コロナ騒動に見るリーダーのコミュニケーション術～その③

コロナ騒動の初期から終戦の日までリーダーのコミュニケーションを考えた表題のシリーズの最終回。今回はまとめとして、危機下のリーダーのコミュニケーション術は結局何を表すのかを考えてみたい。

＜初回で取り上げたコミュニケーションの３つの注目点＞
① 伝え方（一方向・双方向）・・・・・・・・・・・・・・非言語的コミュニケーション
② 伝える内容（事実・見解、依頼・要望、見通し・展望）・・言語的コミュニケーション
③ 伝える姿勢（配慮、共感、人柄）・・・・・・・・・・・非言語的コミュニケーション

初回で書いたように、無意識に為される非言語的コミュニケーション（①③）は言語的コミュニケーション（②：伝える内容）以上に多くの事を人々に伝えている。

危機下では人々はリーダーの一挙手一投足を注視している。

無意識にリーダーの危機感、度量、腹の括り方、胆力、人間観、人間性を垣間見ている。

最終的に人を動かすのは非言語的コミュニケーションでリーダーの人間性によるところが大きい。リーダーのそれが人々にとって共感、信頼できるものであれば、人々の不安や不満は抑制され、むしろ貢献意欲を引き出し、行動変容に繋がる。

難しい行動変容を求めるメッセージもリーダーへの信頼があったればこそ、実現に向けた努力が為される。反対に、人々が持つ不安と不満にリーダーへの不信が加われば事態は悪化の一途を辿ることになる。

人間性は信頼されるリーダーとなるために磨き続けるしかない。

では、それ以外のものはどうだろうか？

未知の脅威に遭遇した危機下のリーダーが適切な危機感を持ち、度量を備え、適切なタイミングで適度に腹を括り、胆力をもって事に臨むには何が必要か、ポイントとして５つ挙げてみたい。

＜危機下のリーダーのコミュニケーションを支える５つのポイント＞
① 適時適切な情報の収集
② 情報の目利き
③ 情勢の判断
④ 方向性の提示
⑤ 十分な信念・価値観

➄を土台としてそのうえに①～④のスキルが求められるだろう。

①の適時適切な情報収集で先見性をもたなくては手遅れになる。

とはいえ、闇雲に収集しても時間ばかりかかり、結果的には情報過多で思考停止になるということにもなりかねない。リーダーは質の良い情報を狙って収集できるような素地を持っている必要がある。

先見性には観察力と洞察力が必要である。

日頃から観察と洞察、その検証を繰り返すことで、①情報の収集、②情報の目利き、③情勢の判断が素早くでき、その結果、④方向性を提示できるようになる。

こうしたことが支えとなって適切な危機感が生まれ、度量をもって周囲の話を聞き、適度に腹を括り、胆力をもって事に臨む、人々に語り掛ける、適切なコミュニケーションを取ることができる。

➄の信念・価値観には多様な人々に寄せる積極的な関心と共感、深い慈愛を伴った人間観が求められる。この人々への積極的な関心と共感こそが観察力と洞察力の源にもなる。

とどのつまり、それが優れたリーダーの要素で、コミュニケーションはリーダーその人、そのものを表していると言える。

コロナ騒動を機にそれまで先送りされていた様々な問題が顕在化している。

遅れていた変化が一挙に進んでいく。

＜危機下のリーダーのコミュニケーションを支える５つのポイント＞で書いた内容に決断力と実行力を加えればOODA （Observe （観察）、Orient （状況判断、方向づけ）、 Decide（意思決定）、Act （行動）の頭文字を取ったもの）とも言える。

当たり前のようでいて実は奥が深いコミュニケーション。

VUCA（変動が激しく、不確実で複雑で曖昧）の時代の今こそ、リーダーのコミュニケーション力が問われていると思う。

終戦の日も過ぎた。

命の重さ、軽さを特に考える8月はリーダーと人々との関係、コミュニケーションを考える月でもある。

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前回、前々回はこちら。