見出し画像

ヨーロッパ大学院進学への道-その4:行ける時に行く!-

9月になり、来年秋からの海外大学院進学を考えている人は、大学やコースについてのリサーチを始める頃だと思います。仕事をしている人は特に、今の仕事を辞めてまで行く価値があるのか、タイミングは今でいいのか、、、と考えているかもしれません。かくいう私も、合格通知をもらって以降も来年に延ばした方が良いかな、と考えた時期がありました。
しかし今言えること。それは行ける時に行こう!ということです。まとまったお金が必要になった、親の介護が必要になったなど止むを得ない理由が出てくるかもしれません。それに加えて、大学の募集要項は毎年変わります。私の通っているコースは、今年の入学者から応募条件としてデンマーク語の資格証明(しかもかなりのハイレベル)が必要となり、それを持っていないと願書すら出せない状況になりました。つまり私がもし一年引き伸ばしていたらデンマークで勉強できることはなかったということです。
ヨーロッパ全土で極右政党が台頭し、多くの国でEU/非EU関わらず留学生への対応が冷たくなってきています。今回は私の大学の募集要項変更を事例に、なぜ行ける時に行く!を私が主張したいのかをお伝えします。

目次
1. デンマーク政府による留学生削減の動き
2. 募集要項が突然変更!?
3.    学生によるプロテスト活動
4.    最後にまとめ


1. デンマーク政府による留学生削減の動き

画像1

(2019年6月にデンマークでは中道左派と言われている新政権が発足しました。ここで紹介しているのは中道右派と言われていた前政権の動きです。)
デンマーク政府は、ここ数年、留学生削減の方針を打ち出してきました。約3分の2の留学生が卒業後はデンマークからいなくなり、デンマーク経済に貢献していない、というのが大きな理由です。それならデンマーク市民でない人(現在学費無料の恩恵を受けているEU市民)から学費を徴収するのが一番の解決策では?と思う人もいるかもしれませんが、EUには「教育費において自国民とEU市民が受ける恩恵を(ほぼ)合わせなくてはいけない」というルールがあるため、EU市民からは非EU市民からのように学費を徴収することはできないのです。
それに加えて「留学生が返済型奨学金を返さずに自国に帰っている!」という現状も留学生削減の動きに拍車をかけています。デンマーク市民であればもらうことのできる毎月約10万円の返済不要奨学金ですが、返済型の奨学金はEU/非EU関わらず一定の条件をクリアすればもらうことができます。(ちなみにEU市民は一定時間労働すれば返済不要奨学金の対象者となります。)しかしその返済型の奨学金を返さずに自国に帰ってしまう留学生が多いことが問題になっているのです。デンマーク政府によると、今までに返済されていない奨学金の合計はEU外から約389ミリオンクローネ(約45億)、EU内から約234ミリオンクローネ(約27億)!! こちらの記事によると、数年ある返済期限の間に、返済者がデンマークの外に出てから何度も住所を変えてしまうと、追跡するのが難しいようです。
以上のような理由から、政府だけでなく一部のデンマーク市民からも留学生削減を歓迎する声も出てきています。私自身、数人のデンマーク人からこの件についてどう思う?と聞かれたことがあります。個人的には返済型奨学金が返済されない現状に政府が危機感を抱くのも市民が起こるのも理解できるので、その仕組は変えたほうが良いのでは、と思っていますが。。。

2. 募集要項が突然変更!?

画像2

私の大学(オーフス大学)は、去年から今年にかけて、170ものInternational Programを閉鎖したそうです(詳しい記事はこちら)。上の画像のように、私のコースの募集要項に「Aレベルのデンマーク語」という条件が盛り込まれたのは去年の12月中旬のこと。実は私のコースも閉鎖対象の一部だったようなのですが、デンマーク国内でも人気があることから、募集要項に「Aレベルのデンマーク語」という条件を加えることで大学幹部とコースの教授陣で合意したそうです。
しかし教授陣に聞いてみると、教授陣のなかにはデンマーク語が堪能でない人も多くいるし、授業は今年度入学者以降も英語で行われ、短期留学生(semester単位の留学生)はデンマーク語が話せる話せない関係なく受け入れるとのこと。しかし私の代はデンマーク人とそれ以外が半分半分くらいですが、今年は短期留学生が3人、そのほかは全員デンマーク人とのこと。政府が目標としていた留学生の減少は達成された模様です。
ちなみに、各大学閉鎖しなくてはいけないコース数が政府から通達されているのですが、そのコース数は卒業後もデンマークに残っている留学生の数によって決められているとのこと。それを知った私の留学生の友人たちは「デンマークで仕事が見つかればデンマークに残る学生はかなり増えると思うのになあ」と言っていました。

3. 学生によるプロテスト活動

本題には関係ないのでおまけ情報ではありますが・・・・この動きを受けて、学生連合はさまざまなプロテスト活動を行なっています。デンマーク人の生徒たちも「留学生とともに学べる環境がデンマーク人にとって学びを深めることにつながる」と主張し、デモ活動や政策提言活動を行なっています。
ちなみに最後のInternatinal Batchとなった私たちは、教授とも合意しコースの存続をどうすればアピールできるかを話し合いました。教授陣が大学側の肩を持つのではなく、学生の意見を後押ししてくれる環境に感銘を受けつつ、私たちは、学部長/学長への抗議の文章提出ゲリラ的に校内中に皮肉たっぷりのポスター張り(写真参照)というプロテスト活動を行いました。ちなみにポスターは何種類かあるのですが「国際色豊かで世界ランキング上位!」をアピールしている私たちの大学のwebサイトを留学生削減の動きを踏まえて皮肉コメントで赤入れしたものを貼りまくりました(笑)

留学生削減の動きを知らなかった他コースの友人数名から「あのポスター見た?何??」と聞かれたので、ポスター貼りの効果は多少はあったのでは、と思います。

画像3

International University, Study in English, English- no problemと書いてあるwebサイトの文言に、画像右にあるように留学生削減の動きを書き足したもの。

画像4

国際色豊かをアピールしてるページも、今後は、デンマーク語、ノルウェー語、スウェーデン語だけになるよ、と書いたもの。

4. 最後にまとめ

以上のように、今後自分の身に何が起こるかも、自分が行きたい国やコースに何が起こるかも、誰もわからないので、もし学びたいコースが見つかり、その募集条件に自分が合致するのであれば、ぜひそのチャンスは掴んだほうが良いと思います!2年に一度しか学生を募集していないコースなんていうのもあったりしますし。まあ逆に言えば、今後条件が緩和する可能性もあるので、なんとも言えない、という点もありますが。。。私自身、大学院進学という道をこのタイミングで選んで本当によかったと思っているので、今回の記事が、大学院進学という道を迷っている方の背中を少しでも押せればなあと思っています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?