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WE Run | Write, Eat, Run

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私たちが(そして誰かが)走り続けるためのリレーマガジン
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はじめましての方へ、おすすめの記事。1-100記事篇

■はじめまして 『WE Run』は、“私たちが(そして誰かが)走り続けるためのリレーマガジン”というコンセプトのもと、走るをテーマに綴っていく共同運営形式のマガジンです。 “Write, Eat, Run”という3つのキーワードから生まれたマガジン名が象徴するように、書くことを通じて走ることについて考え、食事を楽しむように走ることを楽しもうとするメンバーが、書き手として参加しています。 目指すは、“読み終わったら走り出したくなるwebマガジン”。距離やペースにと

なんの練習もせずにトレランに挑戦する51歳の夏

2024年7月5日、金曜日。 長野市内での仕事を終えた私は、今日の宿に向けて車を走らせていた。明日の午前中に志賀高原で開催されるトレイルランニング大会に出場するため、近隣の宿に前泊するのだ。 雨模様の中を小一時間進み、目的地である渋温泉に到着した。宿のフロントに顔を出し駐車場の場所を尋ねると、ご主人に駐車場まで案内していただけた。温泉街の東端、南北に流れる川沿いの坂道に駐車スペースとおぼしき白線が等間隔で引かれている。そのうちの一区画が、この旅館に割り当てられているようだ

2024年夏、私の遠野物語

1.物語を飛び出して 今年の夏は、ルーシー・モード・モンゴメリ 著『赤毛のアン』と柳田國男 著『遠野物語』の世界にどっぷりと浸かっていた。偶然にもほぼ同じ時代に書かれたこの2冊に、なぜ私は今心を奪われているのか考えていたのだけれど、心の疲れがこれらの物語を求めていたように思った。特別何かがあったわけでもないのだけれど、ずしんと重い気持ちになって、なかなかしんどい日が多かったのだ。これらの本を読んでいると、アンの空想の世界や遠野の民話の世界の中の、現実を少し違った角度から見て

発酵にまみれたハーフマラソンを走る

2024年5月19日(日)、午前9時。 早起きして自宅から2時間40分かけて、JR成田線の下総神崎駅に到着した。 改札口を出て、人並みの後ろについて歩みを進めていく。 今日は、この地で『千葉県誕生150周年記念事業 第3回神崎発酵マラソン』に参加するのだ。 沿道にある商店跡とおぼしき建物のガラス越しに猫の姿を眺めながら、 20分ほどで会場に到着した。 さっそく着替えを済ませて荷物を預け、会場となっている『神崎ふれあいプラザ』のグラウンド上に軒を並べているテントの下で

東北で『弔い』を走る " 旅先で『日常』を走る ~spin-off㉓~ "

2024年6月16日、日曜日。 16時すぎにいわき駅へ降り立った私は、改札口の前から伸びているペデストリアンデッキを通り、駅前交差点の向かいに建つショッピングビルに入った。このビル1階にある花屋で、とびっきり華やかな彩りの花束を作ってもらうために。 日曜日といえば駅前の花屋にとってはかき入れ時だ。店先には溢れんばかりの色とりどりのお花が並んでいるだろうと胸を高鳴らせてながら向かったのだが、残念なことに多くの花はすでに売り切れてしまったようで、ショーケースの中にある花もまば

延伸した北陸新幹線に乗って敦賀の友と邂逅し、能登でボランティアをする旅(合間にちょっと走る)

2024年3月30日 午後4時すぎに、私は出張先の長野駅から北陸新幹線に乗り込んだ。ここから、一週間ほど前に延伸したばかりの終点の地「敦賀」に向かう。 明日の朝から『ふくい桜マラソン2024』に参加するので、福井県内に前日入りするのだ。 敦賀駅に到着したのは、午後6時すぎ。5度目の来訪になるが、もちろん3階に新設された新幹線ホームに降り立つのは、今日が初めてである。 2階に降りて、在来線との乗り換え改札を抜ける。どうやら新幹線構内から直接外に出る術はないようだ。 在来

瀬戸内で『夢の中』を走る " 旅先で『日常』を走る ~spin-off㉒~ "

2024年3月9日、土曜日。時刻は午前6時を少し回ったところだ。 私は東京駅から高速バスの深夜便に乗って、岡山駅前に到着した。 この旅の目的地は、明日の午前中にハーフマラソンを走る瀬戸内海の「ゆめしま海道」だ。しかし、ここから直接向かうわけではなく、一旦四国入りしていくつかの途中下車を経てから、明日の朝に現地に到着する旅程を組んだのだ。 せっかくの遠征なので、少しでも多くの場所を訪れてみたいではないか。駅前で朝マックのブレックファーストを摂り、さっそく四国への移動をはじ

紀伊半島で『ワーケーション』を走る " 旅先で『日常』を走る ~spin-off㉑~ "

2024年。今年は毎月どこかでマラソン大会に参加しようと意気込んで、すでに上半期の分はすべてエントリーを済ませた。マラソン大会とはいっても、私が主にエントリーするのはハーフマラソンの部ではあるが。 1月の八丈島に続き、2月は和歌山に遠征することにしていた。11月ごろから仕事が立て込んで忙しく日々を過ごしていたので、絶好のリフレッシュ休暇になる。はずだった…… 年明け早々、和歌山市での空き家再生プロジェクトに伴う「発酵酒場」のメニュー開発を引き受けることになった。これが思い

東京マラソン2024参加記

17回目にして、東京マラソンに当選。完走してきた。 フルマラソンは3回目。調べると、前回、前々回はどちらも2016年だったらしい。あの頃は、まだ30代中頃で若かった。今のように日常的にランニングなどしていなかったが、ふと「フルマラソン出たことねぇなぁ」などと思いつきで参加したのだろう。しかも初参加は「掛川・新茶マラソン」だった。何かしらの事情によって現在中止されているこのマラソンは、アップダウンが激しく、日本屈指の過酷なコースと言われる。覚えている。確か前半に急な下り坂があ

人生の転機を感じながら、歩く

3月に入った。朝晩はまだ寒いが日中は暖かく、天気が良い。花も咲き始め、春の接近を肌で感じる。いや、花粉の飛来を鼻で感じるというべきか。(近年私は花粉症を発症した) そんな春の日差しが注ぐ小道を歩きながら、私は天気ではなく「転機」について考え始めた。鼻がムズムズするのを紛らわしながら。 …というのも、先日「卒業ソング」に関するコラムを某メディアに書くなかで、卒業は人生の「転機」の一つであると再認識したからだ。例えば中学を卒業して高校に入学するのは、単に学校が変わるだけではない

走るため フェリーで行って 飛行機で 帰る場所でも 東京なのだ “ 東京そぞろ走り #8 ”

2024年1月6日、土曜日。時刻は22時を回ろうとしている。 私は港区にある竹芝客船ターミナルに到着した。 これからフェリーに乗る予定なのだが、まだ切符も購入していない。お目当てのフェリーはすでに接岸しており、乗船手続きも始まっている。まずは切符売り場に急いだ。 「八丈島まで1枚」。受付で伝える。早く乗りたいので、早く売ってくれ。「あちらで乗船票にご記入の上、乗船口に進んでください」 切符の右側に付いている乗船票に個人情報を記入し、乗船口に急ぐ。なんとか出航5分前に乗

自分の感情を「ひとひねり」したいと思いつつ、歩く

先月歩きながら「今年もあっという間に1年が終わるだろう」と思いnoteにまとめたが、案の定あっという間に1月が終わり、2月に突入した。本日は立春。暦の上では春だ。立春と聞くと、童謡「早春賦」が思い浮かぶ。「春は名のみの風の寒さや」という歌詞は、なんて日本的で美しい表現だろう。時が経つのが早いのは仕方ないにしても、季節感だけは常に感じていたいものだ。 そんなことをつらつら思いながら、私はいつものコースを歩き始めた。空はすっきりと青いが、風は冷たい。明日は雪予報が出ているが、ど

西の果てを走り、鯵を食べつくす九州旅 " 旅先で『日常』を走る ~spin-off⑳~ "

2023年11月8日。午後3時。 私は高速バスと新幹線・在来線特急を乗り継いで、長崎県の佐世保駅にたどり着いた。 今日と明日は、地方出張の合間にできた休日なのだ。 -- 今回の出張、最初の目的地は熊本県五木村。最近、ついに人口が1,000人を切ってしまったという、九州で最も人口が少ない自治体である。 この村で生まれ育ち、進学で五木を離れたが社会人として東京で3年勤務した後にUターンして、村の活性化に尽力しているTさんという方がいる。彼女の招きで、というか「一度現地を

自分を知る1年にしたいと思いつつ、歩く

2024年も、あっという間に11日が過ぎ去った。この分だと、あっという間に1月が終わり、1年が終わるだろう。そして私はまた1歳、年を取る。 年末年始、年度初め、誕生日など、一年の中には時間の流れを意識せざるを得ない特別な日が存在する。その日が来ると私は人生の短さを憂い、いつか自分も死を迎えるという事実に直面して恐怖を感じるのだ。果たして私はあと何年生きられるのか?残された人生で何を成すべきか?そんな老人のような思いが頭をよぎる。既に初老といえる年齢なので無理もないが。 そ