見出し画像

最後の夜だから…

たまには仕事の話題の記事を書く事に致します。

私は不動産を管理・運營する仕事をしておりますが、その管理しているマンションで明日、集合郵便受けの交換工事が行われます。
メール便の大きさにも對応した間口が廣く収容力の大きい物で宅配ボックス附きの最新型に換装されるのです。

通信販賣の荷物の流通が増えた今日、今や標準装備となりつゝある物ですが既存のマンションはこうして設備を時代に合わせて更新していく事が肝要なのです。
今や新築物件は雨後の筍の如く乱立しておりますれば築年数を重ねた物件はこうして年々増える新築・築浅物件に對抗していくのです。

そこで既存の集合郵便受けは撤去する事になるのですが、この郵便受けはこの建物の竣工當時からずっと使われ續けてきた物なのです。
謂わば歌の文句にもある「おじいさんの生まれた朝に賈ってきた時計」なのです。
100年とはいきませんが、もうかれこれ30年以上になります。
様々な入居者様との出會いと別れを繰り返してきたポスト達、明日の朝一に工事が始まりますれば今日がその最後の夜となりました。

「長い間本當にお疲れ様」との氣持ちを込めて終業してから一人、この郵便受けの掃除をしました。
私は長く使われてきた物に對しては最期に入念なる掃除をして出來るだけ綺麗な状態で処分する癖があるのです。
毎日見ている物なので氣に留まらなかったのですが、よく見ると細かな傷や塗装が剝げてしまった箇所等、幾多の時を過ごしてきた事が解ります。

画像1

今や旧式となってしまいましたが、出た當時はこの通り画期的な品物だったのです。

日常清掃以上に丁寧に掃除をし、雑巾が黒ずむ位の汚れを取りましたが流石に新品の様にはいきませんでした。
しかし、最後の夜はせめて新品の如く美しい姿で過ごしてほしいと思っているのです。
「今迄ありがとう」と云う感謝の氣持ちで一人、黄昏時のエントランスでこの集合郵便受けを見つめておりました。

画像2

(※プライバシー保護の為、画像は一部加工しております)

設備とは申せ廣義の意味では所詮「消耗品」であります。
しかしモノに溢れる今日、日々大量の物を捨てる事が當り前となってしまった我々は今少し時を重ね働き續けてきた物に對して少々敬意を持ってその最期を見届ける事をしても良いのではなかろうかと思いました。

上手くリサイクルされたら次はどんな物に生まれ変わるのだろう。
ありがとう。さようなら。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?