奇数のメスカリンカラー

11月の欠落、蒼の空洞と罅割れた試験管
あてどなく彷徨う足首は紫斑帯びて
十字架の機密事項に気づくこともなく――

奇数を刻まれた足首の枷はその黴を悔いることも忘却せしめ軍隊蟻を蹂躙し諸刃の刃に自傷の悦楽に笑みを浮かべ涙すら宝玉と化したと宣う間に口紅の痕が消えることなく夜の帳を唾棄した愚かなる革靴の擦傷陪審の付箋と共に殺人者は妻を埋葬した

……「月光」の磊落と７
偶数を決して許さない王座にしがみつくのは
ブランデー漬けのハツカネズミだけ
影すら落ちない白日に
子供たちは一人／また一人と渇きに臥せて＿＿
彼らは頚椎を愛撫し続ける
外科室の最果て　メスカリンの夢の三乗
血への恐怖、彼女たちは静脈を抉り
血への餓え、黒いマントに隠された砂塵の無呼吸
救済なく瓦解するのはいつも
螺旋階段を形成する鍵盤の不協和音だから
「焼け落ちる喉に黒死病と赤死病の選択肢が迫る」鏡に映る、死蝋に憑かれた金魚の浮遊
最期の水槽に化学式がへばりついた時
終わらない沈黙が訪れる

春霞に血飛沫＿＿猟奇の痕
酩酊に昏迷する暁に

　　記

憶の

花

　札がひ

と　　ひ　　　ら、

ま

た

ひとひらと瓦解してゆく
塩素剤に彩られた舞台、蹂躙の痕跡すら青く
唯、誰もいない大団円が
静かにフェイドアウトしていった
描かれた奇数分に、偶数は赦されることなく
瓦解した夢は緩やかに墜落してゆく＿＿
鳴り止まぬ茜色の警報に、無機質な血管が揺らぐ｢彼｣の左足首からの出血は
永遠の黄昏時をアスファルトに描き
暗翳に浸された少女は血を零しながら
摂氏51度の水牢砂漠を彷徨い続けている