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DX(デジタルトランスフォーメーション)はなぜ難しいのか?

DX(デジタルトランスフォーメーション)への初めの一歩が踏み出せない理由として5つあると考えています。

以下は筆者のホームページ、コラムからの引用ですが、現場の方の負担軽減、ITサービスのベンダー側とユーザー側、双方のギャップ解消等に少しでも役立てて頂ければと思い、こちらにも掲載させて頂きました。

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デジタル技術がもたらす影響を懸念して、こちらのコラムでも3年程前からいろんな形で発信をしてきました。コロナ禍もあり、ここに来てDXへの動きを加速させる企業もある一方、まだそれ以前の段階で混乱or翻弄されてしまっているケースも多く見受けられます。

DXが「なぜ必要か?」や「どうやるか?」については、これまでも講演やコラム等で直接・間接に触れてきたので、今回は「なぜ難しいのか?」を取りあげることにしました。事前にこうしたことを知っておかれた方が、皆様がDXを推進しやすくなると考えたからです。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)では、事業の変革と組織の変革が求められます。後者が前者の足を引っ張るだろうことは想像に難くないでしょう。

しかし、そうした変革に着手する以前に、着手を難しくしているもの、障壁となっているものとして以下の5つが挙げられると思います。

① DXという言葉
② デジタル技術
③ 経営課題
④ リソース
⑤ 未来像

以下、順に述べていきます。

① DXという言葉

DXは外来語で抽象的でもあり、この曖昧さが理解をしづらくしています。
言葉の説明として最も伝わりやすいだろうと思った経済産業省の定義を下記に記します。(個人的にはもうちょっとこの文章に手を加えたいのですが、まずはこちらで(笑))

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、 ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

DXという言葉を単独で聞くより、少しイメージがしやすくなったのではないでしょうか?

でも、まだ不十分でしょう。それは自社への影響がわかりにくく、よくこのコラムでもお伝えしている「自分ごと化」が進みにくいからです。

② デジタル技術

経済産業省の定義にあるように、DXではデータとデジタル技術の活用が求められますが、デジタル技術の進化は著しく、使われる言葉はこれまた外来語、英語とカタカナばかりです。

ちょっと挙げるだけでも、クラウド、AI、BI、RPA、ブロックチェーン、5G、IoT、ビックデータ、VR、AR、XR、チャットボット、スマートデバイス、ドローン、ノーコード/ローコード等々、こうした一般的?(笑)な名称に、ITベンダー各社がつける個別名称も加わってくれば、これまでITに縁遠かった方々にとっては尚更、何が何やら「???」といった感じではないでしょうか?

各種サービスを提供する事業者も内外のスタートアップ企業から大手企業まで様々です。

活用したいと思っても、情報が多過ぎ、混沌としていて、変化も激しく、何をどう理解してよいかわからないといった感じだと思います。

残念ながら、導入や活用を勧めるITベンダーやITコンサル会社も英語やカタカナをそのまま使って話す方々がまだまだ多いです。導入・活用を検討したい事業者の方々にとっては大きなご負担となります。

ちなみに、デジタル技術に限らず、広くテクノロジーを理解するうえでは「コツ」があるのですが、それはまたいつかコラムでお伝えするとしましょう。

➂経営課題

改めてお伝えしたいのはデータもデジタル技術も手段に過ぎないということです。

結局はデジタル技術で何をしたいのか?がポイントになります。

目的が明確でなければ、どの場面で、数あるデジタル技術のなかから、どの技術を、どのツールを、どの事業者を選定するのか絞り込むことすらできません。

データも同様です。

「うちにはデータがある」と言いながら、実際には「使えない状態のデータ」であるケースは多いですし、「これからはデータドリブンの時代だ!」と、やたらにデータを貯めようとしても意味がありません。

結果から考えてそういう発想でデータを、デジタル技術を上手に使える例は極めて少数になるでしょう。むしろIT投資のための資金を、稀少なIT人材を、何より重要な変革のための「時間」を、失うことになりかねないと思います。

本来、目的を明確にするうえで経営課題を整理する必要があります。

この経営課題も複雑です。自社内にある多くの問題を洗い出し、複雑に入り組んだ問題の構造を捉え、課題を整理、特定して、デジタル技術とデータを活用して課題を解決していく必要があります。

私は講演やコンサルティングの現場では経済産業省の定義をご紹介しつつも、さらに自分の言葉でこんな風にお話します。

『DXはデジタル技術(いわゆるIT、Technology)と経営課題(Issue)の掛け算』です。業務改善上の課題、事業戦略上の課題、経営戦略上の課題、それぞれの課題を整理し、デジタル技術とデータでどう解決していくかを一緒に考えていきましょう。」

ちなみに、経済産業省の定義にある「顧客や社会のニーズをもとに」というのは、主に自社の事業戦略、経営戦略と関係します。よく言われる「価値の創造」というのもこの辺りに関係しますが、気を付けなければいけないのは「ニーズ」が今までのようにわかりやすいもの、必ずしも「見えるカタチ」になっていないことです。

④ リソース

リソースは資源と訳されることが多いですが、人材、資金といった資源の不足でDXに着手できないという企業は多いです。大事なことはそこで思考を止めないことだと思います。

DXでよく見られるのが「社内に適切なIT人材がいない」という指摘です。

「適切なIT人材」って何でしょうか?
DXで求められる人材像とこれまでのIT導入・維持・活用で求められた人材像は異なることをご存知でしょうか?
不足する人材を補うDXの進め方をご存知でしょうか?

待っていても俄かに人材は増えません。
むしろ社内の人材をどう活かしていくか、育成していくかその道筋と合わせて、DXをお考えいただいた方が良いと思います。

人間の対応が遅れている間にITの方が人間に近づいてきてくれている部分もあります。

そのため、今までITを導入・活用してこられなかった企業の方が優位となる、逆転できる可能性もあるでしょう。それこそ新興国のように「リープフロッグ(蛙飛び)」もありうるのではないでしょうか?

➄ 未来像

DXが自社にもたらす影響もDXの必要性も凡そわかっている、既に取り組みも始めた、そんな企業でもぶつかる大きな壁が「未来像」です。

DXはデジタルでトランスフォームすることですから、形を大きく変えることになります。

では、どのように形を変えるのでしょうか?
何に向かって形を変えていくのでしょうか?
それはなぜでしょうか?

これまでもコラムでお伝えしてきたように、今はVUCA(変動の幅が大きく、不確実、複雑で曖昧)の時代と言われ、状況は混沌(カオス)としています。

サイバー空間とリアルな世界が融合し、業界の垣根を超えた競争が始まっています。いつどこから思わぬ競合が現れ、事業の存続が脅かされるかもわかりません。これまでのビジネスの常識、前提、ゲームのルールも変わって行くでしょう。そしてこの変化は加速していきます。

とはいえ、脅えてばかりはいられません。ではどうするか?

未来を考える、未来を想像する。
望む未来において自社がどうありたいかを考える。
自社の未来像をイメージし、それに向けて形を変えていく。

未来を想像し、未来を創造することを社内外に宣言することでDXへの力強い一歩が踏み出せます。

しかし、言うは易く、行うは難しでこれがなかなか難しいのです。

長く同じ業界・事業・会社・業務に携わってきた方々には、無意識にもこれまでの常識・先入観・固定観念が染みついてしまっています。すると、そこで想像される未来というのは現在の延長線上の未来に留まる(フォアキャスティング:現在を起点として未来を予測する方法)ことになり、トランスフォームには至らないのです。

DXでは今まで以上に、望む未来から逆算する発想(バックキャスティング)が求められます。

未来を想像し、そこで自社は何をしているか?何ができているか?
自社の存在意義を問い直す、抽象と具象を巡る思考の旅に出ることになります。そうした思考の格闘を経て自社や事業を再定義し、未来像を描くことができます。

歴史のある企業であればあるほど、大きな組織であればあるほど、形を変えることは難しくなります。これまでの歴史のなかで、各企業は長い時間をかけて既存の事業を安定的に、確実に遂行させるべく「最適化」をしてきています。闇雲にこれを変えるわけにもいきません。

しかし、自社がやらなければ他の誰かが自社の事業環境を揺るがしてきます。

変化が加速する時代には必要な外部資源を戦略的、効果的かつ、速やかに活用されることをお勧めいたします。

「何がわからないか、わかっていないか」がわからなければ、何も始まらないし、始められません。今回のコラムはそのための事前のインプットとしてお伝えしました。

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上記、自身のコラムからのもので大変恐縮ですが、コロナ禍もあり、現場でご支援している人間からこうした事前情報をお伝えをすることで、少しでも関係者の方のご負担が軽減されればと願っています。


歩く好奇心。ビジネス、起業、キャリアのコンサルタントが綴る雑感と臍曲がり視点の異論。