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「夜市」恒川光太郎

ホラー、ほらぁ、ほら~怖いでしょう。
ホラー小説です。
といいつつ、ホラーというより幻想小説に近いと思った。

ホラー小説を紹介する本があって、それに掲載されていて知った作品。
これがきっかけで一時期ホラー小説がマイブームとなった。
「ぼっけぇきょうてい」「X雨」「メルキオールの惨劇」「玩具修理者」「黒い家」などが乱読した中でも覚えている作品。
全部角川ホラー文庫!!
あの黒い表紙がホラー小説シリーズって感じで好き。

本作は、中編2点の作品集。
表題となっている夜市のあらすじはというと。。
主人公は少年時代、夜に開かれる異形のもの(異世界の住人?)たちの市に迷い込む、欲しかった野球の才能(!!)を買う。
代金は弟、弟の存在そのもの、代金を払うと弟はそもそも存在しなかったことになる。
罪悪感を抱えながら人生を送っていた主人公、大人になって再び夜市が開かれるのを知り、弟を取り戻そうとするという話。
なんかね、この「才能」がプロ野球選手になれるとか大谷翔平レベルになれるとかそんなではなく、せいぜい高校の野球部で人気者になれるレベルというのがむなしい。
弟の価値って?

もう一つの中編「風の古道」もそうなのだが、今生きているこの世の中に微妙に重なる感じで別の世界があらわれる。
そこに足を踏み入れると不思議な、時として取り戻しがつかない事態が発生する。
この別世界はどんな世界なんだろうという好奇心と、特別な存在に関わっているという優越感、もう通常の世界に戻れないという寂寥感がにじみ出ていてなんとも言えない読後感。
しかも「夜の市場」「古道」など、どこか懐かしさを感じさせる風景が脳内に鮮明にイメージ出来て、夜の市場にはこんな世界の人もいるんじゃないかとか、自分だったら何を買うのかとか、空想がとまらず1時間は余韻に浸っていられるのだ。

ちなみに恒川光太郎は本作しか読んだことがない。
好きすぎて、作者も作品もこころの大事なもの箱に格納している。
もし別作品が自分と合わず、作者が大事なものじゃなくなるのが怖くて。。
昔の恋愛を引きずって人を好きになれない、的な!!
勇気を出して前に進んでみようと思います!!

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