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「TOKYO MER~走る緊急救命室~」 (ドラマ TBS)

子どもの頃から馴染みだった日曜夜9時「東芝日曜劇場」は、数々の名作ドラマを世に送り出してきた。
時が流れ「東芝」の文字が無くなっても、やはりこの枠の安定性というか"名作枠"のプライドを見せつけたのが、昨晩の「TOKYO MER~走る緊急救命室~ 」だと、私は大声で叫びたい。

走る緊急医療隊というか、手術室が医療者とセットで現場に現れる設定は架空である。なのにまるで実在しているかのような、呼べば本当に来てくれるようなリアリティがこのドラマの最大の勝因だろう。
そこに都知事・政治家や公安と、時事的事件まで絡ませるから「密着!東京の医療と人々の暮らし」みたいなドキュメンタリーを見ている気にさえなってしまう。

鈴木亮平が本当の医師に見えるうえ、賀来賢人のような官僚がいて欲しいと真面目に思いさえする。


これまで数々の難局を乗り越えてきたMERの面々は、今回最大かつ致命的な事態に遭遇する。
主人公喜多見医師(鈴木亮平)の過去の秘密が、言葉巧みに騙された妹(佐藤栞里)から漏れてしまい、ネットで拡散。
それを利用したテロ犯(城田優)は、女子大生を内通者にして大学で爆破事件を起こし、孤立無援の喜多見をおびき出す。
なんとかその場を乗り切ってホッとした直後、テロ犯が妹に仕掛けた爆弾が起動...。

2時間ドラマ並みの濃厚な展開を、サラッと違和感なく45分でまとめる手腕も凄い。が、注目すべきはその内容である。

無辜の主人公の過去が暴かれネットで拡散、そこに野次馬コメントが加わってのリツィートでさらに拡散。
テロ現場では、傍観者でさえネットの情報を鵜呑みにして主人公を妨害。
「自分の目で見た事を信じろ!」と一喝する主人公の相棒・音羽のセリフは、ネットの情報に振り回される一般市民全員への警告そのものである。

内通者の女子大生は搬送途中に自白する。
「感染症でバイトが無くなり、経済的な理由で退学を決めた。自暴自棄になりテロに関った(今は後悔している)」と。
これはまさに現況だ。
テロまで行かなくても、順調だった生活をコロナでぶち壊され、やり場のない怒りや無気力さが犯罪に向かう。現実社会においても、要注意かつ迅速対応必須事案である事は間違いない。
このシーン、国会のスクリーンで流して視聴すべきではないだろうかと真面目に思った。


更に印象的だったのが、テロ犯の言葉。
「世の中は不条理だ、それを思い知れ」
冷酷なテロリストは全ての希望や良い事を破壊する。信じたくない許し難い行為であるが、最近国内にもそのような犯罪が増えていないだろうか。

平和の祭典とも言われるオリンピック・パラリンピックで歓喜や感動に包まれる一方で、疫病による医療の切迫は加速している。
更にアフガニスタンではタリバンの暴虐で、生命の危険にさらされている多くの方々がいる。
この現況こそ、まさに不条理そのものではないだろうか。

そんなそんなで来週は最終回を迎えるこのドラマ。予告の後に次期ドラマの宣伝も映ったが、そのタイトルが「日本沈没-希望のひと-」。
絶望の後の希望、という流れはエモさ最高だが、来週の「TOKYO MER~走る緊急救命室~」が世の中に希望をつなぐ終わりになる事を切に祈っている。


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