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運び屋 (2018 映画)

クリント・イーストウッド監督・主演。家族との折り合いが悪い90歳手前の孤独な老人が、ひょんなきっかけで麻薬の運び屋となって大金を稼ぎ続けるが...という話。

日本で公開されてたの?ってくらい、そのまんまのヒネリのない地味なタイトル。あまり見る気も起きなかったが、とりあえずクリント・イーストウッドだから録画してみたが、とんでもなく見応えのある逸作だった。

高齢の独居老人を主役にして犯罪の片棒を担がせるなんて。酷い話だと思うと同時に、日本でもあり得るよな、とも思った。若い子がアルバイト感覚でオレオレ詐欺の受け子になるのだから、年金の足しに老人が受け子をしても不思議ではない。

さはさておき、イーストウッドの着眼点は素晴らしいと思ったら、実話が元になってると知ってこれまた驚き。85歳から2年もの間、麻薬を運び続けた第二次世界大戦の退役軍人・レオ・シャープ氏の存在は「事実は小説よりも奇なり」を地で行っている。

終盤の奥様が絡むエピソードが事実かどうかは不詳だが、結果的にハッピーな結末となったことにはホッとした。クリント・イーストウッドの映画は哀しい結末が多いから。

家族への愛情と自我を両立するのは難しい。国が違っても、悩むところは同じなのねと痛感させられた作品だった。

そんな真面目な感想を持たせると同時に、主人公が老人なのにとても元気なところを見せるシーンがあって笑えた。犯罪組織のボスの人情味も垣間見せる、必要といえば必要な場面だったかなと。

さはさておき、日本版で製作するのも面白いかもしれない。その場合の主演は、ちょっと思いつかない。かっこよく枯れていて、かつユーモアもあるお爺さん俳優って...歳をとった大杉漣さんにやってもらいたかったな。

余談① 12年間口もきいてくれない長女を演じたのは、イーストウッドの実の娘さんとの事。

余談② 「アンタッチャブル」でとってもカッコ良かったアンディ・ガルシア。タップリ貫禄がついて意外な役で出ており、嬉しいやら悲しいやら。



【追記】この映画を見ていて、亡き父がクリント・イーストウッドに重なって見えた。翌朝になって、昨日が月毎日だったことを思い出した。父さん、ごめんね。

【更に追記】この映画には差別への反抗が垣間見えるシーンがある。一つは、男性のような屈強な女性ライダー達が大型バイクを乗り回しているシーン。故障に困っている彼女らに、主人公は最初男性かと思って声をかけるが、受け答えからそうではないと知り応対するシーン。

もう一つは、白人ばかりのサンドイッチ屋にヒスパニック系の仲間を連れて行くシーン。周囲の白人達からジロジロ見られても気にしない主人公。そんな彼を人として信頼する仲間の様子が良かった。


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