寓話に学ぶ3つの働き方

以前、仕事の選び方は、①好きを仕事にする、②得意を仕事にする、③使命を仕事にする、の3種類あると書きました。

今回は、仕事を選んだ後、どのような働き方をするか?について3つの寓話をもとに考えてみたいと思います。

ドラッガーの石工の寓話

ドラッガーは著書「マネジメント」の中で、3人の石工の話をしています。

三人の石工の話がある。何をしているかを聞かれて、それぞれが「暮らしを立てている」「石切りの最高の仕事をしている」「教会を建てている」と答えた。第三の男こそマネジメントの人間である。
第一の男は、仕事で何を得ようとしているのかを知っており、事実それを得ている。一日の報酬に対し一日の仕事をする。だが、マネジメントの人間ではない。将来もマネジメントの人間にはなれない。問題は第二の男である。熟練した専門能力は不可欠である。組織は最高のスキルを要求しなければ二流となる。だがスペシャリストは、単に意思を磨き脚注を集めているにすぎなくとも、重大なことをしていると錯覚しがちである。専門能力の重要性を強調しなければならない。しかし、それは全体のニーズとの関連においてでなければならない。

マネジメントについての本なので、マネジメントとして働くということを説明するための寓話ですが、非常に示唆深いものだと思います。

単に「お金を稼ぐために働く」のか、「自分のスキルを伸ばすために働く」のか、「人の役に立つために働く」のか。

以前、働くとは「人助け」であり、仕事とは「人の役に立つ」ことだと書きましたが、その意識を持っているのは3番目の人だけだと言えます。

ニーチェの寓話(駱駝・獅子・子供)

次にニーチェの著書「ツァラストラはかく語りき」からの引用です。

原典を読んでいるわけではないので正確性は欠けますが、

既存の価値観に従って行動するもの=駱駝(ラクダ)
既存の価値観から自由になろうと抗うもの=獅子(ライオン)
新しい価値観を生み出せる無垢なもの=子供
この3段階で精神は変化する。

と私は解釈しました。

以前、「自由とは」という記事に、「自由とは、思い込みからの解放」だと書きました。

つまりニーチェで言う獅子。ライオンが既存の価値観という思い込みから逃れようと抗う、それが自由であるということかと思います。

これを働き方に当てはめると、既存の価値観に従って、人の言われたとおりに動くのが「ラクダ」。

与えられた役目に対して、もっとこうした方がいいのではないかと抗う姿勢を持っている人が「ライオン」。

そして、誰の価値観にも縛られず、新しい価値や働き方を生み出せる人が「子供」。

あえて言うなら、「子供は自由」なのではなく、「自由を手に入れて、人は子供になれる」ということかもしれません。

labor/worker/player

最後に、いろいろな人から話を聞いた、英語で「働く人」を表す3つの言葉についてです。今回はロングマン英英辞典を引いて概要箇所を引用しました。※イギリス英語でlabour、アメリカ英語でlaborとのこと。

labour=work, especially physical work
worker=someone who does a job, especially a particular type of job
player=one of the important people, companies, countries etc that is involved in and influences a situation, especially one involving competition

なるほど、わかりやすく例えれば、labor=肉体労働者、worker=専門職、player=キーマン、くらいのニュアンスでしょうか。

驚いたのですがplayerには「自分のやりたいことを楽しんでやる」というようなニュアンスはありませんでした。

この英語の寓話で良く語られるのは、人にやらされるlaborではなく、狭い世界に閉じたworkerではなく、やりたいことをやるplayerになろう!という趣旨かと思いますが、実はplayerは「競争で重要な人」という意味しかありません。

競争戦略において重要なことは「違いを創る」と考えると、違いを創造できる人、と言い換えられるかもしれません。

3つの寓話をまとめて

ニーチェの第二段階のみ、他の二つの寓話とはちょっと違いますが、共通点は、

・第一段階は、既存の価値観に従う「奴隷」の状態

・第三段階は、新しい価値観(価値)を生み出す「創造者」の状態

ということかと思います。

ただ気を付けなければならないのは、「奴隷」は既存の価値観に最大限貢献している存在であって、「奴隷」状態を経ずにいきなり「創造者」になろうとするのはなかなかむつかしいかなと思います。

自由とは、既存の価値観からの解放だとすると、ニーチェが示したように、精神はラクダ(奴隷)を経験しないとライオン(自由)になれない(自由への闘争が生まれない)、ライオンを経験しないと子供になれない(新しいものを生み出せない)ということだと思います。

子どもを「子供」にするために

子どもを「子供」にするというのは言い方が変ですが、自分の子どもが「創造者」になるためには、既存の価値観をしっかりと知ること(=教養)も大事だし、それを自分の頭でしっかりと考えて、価値観に捉われない発想や考え方が出来るようになることも大事ということで、日々の会話でそこを意識していきたいと思います。

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