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茫漠の桜花爛爛

桜花爛爛染まる血汐に華やいで
触れる指先青く悦ぶ
――蒼き夕暮れの舞踏会は
曖昧な死を描く抽象画から零れ落ちた
「最期の一滴のクランベリー」だと笑うのは
此処に遺された空白の棺桶と
【名も無き墓標】だけだったから
柔らかなシーツに溺れる君とロゼワイン
余りにも穏やかな呼吸停止を
ただ暗い目をして傍観することしかできなかった

(沈黙に浸るサイレン)

最期を告げる慟哭は狂う憐憫、記憶__
忘れた茜色を君が振り翳すナイフが描きだして。
左手__それでも夢うつつは淡くゆらめくだけ
桃色の痣が雨中に滲みて
人々は全ての蝙蝠傘を亡骸へと変換した
慟哭なき路上、アルコールの悲鳴
曇天のヴェールが彼女たちの表情を隠匿する__
……やがて、幽かに射し始めた陽光すら
死に浸された色を拭い去る事ができなかったから――
暁の茫漠、或いは着色料
層雲のソーダは蒼を帯びたまま
永遠のような春色を柔らかに遊泳していた
醒めゆく熱の気配、境界性の季節は澄みきった終末を隠し持って、変容と溺死を齎すというのに……

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