、今日は何だか気分が良い。
バイト先の近くのローソンで今度はからあげ君を買って、食べながら職場へと向かった。
最近良く聞くシャムキャッツはなんて素敵なバンドなのだろう。
映画を見た後のような余韻に浸ったまま、僕は出勤した。
遅番は着いたと同時にゴミ捨てから始まる。
院外のゴミ捨て場に行くまでに、病院内をウロウロする必要がある。
僕はそれがとても好きなので、率先していつもゴミ捨てをする。
病院から出ると外は空気がとても澄んでいて、とても気持ちが良かった。
家族とサービスエリアに行った時の事を何故か思い出す。
今日はなんだかいけそうな気がした。
ゴミ捨て場に到着し、12月に使っていたクリスマスツリーを粗大ゴミに出した。家に持ち帰りたかったのだが、怒られそうなので辞めておいた。
少し寂しい感じがした。
外を眺めるのも終わったので、そろそろ業務に戻ろうとすると
たまに会話をする清掃のおじさんが「お疲れ〜す」と挨拶をしてくれた。
「お疲れっす。」と返すと「今日遅番?」と聞いてきた。
「そうなんっすよ〜。これから閉店までっす。長いわ〜」
「いいじゃん若いんだから!若者はもっと働け(笑)」
「年齢関係ないっすよ〜。おっちゃんの方がよっぽど元気そうっすよ」
「いや俺元気じゃないんだよ〜」
「またまた〜」
「いや俺癌なんだよ」
「まじっすか!(まず第一にこいつは頭がおかしい。癌以上の問題がある。これは確かだ。そして俺はまじっすかと言っちゃった。どうしよう。軽すぎた。ここから聞かなかった事に出来るのかな。無理だよな。だってまじっすかって俺言ってんだもん
。絶対まじだろうし。てかこの距離感、この親密度で「癌」を申告してくるって、何かのハラスメントじゃないのか。この向けられた銃口をどうかわせばいいのだろう。
とゆうか、無理矢理握らされた銃の先を、おっちゃんのおでこに突きつける形にされ「俺を撃ってみろよ!!さあ!」と言われてるようにしか思えないんだけど。引き金を引く訳にはいかない。でもどうしよう。などと考えていると、
おっさんの「いや違うんだよ。」と言う声が聞こえた。
どうやら俺は「でも早期発見で良かったっすね。」と、願いじみた脅迫をしていたらしい。で違うらしい。阿呆か。
言葉に詰まってしまうと「可哀想ですね。」になってしまうので、
「セカンドオピニオンとかしたんですか?」と「からの〜〜???」的な事を言ってみると「したね。癌だった。」と彼は言っていた。
「じゃあ、早く治るといいですね!」的な事を言ってその場を切り上げる事にした。
その後、清掃をしていても、品出しをしていても、レジを打っていても、おっちゃんの事が気にかかって仕方がなかった。
何て事をしてくれたんだろう。おっさんは俺に何て言って欲しかったのだろう。誰でもいいから話を聞いて欲しかったのか、はたまたこの距離感だからこそ思いっきり打ち明けてみたくなったのだろうか?
考えが止まらなくなった。
帰り道、お昼に捨てたクリスマスツリーが無くなっていた。
もう知らねえと思った。
それから数週間おっさんの姿をみなくなった。
それは紛れもなくおっさんが癌だったからだ。
そして今日久しぶりにおっさんに会った。とても嬉しかった。
「身体大丈夫なの!?」と聞くと
「癌じゃなかったんだよね。」と笑っていた。
ぶん殴ってやろうかと思った。
落合諒です。お笑いと文章を書きます。何卒よろしくお願いします。