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「亜愛一郎の狼狽」泡坂妻夫

泡坂妻夫はマジシャンでもあるそうで、トリッキーな作品が多い。
長編小説もたくさんあるが、自分としては短編こそが泡坂妻夫だと勝手に思っている。

本作は後に2作、亜愛一郎の〇〇というのが続く、シリーズもの。
苗字が「亜」、名前が「愛一郎」、美青年だがどこか抜けてる。
自然、動物や植物、化石など専門のカメラマンである。
その正体は。。。内緒!!

彼がふと行き当たった事件の真相をドタバタ解決する。
どういうことかというと、「犯人はあなたですね!!真実はわかっています。」とかじゃなくて、「ちょっとちょっとお巡りさん、とめてとめて、あの人を!!」何がなにやらわからず警察が該当の人物を捕まえると、予想もつかない事件の犯人だということを自白、警察が愛一郎にどういうことだと問い詰めると、その口から意外な真相が、って感じな話が多い。

本作の一番の特徴としては、逆説もののミステリーというところ。
逆説ものというのは、通常の人が考える定説とは異なるロジックにて犯人や関係者が行動し、それを解き明かすというもの。
最も有名なのは、G・K・チェスタトンのブラウン神父シリーズ。
有名なセリフ「木を隠すなら森の中」、隠すってなると隠すものを人目につかないようにしたくなるが、逆説は違う。
隠すものと同じものを周りにおいて、目立たなくするという発想。
普通の逆を行くのが逆説なのだ。

また、全編ユーモアに満ちている。

こんなシーン。
戦没者の遺骨を探しに行く団体、横で年配の男と愛一郎が「骨がどうたら、ああたら」と会話している。
「日本には遺骨という言葉があります!!敬意を払いなさい!!」と注意。
そこで愛一郎と男はわかりましたと、「プテラノドンの遺骨が、、、なんとかサウルスの肋骨の遺骨が」と話しはじめる(笑)

こんなシーン。
愛一郎と男二人が歯医者で順番を待っている。
「亜さーん、井伊さーん、上岡菊彦さーん」と呼ぶところ、毎回ナースが「あさーん、いいさーん、うえおかきくけこさーん、あれ?」っとなるシーンとか、ユーモアたっぷり。
ちなみにこの話、みんなが歯痛をまぎらわすためにする動きが、ある事件の真相を暴くというもの。
どういう話か想像つく?
つかないでしょ?
そんな話がたくさんあるのだ。

ぜひぜひ読んでみて欲しい!!

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