見出し画像

探究学習・探究プログラムの価値

探究学習・探究プログラム、全国の中学校や高校で導入されましたが、「なんでこんなことしなきゃいけないんだろう」「どんな意味があるんだろう」と疑問を持つ生徒や、モチベーションを保つことが出来ない生徒たちが多いようです。
探究の価値について、プログラムを提供している生徒たちに手紙を書いたので、内容を共有します。
令和志塾では、この社会問題の探究の過程で、これからの社会で生きていく力を育んだり、自分たちにとって最適な進路を見つけたりしてもらっています。

Problem-BLでの探究プログラム、今週でいよいよ2回目ですね。「学習課題」はしっかりまとめていますか?ただ調べるだけではなく、調べた内容を、次のグループワークで簡潔に、だけど本質的に伝えられるよう、「チームへの伝え方」も意識しておいてください。これは、ディスカッションリーダー(班長)の事前研修会のときにAくんが出来ていたことですので、良く分からない人は彼に相談すると良いでしょう。

1回目のセッションでも伝えましたが、今回みんなが調べた内容が、2回目のセッションでは「事実」となるため、みんなの調査の質が高いほど、量が多いほど、チームの議論を活性化させます。学習課題の調査はこの2点を意識して進めてみてください。

先月の最初の挨拶の時と先週、みんなと進めている探究プログラムの価値を2回語りましたが、説明が苦手でうまく伝えられなかったので手紙を書くことにしました。(文章力があるわけではないですが)

大学を卒業後、東証一部上場企業で約7年の修行、起業して約10年高校教育に関わる仕事を経験してきた僕なりの探究プログラムの価値を6点伝えます。探究プログラムを受講していて、モチベーションを保てなかったり、何のためにしているのかを見失ったりした時は、この手紙を読み返すと良いかもしれません。

最初に結論を言うと、探究プログラムの価値は、
高校で学んでいることと社会で必要な知識や資質能力が深いところで繋がっていることを実感できる学習機会であり、修得すれば、高校生どころか、その辺の大学生や社会人にも差をつけることが出来る
ところにあります。

これからもう少し具体的に述べるので、関心ある人は読んでください。

読んでいて分からないところがあれば、遠慮なく質問してください。

探究の価値①:探究力が学力アップに直結する
Problem-Based Learningでの探究は、事実をもとに自分たちで仮説を立て、自分たちで学習課題を立て、自分たちで調べ、調べた内容を事実として更に深い議論をしていきます。調査、探究するなかで文章やデータを読み解く力が身に付くし、自分が調べたことや同級生が調べたことが知識になるため、探究の過程で自然と学力向上に必要な知識や能力が備わります。
また、これまで関わってきた生徒たちを見て思うのですが、本当に学力がある生徒は、この「学習課題の調査の質」が全然違います。途中でやめたり諦めたりせず、自分が納得いくまでしっかり調べてきます。この探究意欲と深い思考力も、学力へと直結しているという実感があります。
なので、ここをしっかり身につけておけば、自分たちより偏差値の高い高校に通う生徒たちに勝てます。

※Problem-BLについては、下記URLの掲載している動画をご覧ください。https://note.com/oces/n/nc0a629d429ed

探究の価値②:社会で必要な能力アップに直結する
多くの会社や社会では、ある課題に対して「原因を究明し、解決策を立て、実行し、振り返り改善すべき点と改善策を究明し、再度実行する」という探究プログラムと同じサイクルで課題解決が行われます。この探究プログラムは最終的に課題解決のためのアクションプランをプレゼンを行ってもらいますが、それは「ビジネス」「科学技術」「政策」など実社会を想定とし、社会人がつくるものを上回るプレゼンをしてもらうことが目標です。ただの机上の学習とするのではなく、実際に本番と思って行えば、ビジネスシーンを含めた社会で必要な能力アップに更につながるということになります。まさに、生きた学びですね。

探究の価値③:入試の結果に直結する
この探究活動を入試の志望理由書や、活動報告書で書く生徒たちがいて、合格にも大きな影響を与えています。どれだけ深く学び、これまでの自分の知識や経験とつなげられたか、それらをどれだけ未来につなげるイメージを持てたかが合格のためのコツです。

探究の価値④:進路選択に影響を与える
他校の生徒たちの感想を見ていると、この探究活動が進路選択に影響を与えていることがよくわかります。例えば、「モノづくりがしたい」とだけ考えていた生徒が、世の中の役に立つものをつくりたいと考えるようになったり、環境問題を探究した生徒が、そういった学部を希望し始めたり、そもそも進路について考えていなかった生徒が、考えるための良い機会や観点をもらったという感想をくれたりしています。探究すれば、視野や思考が広がり、新しい物の見方、つまり価値観が生まれ、自分の夢や進路、目標が変わる生徒もたくさんいます。

それは成長の証だと思います。
「またやりたいことが変わったの?」それは褒め言葉として捉えましょう。それだけの知識や能力が身につき成長したということです。
むしろ、視野を広げようとせず、高校生までに得た知識や思考の範囲内で将来を決めすぎるのは良くないことだと思います。

一方で、探究の過程で、自分が選んでいた道が良い選択だと、自分の選択が正しかったと気づいた生徒もいます。
大学や専門学校進学後、「もっとちゃんと考えて進路選択すれば良かった」という人が世の中たくさんいますが(僕もですが)、原因はこういった考える力が足りなかったり、機会をつくろうとしなかったり(与えられなかったり)、視野が狭かったり、そもそも幼くてちゃんと考えようとしていなかったり、いろいろです。他校の生徒たちの感想から、探究プログラムでそういった進学のミスマッチを減らすことができるということが分かります。

探究の価値⑤:教科の学びの価値に気づかせてくれる
「学校の勉強って社会で何の役に立つんだろう」
こんな疑問を持ったことありませんか?
お恥ずかしながら、僕は高校の3年間そのことを実感できるほどの深い学びができず、そんな疑問を持ち続けていました。
しかし、今は違います。社会で必要な力を知り、その力と教科学習が一つ一つ深いところで繋がっているんだという実感があります。他校の生徒から「中学の理科で学んだことや、地理で学んだ知識が活用できた」などという感想が出ていて、学習意欲につながっている生徒が本当に多いです。

探究の価値①でも書いていますが、探究を進めていく上で、文章やデータを読み解く機会は増えてくると思います。また、プレゼンテーションの資料を作るのに、文章やデータを自分たちで作ることが必要になってきます。これらがどの教科で養われているか、もはや言うまでもありませんね。

探究の価値⑥:探究して見つけた課題の解決策を実践すると、よりリアリティが出る
今年の8月に、九州工業大学 戸畑キャンパスで、「Project-Based Academy」というサマーキャンプを開催しました。これは、高校生に“机上の空論ではない、リアルな実践の場”を提供することを目的として開催しました。参加してくれた高校生たちは、自給自足の発展途上国の村に、「雨水を浄水する持続可能な科学技術を届ける」というプロジェクトを発足し、現在その科学技術を開発しています。みんなそのような経験のない普通科高校の生徒たちです。彼らは3月にこの科学技術を現地に届けられるよう、実験や寄付集めを頑張っています。

探究プログラムの授業時間の中でここまで行けるかは未だかつてしたことがないので不明ですが、探究の果てで、実社会で活かせる科学技術やビジネスプラン、政策を見出し、企業などに提案し、採用されることが、僕の探究プログラムの最終目標です。(※令和3年受講生が挑戦中)
この実践が学びをよりリアルにし、より社会人として必要な資質能力の向上へとつながるでしょう。

以上6点が、探究プログラムの価値ですが、最後に、僕の探究の体験談をもとにその価値について書きます。

僕は、大学1年生19歳の10月に受講した教職課程の授業をきっかけに、教育という職業と学問に関心を持つようになりました。今すぐ教育現場で働きたいと思ってアルバイト情報誌を見ていたら、高校生の進路指導のプログラムを運営するスタッフの募集を見つけて、すぐ応募して働きはじめました。

その時から「高校生たちの進路選択のあり方」を一点集中で探究するようになり、現在39歳、いつの間にか20年の月日が経っていました。

これまでの僕は、自分に自信を持てなかった。
だから、周りの軽率な批判がいちいち気になっていたし、周りの大人の自己顕示欲の強い主張や意見(僕ももう大人なのか。なりたくないけど。)にいちいち流されることも多かった。

だけど、この20年の探究人生が、僕に確かな自信と、人脈や能力という武器をくれた。

この武器をフルに使って提供した探究プログラムを受講した生徒たちの成長を見て、自分の20年が間違っていなかった、案外イケていたということを、彼らが気づかせてくれました。

みんなには、この探究プログラムを通して、自分の人生の探究テーマを見つけてほしい。

見つけた人、既にある人は、その探究方法や実践方法を身につけてほしい。

その深い探究の果てに、「自分らしさ」がきっとあるから。

僕は、39歳で、20年の真剣な探究活動でようやくそれを見つけました。

みんなの進路選択が後悔のないものとなることを心から願い、この探究プログラムを引き続き全力で提供していきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?