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『社内の「知的確信犯」を探し出せ』③ドラマのエキストラ

『社内の「知的確信犯」を探し出せ』(ロバート・D・ヘア/ポール・バビアク著)では、サイコパス社員が脚本するドラマを例えに、サイコパス(良心の呵責を感じない人)の実態を説明している。

サイコパスの本性を見抜くエキストラ

ドラマの主役はサイコパス社員、脇役にはサイコパス社員を守る影の権力者”パトロン”、そしてサイコパス社員に嵌められる上司や同僚らが登場する。そしてエキストラもいる。

エキストラを務めるのは、サイコパスが関心を持たない社員たちだ。脚本には、エキストラについて何も書かれていない。しかしこの脚本にないエキストラは、サイコパス社員の正体をしばしば知ることとなる。しかし、多くのドラマがそうであるように、エキストラがドラマの筋書きに影響を与えることは滅多にない。

サイコパスは、すべての従業員に興味を持つわけではない。社内には、コネや強みに乏しく、頼りになりそうにない同僚や上司も大勢いる。だが、サイコパスに無視された者は、状況をありのままに観察できる。サイコパスの仮面に気づき、彼らがだれかを操っている様子を目撃することさえあるだろう。

同僚や上級管理職のなかに、サイコパスの手口の一部を見抜いている人々がいる。サイコパスに操られていない、エキストラと呼ぶべきそのグループは、サイコパスの身近で仕事をしていくうちに、数々の矛盾やうそや事実の歪曲に気づき始める。彼らはサイコパスのドラマで役を与えられていないので、ある程度、サイコパスの仮面の下をのぞくことができる。

だが、たとえ懸念を抱いたとしても、それを被害者や上層部に報告する者はほとんどいない。
『社内の「知的確信犯」を探し出せ』

相反する証言の理由

こうした事情から、脇役たちが、サイコパス社員を「誠実で有能」と思い込む一方で、エキストラは、サイコパス社員を「嘘つきで冷酷である」ことを見抜くのである。

これは、最近タリウムで女子大生を殺害した疑いで逮捕された(サイコパスかもしれない)宮本一希容疑者に対して、報道された知人や隣人たちの証言と通ずるものがある。

宮本のことを「やり手」「真面目」「家族思い」など、「犯罪を犯すような人ではない」と証言する人たちがいる一方で、「会社を作ったけど何もしていない」「バカ息子」「また離婚するのでは」と宮本の人間性を訝しがる証言もある。

一人のサイコパスを、批判者は嫌い、支援者はあがめ奉る。同一人物についての感想とは思えないほど、評価は大きく分かれる。このような状況下の事例を見る限り、サイコパスは、接する相手によって、温かく親しみやすい人間と、冷たくてよそよそしく、敵意をむき出しにした人間を演じ分けているとしか思えない。
『社内の「知的確信犯」を探し出せ』

私の知るサイコパス気質のA氏もそうだ。彼のパトロン役はAを高く評価している。その影響もあり、Aを誠実で真面目という人たちが結構いる。

一方で、Aは「嘘つき」「傲慢」「無能」と見る人たちもいる。

あまり目立たないある社員は、「無感情、無表情な人」と言っていた。私はその社員と仲がいいので、「今の騒動を引き起こしているのはAなんだよね」と伝えた。その社員は一瞬、驚きの表情を見せたが、すぐに納得したようで「あ~、どうりで悪くなるばかりのはずだね」と言っていた。

サイコパス社員の本性を見抜く人たちはいる。だからと言って、パトロンに守られているサイコパス社員の問題を直接指摘するのは簡単ではない。

たとえ胡散臭さを感じる者がいても、サイコパスの出世を阻むことには、なかなかならない。こうして同僚や上司を貶めながら、サイコパスは出世街道を行くのである。

今日も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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