ブロコピ・障害者の就職の難しさ【2006/05/23(火)15:53】

特例子会社?障害者雇用?

今回の内容は障害者雇用、特に特例子会社についてです。実は私の利用者様の中に、作業所から特例子会社へ転職できそうな方がおりました。その方は、非常に真面目で優しくて、でも…とても寂しがり屋さんで社交辞令や冗談も真に受けてしまうので、周りの悪気ないかかわりにでも辛い思いばかりが残ってしまいます。知的障害なのでやはり自閉傾向もあり、嫌な事ほど忘れられなくなっちゃう19歳。極たまにですが、癲癇(てんかん)発作が起きちゃうと無意識に何か独り言を言いながらフラフラ歩き回ってしまう事がある所が障害者たる所以です。そんな彼を通して知る事ができた、とある誰もが知っている有名な企業・財団の特例子会社の現実を、障害者雇用の実態を書いていきたいと思います。

(※実は今は昼休み中なのですが、だいたい記事が出来ているので更新しちゃいます!…誤字脱字手直しは仕事終わったらミッドナイトにしますので、お見苦しい点は大目に見てちょ。)



まず、障害者雇用促進法の説明です。

※全部読むのが面倒な方は太文字をざっと読んでいただいてもおおよそはわかると思います。

「事業主の責務」



すべての事業主は、身体障害者又は知的障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、適当な雇用の場を与える共同の責務を有するものであって、進んで身体障害者又は知的障害者の雇入れに努めなければなりません。

事業主の、障害者雇用率達成義務

事業主は、その雇用する身体障害者又は知的障害者である労働者の数が、その雇用する労働者の数に障害者雇用率(1.8%)を乗じて得た数(その数に1人未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。「法定雇用障害者数」という。)以上であるようにしなければなりません。(特殊法人の雇用障害者数は、2.1%)

障害者雇用率を達成したかどうかの報告義務

事業主(その雇用する労働者の数が常時56人以上・特殊法人の場合は、48人上である事業主に限る。)は、毎年1回、6月1日現在の身体障害者又は知的障害者である労働者の雇用に関する状況を、7月15日までに公共職業安定所長に報告しなければなりません。
※ちなみに56人以下は雇う法的義務はないそうですが、雇う努力をする義務があるそうですので、「ウチは従業員少ないからいいや。」では無いそうです。


「障害者雇用納付金制度」



「障害者の雇用の促進等に関する法律」では、障害者の雇用に関する事業主の社会連帯責任の円滑な実現を図る観点から、この経済的負担を調整するとともに、障害者の雇用の促進等を図るため、事業主の共同拠出による「障害者雇用納付金制度」を設けています。

高齢・障害者雇用支援機構では、事業主から障害者雇用納付金を徴収するとともに、その納付金を財源として障害者雇用調整金、報奨金及び各種助成金の支給を行っています。

障害者雇用納付金の徴収

障害者雇用率(1.8%)未達成の事業主は、法定雇用障害者数に不足する障害者数に応じて1人につき月額50,000円の障害者雇用納付金を納付しなければなりません。

障害者雇用調整金の支給

常用雇用労働者数が300人を超える事業主で障害者雇用率(1.8%)を超えて身体障害者や知的障害者を雇用している場合は、その超えて雇用している障害者の人数に応じて1人につき月額27,000円の障害者雇用調整金が支給されます。

報奨金の支給

常用雇用労働者数が300人以下の事業主で一定数(各月の常用雇用労働者数の4%の年度間合計数又は72人のいずれか多い数)を超えて身体障害者や知的障害者を雇用している場合は、その一定数を超えて雇用している障害者の人数に応じて1人につき月額21,000円の報奨金が支給されます。

尚、障害者雇用率が未達の企業は社名が公表されます。
※色々なサイトの文章を引用しまくってますが、パクリではありませんよ(笑)

…と、あります。つまり、世の中すべての会社には障害者を雇う義務があり、その義務を怠ると法律違反となり罰せられるか納付金を払い金銭にて障害者雇用への義務を果たさなければならないと言う事です。

そして、

特例子会社の要件

として

①親会社にかかる要件
 
・親会社が子会社の意思決定機関を支配していること
(支配力基準:議決権の過半数を所有している場合等)
・子会社への役員派遣、従業員の出向等人事交流が密であること
※連結決算の対象となりうる子会社が対象となります

②子会社にかかる要件

・株式会社又は有限会社であること
・雇用障害者数が5人以上で、そのうち重度身体障害者及び知的障害者の割合が30%以上であること
・従業員に占める障害者数の割合が20%以上であること
・障害者のための施設・設備を改善し、職業生活の指導をする指導員を配置する等障害者雇用に特別な配慮を行っていること
 

関連会社のグループ適用の認定要件


・親事業主が関係会社の意思決定機関を支配していること
・関係会社と特例子会社との間の人的関係若しくは営業上の関係が緊密であること又は関係会社が特例子会社に出資していること
・親事業主が障害者雇用推進員を選任しており、かつ、当該推進員が関係会社と特例子会社に関しても障害者のための施設・設備の改善等、障害者雇用に関する業務を行うこと
・親事業主が、認定されたグループ内の障害者である労働者の雇用の促進及び雇用の安定を確実に達成することができると認められること

と、ある。こちらは多少ややこしいのですが、例えば本来は20事業ある会社の1箇所で障害者を何十人雇おうとも他の19つは全く関係無い筈だが、一定の条件(↑の要件)を満たすと20事業の合計で1.8%を満たせば良い事になります。(いまいちニュアンスが違うかなぁ?)
つまり、本来56人の1事業毎にに1人ずつ障害者が雇用されいなければならない法律なのですが、19個の事業では1人も障害者を雇用せずとも1箇所で20人雇用していれば他19箇所も満たしている事とする。という風に説明するとわかるだろうか?キチンと配慮のなされた子会社を設立するならばその企業は社会的義務を果たしていると見なすという意味でしょう。



さて、本題です。上記の制度を踏まえて読んでみてください。



ある精神障害者の作業所で働く青年がいました。青年は、知的障害とてんかんが主疾病の真面目で優しい人。毎日毎日遅刻1つせずに自分の責任を果たす姿は、健常な人々にも簡単にはマネできないと思わせるほど。しかし、就職してちょうど1年ほど経った頃、環境は変わってしまいました。青年は自閉症独特の自傷行為や苦しそうなうなり声がとても苦手です。優しすぎる彼は、例え他人でも傷つくのが苦しむのが絶えられないのです。そんな理由で知的障害にも関わらず精神障害者の作業所を選んできたのです。始めはこのまま落ち着いた日々が一生続くのかと思えるほど順調でしたが、環境が変わってしまいました。彼の特性を十分に理解していなかったのか、作業所は新たに3名の自閉症者を受け入れました。養護学校卒業以来1年間穏やかだった彼に、再び苦しみの日々が戻ってきてしまいました。彼の苦しみは、関わっている私にも良くわかりました。自閉症の人が悪い訳では無い。だけど受け入れる事ができない。だから避けて働ける場所を探したのに…。それを理解できなかった無知な従事者。私の力ではどうする事もできませんでした。
そんな時に突然、特例子会社の話が舞い込んできました。青年の知人からもたらされたものなのですが、渡りに船とはこの事かといわんばかりのタイミング。色々な不安はあったものの、現在の状況では何も変わらないと考え挑戦してみる事になりました。
履歴書を書き、いざ面接。真面目で優しい反面、作業は決して素早い方では無い事と、癲癇発作が不安要素。その事を話し、

「2ヶ月研修という形でやってみましょう!我々が様子を見て、ぜひ続けて欲しいという仕事ぶりであればその後に採用とします。」

という事になりました。少なくとも、2ヶ月間辛かった作業所から離れなれるだけでも価値はあるとホッとしたと思ったそうです。
そしていざ出勤。何やら様子がおかしい。ジョブコーチどころか、障害者雇用の担当者すら不在の初日。彼が来る事すら聞かされていなかったパートのおばちゃんが担当になって教えてくれました。
「何かの手違いかな?」
と思う事にしましたが、翌日になるとすぐに理由がわかりました。2日目も仕事は無事に終えたものの、本人より
「発作があったみたい。良く覚えていない時間がある。」
と話があり、心配していたらその夜に保護者に連絡があったそうです。言われたセリフをそのまま書きます。

「お宅のお子さんでは仕事になりませんね。付きっ切りでしたからね。普通は1時間もついて教えればすぐに仕事ができますよ。その上、機械の近くに行くなといくら言ってもフラフラ近づいて行くし。とにかく、今月一杯で終わりにしますね!」

ガチャリ…。と、一方的な電話だったようです。今月一杯と言ったら1ヶ月にも満たない…。2ヶ月と言ったのはなんだったのか?しかし、雇用主からそう言われればしょうがないので、残された期間を精一杯やるしかありません。何かが変わるんじゃないかと淡い期待に思いをはせて…。しかし翌日、簡単に期待を裏切りました。

「申し訳ないのですが、今週で終わりにさせてもらいますね。」

ビックリした保護者は聞き返したそうです。

「今後の参考にしたいので、よろしかったらうちの子のどこが良くなかったか教えていただきたいのですが…。」

との問いにさらにビックリした言葉が返ってきました。

「人がついてないとまるで仕事にならないし、機械にはいくら注意しても近寄るし、そもそも毎朝遅刻じゃ話になりませんね。近いA駅からの始発のバスで間に合わなくとも、遠いB駅の始発なら間に合いますよね?お母さんが甘やかしてんじゃないですかね?それじゃ失礼!」

ガチャリ。またも一方的。その話を聞き私は、全国レベルの巨大企業が母体の○○福祉財団運営の特例子会社がそんな非人道的な対応をするのかと耳を疑ったのですが、確かめる意味で次の朝に彼を送った後に舞い戻り、事務所の男に名刺を渡し

「お約束もせずに失礼かと思いますが、貴社が障害者雇用を促進していると聞きまして、ぜひとも見学させていただきたいと思い参上いたしました。10分でも構いませんのでよろしくお願いします。」

と、特例子会社としての環境整備やスタッフの意識が整っているかを潜入調査を試みてみました。こちらもプロなので、一瞬でも現場を見れば障害者へ配慮があるかどうかなんて一目瞭然ですからね。…しかし、相手の方が上手でした。もはやマニュアル化されているのか、全くの思考時間ゼロで即答され

「担当のものが長期で不在でして、申し訳ありませんが当分お見せできません。お引取りください。」

と、事もあろうに名刺まで突き返されました。

「な、何ぃぃ~!?」

名刺を配って早数年。2~300枚は配りましたが、一度渡した名刺を返されたのは生まれて初めての経験。まさに衝撃でした!福祉財団依然に、特例子会社依然に、企業として問題ありの対応ですよね!?もうこの企業には仕事を頼みたく無くなりました。最低です。これからはプライベートでも他の運送会社に仕事を依頼します。他にもAとかBとかCとかいっぱい運送会社はありますからね。
しかし、行ってみて良かったです。その会社のほんの入り口に入って数分のやり取りで大体掴めた気がしますもの。だって、障害者の職員に挨拶をしている健常な正規職員が全くいなかったのですから。唯一挨拶していたのはパートのおばちゃんだけでした。障害者の彼らが
「おはようございます!」
と元気に挨拶してるのに、目も合わせない職員達。こんな酷い環境で働ける特別高い生産能力を有した一握りの障害者が生き残る世界なのでしょうか?こんな環境で働くくらいなら、時給低くても、障害者の事を良く知らなくとも、スーパーや花屋さんとかの方がキチンと対応してくれますよ。そういう所の方がノーマルに生きていけますよ。何の為の福祉財団で、何の為の特例子会社なのか理解できません!

結局、先週仕事を止めさせられた青年は、今週から新たな仕事を探す事になるのでしょうが、少し心が成長したように見えました。それだけが救いです。

私、さらに調査を進めてみたのですが、そもそもその会社の風潮として、

「障害者だろうが健常者だろうが使えない人間は切り捨てる。」

という考え方があるそうで、特別な配慮が必要な人間は障害者であろうがなかろうがいらないのだそうです。福祉財団を創設した会長はそれはそれはすばらしい考えを持っていたそうですが、末端には届いてはいないようです。ましてやもうお亡くなりになっているそうで、福祉的思想はもはや一部の人間に残すのみなのかもしれませんね。ちなみにこの話は、以前この会社に勤めていた方からうかがいましたので、信憑性は高いですよ。
しかし、特例子会社とは障害者雇用促進法上で、「特例」なだけであって、それ以外は普通の会社なのもまた事実。福祉工場や作業所などといった非営利組織ではないのです。故に、特例子会社は営利法人であり、株式会社あるいは有限会社のどちらかの形態になります。つまりは資本主義の末端にあるものであり、利用者本位で運営できるものではないと言う事です。もっともな話なのですが、個人的には

「だったら福祉財団とか言うなよなっ…!!」

て言いたいです。福祉を語って障害者を使って利益とイメージをあげるなんて、法に触れない詐欺ですよ。福祉を語るならせめてまともな断り方をしてください。よりによって母親が甘いからだなんて、言って良い事と悪い事の区別も付かないのでしょうか?多くの母親たちは、大なり小なり健常に産んであげられなかった事を悩み苦しんでいるのです。母親が甘いなんて、産んだ事が悪いと言われているようなものなのです。経営上生産性が低い職員を雇うのは確かに難しいと思います。断る事は止む無しでしょう。だからせめて正直に

「わが社はたくさんのお客様からの仕事が日々めまぐるしく舞い込んでまいります。お宅のお子様は素早く仕事をするのが得意ではないようなので、長期に続けていくのは難しいと思いました。ゆっくりと丁寧な仕事を求める企業もございますので、そういう所を検討していただいた方が本人の為かと思います。」

などと、人のせいにしないで断るくらいは出来ませんかね?ほんとに最低限ですがこれくらいは「特例」なんだから配慮して欲しいと思います。大企業過ぎて、障害者ごときにした対応ぐらいで信用が落ちるとは考えていないのでしょうね。たぶん。

えっと…一応フォローしときますが、特例子会社のすべてがそうだとは言いませんよ。障害者の為に、儲け度外視で特例子会社を設立した所と、自分達の経営難を救う為に納付金・調整金丸儲けするつもりで設立した所と、その両方の理由があって設立した所と様々なので、良い企業も存在しているようです。もっと直接現場を見てまわらないと正直わかりませんけどね。今回例にあげた企業もホームページだけ見ると、障害者の救いの神に見えるほどステキな理念を掲げていた企業なのですけどね~。ま、言ってもしょうがないので皆様はそんな機会がありましたらしっかり調査してから就職する(させる)事をおススメします。

エライ長くなってしまいましたがココまでお読みくださいましてありがとうございます。それではまた~!

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