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ものづくりは作り手の「違和感」から始まり、使い手の「コンテクスト」の中で価値が生まれる-Takram 渡邉氏と緒方氏から見たobjcts.io-

去年の11月末から約3ヶ月間に渡って東京・白金で開催したポップアップストア。ポップアップでは製品を販売するだけでなく、objcts.ioが思う「ものづくり」を考える場として、ブランドに所縁のあるゲストをお招きしたトークイベントを行いました。

今回のnoteでお伝えするのは、Takramの渡邉康太郎さんと緒方壽人さんをお招きしたトークイベント「”objcts” & thoughts -Takramと語るプロトタイピングとコンテクストデザイン-」について。

昨年末ローンチした新作『Smart Tote』のプロトタイプをお見せしながら、objcts.ioのものづくりはTakramのお二人の目にどう映るのかを、「わかるとつくる」「コンテクストデザイン」をキーワードにobjcts.io デザイナー角森とともにお話いただきました。

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イベントを語り直すことを通じて、Takramのお二人の考えとobjcts.ioのものづくりの共通項を紐解いていきます。


認識する世界と理想の世界に不一致があったとき
人は"つくる"


イベントの主題の一つである「わかるとつくる」とは、緒方さんが執筆されているnote連載のタイトルで、理解と創造性について考えることをテーマにされています。

イベントでは、「そもそも”わかる”とは何か。”つくる”とは何か。」という問い掛けから始まりました。”わかる”とは何か、その前提として緒方さんがお話されたのが「予測する脳」について。

「普段何かを目にしているときに、ほとんどの場合はそれを見ていない。例えばリンゴを見ているとき、リンゴが目を通じて脳にインプットされているように感じる。しかし実は目からインプットが入る前に、脳の中でリンゴのイメージが作られ、それを脳から先にインプットしている。そして見ている内容と脳から送り出している内容に不一致が生まれたとき、はじめてそれを考えるということが生まれる。」

不一致が生じたときに、人ははじめて目の前にある物事について考え、意識的に見方を変えたりといった行動を起こします。そして、イメージを予測する脳のモデルを修正することを通じて、生じていた不一致を解消した状態にすることが”わかる”ということ。

それではなぜ人は”つくる”のでしょうか。

「なぜ”つくる”のかということを考えたとき、そのクリエイティビティの源泉は、自分が感じたことと世の中の間の齟齬や違和感にある。その人にしかないものだけれど世の中にあった方が良いのではないか、何でないのだろうか、そう感じたものを形にして誰かに伝え、世の中に問うことが”つくる”ということなのではないか。」


objcts.ioが繰り返した
「わかるとつくる」


自分と世の中を照らし合わせたときに感じる違和感。それらが"つくる"ことの出発点であるという緒方さんのお話。イベントでは具体例として「The Cleaner Attachment Case」を取り上げていただきました。

振り返ってみると、このプロダクトの制作にあたって根底にあったのは、掃除機のアタッチメントを付属の箱に入れてクローゼットに収納する際に感じた「箱がクローゼットの中で浮いてしまっている」という違和感。そして「アタッチメントを使っていないときも、クローゼットに馴染むように収納したい」という想い。

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違和感を見過ごさず、クローゼットに馴染むケースをつくるために行ったプロトタイピング。

緒方さんのお話を踏まえると、それは「わからないから”つくる”。”つくる”ことで”わかる”。この”つくる”と”わかる”の連動を通じてより良いプロダクトにしていく行為」だったと改めて認識することができました。

objcts.ioに期待する「一人」に着目した取り組み


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イベントのもう一つの主題である「コンテクストデザイン」という言葉。ポップアップストアでも期間限定で展示販売をさせていただいた渡邉さんの著書『CONTEXT DESIGN』には下記のように記されています。

コンテクストデザインとは、それに触れた一人ひとりからそれぞれの「ものがたり」が生まれるような「ものづくり」の取り組みや現象 
(渡邉康太郎著 『CONTEXT DESIGN』)

コンテクストデザインのお話をするにあたって、渡邉さんが持ってきてくださったのは3冊の書籍。

1冊目の『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』は、作家のポール・オースターが、全米の生活者から「ものがたり」を集めて朗読するというラジオ番組を書籍化したもの。人々を感動させる不思議な実話が現実にあることを教えてくれます。

2冊目の『Worn Stories』は、アーティストやデザイナーなど様々な人の愛着のある1着の服に関する「ものがたり」がまとめられたもの。着古された服であっても、そこにその人にとっての思い出や価値が詰まっていることを感じることができる1冊です。

3冊目の『捨てられないTシャツ』は、編集者の都築響一氏が、有名無名問わず様々な人たちから「捨てられない1枚のTシャツ」とそこに込められた「ものがたり」を集めたもの。Tシャツが誰のものかは伏せられており、エピソードをもとに持ち主を想像できるのも本書の面白さの一つ。

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3冊に共通するのは、「一人」に目を向けることで、そこに個々人のコンテクストの中で紡がれた様々なものがたりを見出せることです。

「こういった”一人”に着目した取り組みを、objcts.ioにもやってほしい。 例えばある一人のためのバッグを作るシリーズ。その人の生活にとって大事なものをバッグに包む。単にものを護る、運ぶ以外の、多様な”バッグの意味”を考えるきっかけになりそうです。たとえば水筒のためのバッグを作るならば、使い捨ての缶やボトルを買いたくない、というその人の意思を映すことになるのかも。バッグを通じた意思表明ですね。一人のためのバッグを作るたびに、バッグの作り手がまだ知らない新たな意味と出会えるかもしれません。」

3冊の書籍を紹介しながらご提案いただいた、「一人のためのバッグ」。「一人に着目することで、その人のこだわりや価値観を映し出したものをつくる」ということは、objcts.ioが知見を持ったスペシャリストとコラボレーションして製品を共創するプロジェクト『Co-Prototyping』にも通ずる点だと感じました。

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「わかるとつくる」「コンテクストデザイン」から見た
objcts.ioのものづくり


認識する世界と理想の世界のギャップに対して違和感を覚えることから始まるものづくり。

そして「つくる」と「わかる」を繰り返しながらより良いものにしていくプロトタイピングを通じて、完成したプロダクト。

そのプロダクトが使い手に渡った瞬間から、それぞれの使い手の生活の中で「コンテクスト」が紡がれはじめ、段々と作り手の意図を超越したモノになっていきます。

そんな「作り手の想いから始まったものづくりが、最終的に使い手の生活の中で多様な価値を生む」ということを理解し、今後も様々な可能性を秘めたプロダクトを作っていきたいと思います。

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