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「一皮むける経験」を自ら創り出すには、どうすればよいか?

前回の記事では、リーダーが精神的に成熟するためには、内面の矛盾と葛藤する経験が必要であるということと、その葛藤のプロセスについて、ストーリーの原型を意識しておくことで、乗り越えやすくなるという話をしました。

今回の記事では、内面の矛盾と葛藤する経験を、どのように生み出していくことができるのか、ということについてお話しします。

成長機会は自分で創り出すことができる

リーダーシップ開発の研究分野において、一皮むける経験あるいは修羅場経験というテーマで、どのような経験がリーダーの成長を促すのかについての研究が行われています。

それらの研究によれば、リーダーの成長につながる経験機会としては、次のようなものがあると言われています。

・昇進(役割と責任の変更)
・異なる職務への異動
・離れた土地への転勤
・難しさを伴う、上司部下関係(元同僚の上司になる、年上の部下など)
・新しい人間関係
・新しい国や文化への適応
・新しい部署横断の必要性
・新しい業種・役割責任(業種変更を伴う転職、子会社への出向)
・働き方の変更(家庭事情、健康事情)

もし、あなたにこのような経験をしたことがあれば、「あのときは大変だったけど、それを乗り越えて成長できた面はあるな」と思えるのではないでしょうか。

一方で、これらの経験は、自分で創り出せるものというよりは、環境が変わることによって自分に「お鉢が回ってきた」というものが多いということに気づきます。したがって、10年くらいの時間スパンで見れば、これらのどれかの経験はしたことがあるという人が一定数いる一方で、数ヶ月単位でこのような環境の変化に巡り合うかどうかは、自分でコントロールできるものでもないというのも現実です。

そうすると、これらの機会に恵まれなければ、成長の機会が得られないということなのでしょうか?

私は、自分の成長の機会は、いつでも誰でもどのような環境でも創り出すことができると考えます。

リーダーの成長には、内面の葛藤の経験が必要であり、その内面の葛藤とは、「主体的真理に生きることと、周囲と調和して生きることの矛盾」に向き合う経験であるということを前回の記事で述べました。

上記の研究結果にあるような成長機会は、環境が変わることによって「周囲と調和して生きる」ということについて状況の変化が起こり、その変化への適応が求められる経験であると解釈することができます。「主体的真理」と「周囲と調和して生きる」というテンションにおいて、前者は変わらないけど、後者を取り巻く環境が変わったが故に、内面の葛藤が起こりやすいのです。

そのように考えると、環境が変わっていなくても、「主体的真理に生きる」ことに関する自分の内面の変化に伴うことで、内面の葛藤がもたらされることに気づきます。そして、これは自分の内面の変化ですから、いつでも誰でもどのような環境でも、自分次第で創り出すことができるのです。

「周囲と調和して生きる」ことの変化

外面の変化

自分で創り出すことができるとは限らない

「主体的真理に生きる」ことの変化

内面の変化

自分で創り出すことができる


では、「主体的真理に生きる」ことの変化というのは、どのようなものか?

まず、大前提として、今すでに適応課題(アイデンティティや価値観の変容を伴う課題)に向き合っている途上にあるという感覚をもっている人は、そのプロセスに集中すれば良いと思います。

また、自分に十分なリソースがあるかどうかについても確認しておくことをオススメします。リソースというのは、自分の体力・気力、周囲からのサポート、時間的な余裕、役に立つ道具、などです。旅で例えるならば、旅にでるには、体力や気力が必要になりますし、衣類などの準備が必要になるのと同じです。

リソースが十分でないと感じるときは、適応課題の旅にでるタイミングではないかもしれません。そのようなときは、自分のリソースが十分に回復する、あるいは、整うまで待つという選択肢もあるのではないでしょうか。

「不」の感情を伴う、繰り返し起こるパターンを見つける

自分が大きく成長できる機会を見つけたいと思っており、自分のリソースも十分だと感じられるのであれば、『「不」の感情を伴う、繰り返し起こるパターン』に注目することが、一皮むける経験を自ら創り出すヒントとなります。

なぜ、「不」の感情に注目するかと言えば、「不」の感情があるところには、何かしらの「本来の願いと現実のギャップ」があるからです。例えば、安定したいのに、何が起こるかわからないから不安になります。期待しているのに、満たされないので不満になります。

なぜ、「繰り返し起こるパターン」に注目するかと言えば、繰り返し起こるパターンの背景には、自分のアイデンティティや価値観に関する固定概念による影響があることが多いからです。繰り返し起こるというときに、自分がコントロールできないレベルで世の中の現象そのものが繰り返し発生しているということもゼロとは言えませんが、多くの場合は、自分の固定概念が、世の中の事象をそのように見させていたり、そのように引き起こさせたりしていることが多いのです。

私自身が陥った「繰り返し起こるパターン」は次のようなものです。(詳細のストーリーは、こちらの記事をご覧ください)

目標などの目指す姿に対する現実のギャップを感じる
(不快感情1:不安)

関係するメンバーと話す中で、当事者意識やコミットメントの違いを一方的に感じてしまう
(不快感情2:寂しさ、孤独感)

自分でやるしかないと判断して、自己完結したアクションをとる
(不快感情3:怒り)

結果がでる、でないに関わらず、しらけた雰囲気になる
(不快感情4:悲しさ)

自分で自分に「そうせざるを得なかった」という言い訳をする
(不安感情5:落ち込み)

営業目標が未達成になりそうなとき、商品開発がスケジュール通りすすまなそうなとき、社員が何か不満・不安を抱えていると聞いたときなど、場面が違っても、同じようなパターンが繰り返されていました。

この背景には、次のような価値観レベルの固定概念があったのです。

・社長が、全ての問題に対して、最後の責任を負わなければいけない
・目標と現実のギャップはすぐに埋めなければいけない
・ギャップを埋める行動の副作用はない(目に見える直接的な効果が大事であり、副作用というものは存在しない)
・結果がでれば、周囲は納得する

一皮むける経験の旅は、自分の価値観レベルの固定概念に気づくことから始まります。そして、固定概念に気づいたら、それをいきなり変えようとするのではなく、その固定概念を意識下において見守りながらしばらく過ごすようにするイメージです。

次に同じようなパターンがきたときに、「あの固定概念が、またでてきているな」と思えたら大きな収穫です。それを見守るようにしていると、「必ずしも、その固定概念に縛られすぎなくてもいいかもな」とか「ちょっと、違う考え方を試してみようか」という心の声が聞こえてきます。

その心の声にしたがって、少しだけ実験をしてみるイメージです。清水の舞台から飛び降りるようなことをする必要はありません。少しだけ、スモールステップで試してみればよいのです。

そして、その実験をした結果、「繰り返し起こるパターン」がどのように変わるかを観察します。事象そのものの観察だけではなく、特に、自分の「不」の感情を観察します。そこに、ちょっとした違いがあり、自分にとって望ましい方向に向かいそうであれば、もう少し大きめの実験に進めばいいですし、ピンとこなければ違うことを試せばよいでしょう。

「一皮むける経験=苦しい経験」とは限らない

「あれ?一皮むける経験と言われると、かなり大掛かりで、長い時間をかけて、苦しい思いをしながら乗り越えるものと思っていたけど、そんな身近な小さなことでいいの?」と思われた方もいるのではないでしょうか。

私は「一皮むける経験=苦しい経験」とは限らないと思っています。もう少し言えば、ゲーム感覚で楽しめる「一皮むける経験」を内面から創り出す、という感じが好きです。

もちろん、この記事の前半に記載しているような外部環境の変化による「一皮むける経験」(=修羅場経験)の場合、ゲーム感覚で楽しめるものとは限らないですし、苦しさを伴うものも多いでしょう。

しかし、「主体的真理に生きる」ことの変化に基づく、内面からくる「一皮むける経験」は、自分の心持ち次第ですし、経験のデザイン次第で、楽しめるものだったり、ワクワクするものだったりにすることができます。

私自身も、今、「自己表出=自分らしさと周囲との調和を保ちながら、自分の主体的真理や自分らしさを発信していく」という適応課題の旅にでています。このような形で発信しているのも、適応課題への対応という側面を持ちます。

そして、私はこの旅を苦しみながらやっているというよりも、テレビゲームをやっているような感覚で、「次はどんなモンスター(試練)がでてくるかな?」などと妄想しながら、取り組んでいます。

このように、「リーダーとして成長するためには苦しい経験を経なければいけない、あるいは、修羅場となる経験を経なければいけない」という固定概念は手放した方が、より前向きに、継続的に、自分にとっての「一皮むける経験」に取り組むことができて、成長し続けることができるのではないかと思います。

本日の問いとなります。(よろしければ、コメントにご意見ください)

・あなたが、これまで成長の機会となった経験で、自分の内面の変化がきっかけとなっているものがあるとすれば、どのようなことでしたか?

・今、あなたはの身の回りに、「不」の感情を伴う、繰り返し起こるパターンがあるとすれば、どのようなものでしょうか?

How can we create "breaking-out-of-one's-shell" experience"?

In my last article, I talked about how leaders need to experience inner contradictions and conflicts in order to mature mentally, and how being aware of the story archetype of the process of conflict can help them overcome it.

In this article, I will talk about how we can create the experience of inner contradictions and conflicts.

We can create our own growth opportunities

Research in leadership development on the topic of breaking-out-of-one's-shell experiences has been conducted to determine what types of experiences promote leader growth.

Those studies have shown that experience opportunities that lead to leader growth include: 

▼Promotion (change of roles and responsibilities)
▼Transfer to a different position
▼Transfer to a remote location
▼Difficult supervisor-subordinate relationships (becoming the boss of a former colleague, older subordinates, etc.)
▼New relationships
▼Adapting to a new country and culture
▼New cross-departmental initiatives
▼New industry/role responsibilities (job change with industry change, transfer to a subsidiary)
▼Change in working style (family or health circumstances)


If you have had this experience, you may think, "That was a tough time, but I was able to grow through it in some ways."

On the other hand, you realize that many of these experiences are not things you can create, but rather things that come to you as a result of a change in environment. Thus, while there are a certain number of people who have experienced any of these things over a time span of a decade, the reality is that you can't control whether or not you will encounter these changes in your environment in a time span of months.

Does that mean that if you don't have these opportunities, you won't have the opportunity to grow?

I believe that opportunities for personal growth can be created by anyone at any time and in any environment.

I mentioned in a previous article that the growth of a leader requires the experience of inner conflict, and that inner conflict is the experience of facing the contradiction between living in subjective truth and living in harmony with one's surroundings.

The growth opportunities described in the above research results can be interpreted as experiences in which a change in circumstances regarding "living in harmony with one's surroundings" occurs due to a change in the environment and requires adaptation to that change. In the tension between "subjective truth" and "living in harmony with one's surroundings," the former does not change, but because of the change in the latter's circumstances, inner conflicts are likely to occur.

If we think about it this way, we will notice that even if the environment has not changed, inner conflicts are brought about by the changes in one's inner life regarding "living in subjective truth". And because this is our inner change, it is up to us to create it at any time, in any environment.

Change in "living in harmony with your surroundings"
=
Outer change
=
Not always able to create by yourself

Changes in "living in subjective truth"
=
Inner change
=
You can create by yourself


So what is the change in "living in subjective truth"?

First of all, the basic premise is that if you have the sense that you are already in the process of facing an adaptive challenge (a challenge that involves a transformation of identity and values), you should focus on that process.

I also recommend that you check to see if you have sufficient resources. By resources, I mean your physical and mental strength, support from others, time availability, and useful tools. If we compare it to a journey, it's like a journey that requires physical and mental strength and preparation of clothing and other things.

When you feel that you don't have enough resources, it may not be the right time to embark on a journey of adaptive challenges. At such times, you may have the option of waiting until your resources are sufficiently restored.

Finding recurring patterns with negative emotions

If you want to find opportunities for significant growth and you feel your resources are sufficient, paying attention to recurring patterns of negative emotions can help you create your own breaking-out-of-the-shell experiences.

The reason why we pay attention to negative emotions is because where there are negative emotions, there is some kind of "gap between the true wish and reality". For example, we want to be stable, but we are anxious because we don't know what will happen. We expect something, but we are dissatisfied because our expectations are not met.

The reason why we pay attention to recurring patterns is that the background of recurring patterns is often tied up in fixed ideas about one's identity and values. When a recurring pattern occurs, it is not necessarily the case that the phenomenon of the world itself is recurring at a level beyond one's control, but in many cases, one's own stereotypes make one see the world as it is, or cause it to happen that way.

A recurring pattern that I myself have fallen into is the following. (For more stories, see this article)

Feel the gap in reality against the goal
(Negative emotion 1: anxiety)

Feel the difference in the sense of ownership and commitment while talking with the members involved
(Negative emotion 2: loneliness, isolation)

Decide that I have no choice but to do it myself and take self-contained action
(Negative emotion 3: anger)

Whether it succeeds or not, the atmosphere will be sullen
(Negative emotion 4: sadness)

Making excuses to myself that I "had to
(Negative emotion 5: depression)

The same pattern was repeated in different situations: when sales goals were about to be missed, when product development did not seem to be on schedule, or when we heard that an employee was unhappy or anxious about something.

This was due to the following value-and-belief-level stereotypes.

▼The president has to take the final responsibility for all problems.
▼The gap between goals and reality must be filled immediately.
▼There are no side-effects of action to bridge the gap (direct tangible effects are important, there are no side-effects)
▼If the result is successful, people will be satisfied

The journey of the experience of breaking out of one's shell begins by becoming aware of one's value-and-belief-level stereotypes. And when you become aware of the stereotypes, it is better to spend some time watching the stereotypes become conscious rather than trying to change them immediately.

When the next time the same pattern comes up, it is a great harvest if you think, "That stereotype is coming up again." As you watch, you will hear the voice in your mind saying, "Maybe I don't need to be too bound by that stereotype," or "Let's try a different way of thinking."

It's good to follow that voice of mind and experiment a little bit. You don't have to jump from a high place all at once. You just need to try a few small steps.

Then observe how the "recurring pattern" changes as a result of the experiment. In addition to observing the event itself, observe your negative emotions, in particular. If there is a slight difference and it seems to be heading in the desired direction for you, you can move on to a larger experiment, or if it doesn't feel right, you can try something different.

The experience of breaking out of one's shell is not necessarily a painful one.

"Huh? I thought the experience of breaking out of my shell was a pretty big, long, painful one to get over, but is it really such a small, familiar thing?" Some of you may have wondered like this.

I believe that the experience of breaking out of one's shell is not necessarily a painful one. Rather, I like the feeling of creating a game-like "breaking out of one' s shell" experience from within.

Of course, the experiences described in the first half of this article, which are caused by changes in the external environment, may not always be enjoyable like a game, and many of them may be painful.

However, an out-of-one's-shell experience that comes from within, based on the change of living in subjective truth, depends on our mind, and can be enjoyable or exciting, according to the design of the experience.

I am now on a journey of adaptive challenges, "self-expression = transmitting my subjective truths and my identity while maintaining harmony between my identity and the people around me." Writing articles in this way is also an aspect of responding to my adaptive challenge.

And I'm working on this journey more like a video game than a painful one, wondering what kind of monster (challenge) I'm going to encounter next.

In this way, if we let go of the stereotype that we have to go through painful experiences in order to grow as a leader, we will be able to engage in more positive, continuous, "breaking out of our shell" experiences and continue to grow.

Here are the quests of the day. (If you'd like, please share your thoughts in the comments.)

・What experiences have you had that have been opportunities for growth which had been triggered by your inner changes, if any?

・What are the recurring patterns around you right now, accompanied by negative emotions, if any?

Bunshiro Ochiai

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