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ニューヨーク日帰り旅のはじまり       by AmtrakTRAIN 

 今回のボストン滞在中に私はニューヨークへ日帰り旅をしてきた。
アメリカ全土を走る旅客鉄道Amtrak(アムトラック)で
ボストンからの所要時間は約4時間。案外ニューヨークまで、近いのだ!

出発前日、ボストンのサウスステーションのAmtrakの窓口で
まずは始発電車の時間を確認すると、5時発だという。
帰り便は、比較的治安が良いボストンだが
夜の19時前に到着する電車を選び、往復とも指定席をチョイスした。
往復でおよそ190ドルだった。

Amtrakの運賃は電車によって座席によって、日にちによって違う。
自由席や学生割引もあるようだった。

指定席を購入するために、本人確認が必要なのに、
私のパスポートはホテルに置いてあった。
ホテルに取りに戻ってくると
窓口のおばさんに告げると、親切なおばさんは
「しょうがないわね」といった感じで
フルネームを質問して、
名前入りのチケットを手渡してくれた。

ちなみに窓口でなくても、
Amtrak公式サイトでも購入できる。


当日早朝・・・時差ぼけが続いていたので、
何時に起きられるかすこし心配だったが
ばっちり朝4時には起きて、薄暗い中を歩いて
駅に向かった。
駅に到着すると、サウスステーションの正面玄関が閉まっていた。
そこは5時から開くと書いてあったが、
ニューヨーク行の電車は5時に出るのだ。
出発まではまだ少し時間はあるものの・・・
私は、どうしたらよいのか・・・と焦った。

正面扉の前で、しばらく立っていると
同じように、
正面の扉で立ち止まっていた人は
地元の人と思しき人達が
駅の右手に流れていくことに気づいて
歩き出した。
私も一緒になって、
その流れについて行ってみると、
駅の扉は、ひとつだけ開いていた。

ほっとした。

自分の真正面しか見えていないと、
扉は閉じられていて、
その先には、進めないと思って、
焦ったり、慌てたりしてしまう。
けれど・・・ほんの少し
周りを見回す余裕があれば、
必要な流れは、見えてくるのだ。
その先の扉は、きっと用意されているのだ。

なーんて大げさかな。
これは普段の自分に足りない発想だ、と思った。


駅構内に入ると、始発に乗る人達がそれなりにいて、
プラットホームはザワザワとしていた。
出発時間ギリギリの10分ほど前まで
ニューヨーク行の電車が
何番ホームから出発するのか表示が出ない。
やはり、指定席にしておいてよかった、と思った。

駅売店は早朝のため、閉まっていたので、
朝食を買えなかったが、
乗り込んだ電車には、食堂車がついていた。
最近の日本の新幹線は
車内販売さえないこともあるので、
それだけで私のテンションはあがった。
それから私は、指定席を探して座った。
もちろん窓際の席だ。
ボストンからニューヨークまで、およそ350km
海岸線を走る鉄道旅が始まった。
まだ薄暗いボストンを出発し、
気が付くと電車は湿地帯の中を走っていく。
日本では見かけない不思議な景色だった。

窓の向こう
東の空から、お陽さまが登っていく。
ゆっくりゆっくり空が明るくなり、
少しずつ 陽の光が、
この世界に降り注がれ、明るくなっていく。
大西洋に面する
ロングアイランド湾沿いを走る、
目の前で流れていく風景 は、
まるで、初めて
この世界が現れていくその様を
つぶさに見てるような気持ちになった。

きっとご来光は、
世界中のどこでみても
神聖な気持ちになると思うが、
私は
この車窓からみた
東海岸の景色を忘れないだろう。

私の席の目の前には、
初老のご夫妻が座っていた。
白髪の上品なご婦人と目が合うと
にっこりと微笑まれた。
そのご婦人が
「失礼ですが、どちらの国の方ですか?」
と尋ねてきたので、
「ジャパニーズ」と答えると、そのご婦人がこう言った。
「実は、昨日わたし、ボストン在住の日本人のお友達に
 お茶会―ティセレモニーに呼ばれていってきたのよ。
 とっても素晴らしかったわ!」
ああ、なるほど。
それで彼女は、私が席についたときから、
話しかけたかったのか・・・
妙に納得し、しばらく私は
彼女と短い会話を楽しんだ。

「お茶会で、スイーツは出ましたか?」
と質問すると
「ええ、とっても洗練されたスイーツも出たわ!」

「日本語のアクセントやニュアンスって 
 他のアジアンのコトバとだいぶ違うわよね?
 私には、とっても耳心地が良く聞こえるのよ。
なにか、日本語で話してみてくださらない?」

こういわれて、私は
「こんにちは」とか「ありがとう」とか?
「私の名前は・・・・」
ありきたりな言葉しか思い浮かばなかったが・・・
どんな日本語だと美しく聞こえるのだろう?
それから、彼女は
「京都に行こうか迷っているのですけど、どうかしら?」

「あなたがお茶会を気に入ったのなら、
 京都の文化や街並み、
 寺院仏閣はきっと好きだと思いますよ。」

そんな感じの会話だった、気がする。
その後、
どちらともなく互いに、静かになった。
私は車窓を眺めたり、写真を撮ったり、
あれこれ気が付いたことをメモし
ご婦人は、再び本を読んでいた。

案外早く時は流れ
鉄道の旅は終わり
ニューヨーク、ペンシルベニア駅に到着した。

お名前も聞かず、連絡先も聞かず、
この瞬間だけの出会い
まさしく一期一会の出会いだが
それでもお互いに、
こころから、相手の一日が
素敵な日になりますように!
HAVE A GOOD DAY! 
そんな気持ちで、
私たちは挨拶をかわし
電車を降りた。

朝9時のニューヨーク、ペンシルベニア駅は、
とても解放的で快活で、多くの人が行きかう
ワクワクする駅だった。


 

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